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腎臓内科・人工透析センター

人の動き

人事面では、2010年から当科の診療、研究に多大なる功績を残されました橋本整司部長が2017年3月をもって退職され、和歌山県立医大へ移られました。これに伴い、2017年度より、吉岡成人副院長が、腎臓内科部長、人工透析センター長に就任されました。また、若手として1年間、病棟に外来にと活躍してくれた横山あい医師が、2017年3月をもって退職し、釧路赤十字病院へ移動となりました。代わって、北海道大学より伊藤一洋医師、牧田実医師が赴任しました。研修医は1名のみで、やや寂しい年となりましたが、唯一当科にきてくれた恒川良兼医師は、病棟に外来に学会発表にと精力的に活動してくれ、大変当科の助けとなりました。

業務内容

当科は腎臓病の初期から末期まで、幅広く診療を行っています。また、診療以外では日本腎臓学会、日本透析医学会を中心に発表や論文投稿などの学会活動を行っています。日本腎臓学会認定専門医の有資格者が4名、日本透析医学会透析専門医の有資格者が3名在籍しており、両学会の教育病院として、専門医育成にも力を入れています。

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは、慢性的に経過する腎臓病を包括する概念として2002年に米国腎臓財団により提唱され、腎臓の障害(蛋白尿など)、もしくはGFR(糸球体濾過 量)60 mL/分/1.73m^2 未満の腎機能低下が 3カ月以上持続するものと定義されています。わが国では、日本腎臓学会が日本人に適合した糸球体濾過量(GFR)推算式を作成し、血清クレアチニンの値からGFRを容易に推測できるようになりました。その結果、わが国のCKD患者さんが1,330万人に達していることが明らかになりました。慢性腎臓病は、放置すれば末期腎不全に至り、透析療法や腎臓移植が必要になる可能性があるだけでなく、慢性腎臓病を有する人は、健常な人に比べて狭心症や心筋梗塞などの心血管病のリスクが高いことが明らかとなっています。腎臓は、加齢により機能が低下する臓器であり、一度慢性的に低下した腎機能が若いころのように回復することは通常ありません。慢性腎臓病の患者さんは、健康な人と比べると、加齢による機能低下を超える速度で腎機能が低下していきます。慢性腎臓病の治療はこの速度低下を緩やかにするための、保存的治療(血圧の管理、食事療法、貧血の管理、腎性骨症の管理、生活習慣改善など)がまず基本となります。

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓病についてよりシンプルに、わかりやすく考えていただくために提唱された概念です。この中には糖尿病による腎臓の障害や、高血圧による腎臓の障害、糸球体腎炎による腎臓の障害、遺伝性疾患による腎臓の障害など、さまざまな理由による腎臓の障害が包括されていますが、これらの個々の原因のことを腎臓病の「原疾患」と言います。そして、腎臓病は、この個々の原疾患により経過や予後が様々に異なることが知られており、我々は基本的な慢性腎臓病の治療に加えて、それぞれの原疾患に併せた治療を実践しています。

外来

月曜日から金曜日まで、午前・午後の外来を行っています。新患は午前外来で受け付けています。外来では、健康診断などで尿異常(尿たんぱくや尿潜血)を指摘された方や、腎機能の異常を指摘された方、慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群と診断された方、むくみの相談にこられた方、などを対象に診療しています。また、糖尿病科と協力し、透析予防プログラムを実行するなど、院内他科とも連携して診療にあたっています。

2017年の外来患者数は、延べ8,171名、入院患者数は延べ4,092名でした。初診患者さんは近隣のクリニックや病院からの紹介、健診で異常を指摘された方の再検査、院内他科からの紹介患者さんなどが多くを占めます。

入院

健康診断などで、尿異常や腎機能障害を指摘された方、ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎が疑われる患者さんなど、精密検査の必要がある場合には腎生検を行ない、その結果を元に診断と治療を行っています。2017年に、当科では61件の腎生検を行いました。

慢性糸球体性腎炎の代表的疾患であるIgA腎症に対しては、耳鼻科と協力して扁桃摘出とステロイドパルス療法を組み合わせた扁摘パルスを行い良好な成績を上げています。

ネフローゼ症候群の患者さんに対しては必要に応じて腎生検を行い、それぞれの原因疾患に合った治療法を行っています。代表的なネフローゼ症候群である微小変化型ネフローゼに対してはステロイド治療により良好な結果が得られることが多いですが、難治性・再発性・ステロイド抵抗性の症例に対しては免疫抑制剤を使用します。近年では抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)がネフローゼ症候群でも使用可能となり、難治性症例への奏効率が向上しています。

当科では総合病院の特徴を活かし、尿路疾患については泌尿器科、糖尿病性腎症については糖尿病・内分泌内科や眼科、膠原病による腎障害についてはリウマチ・膠原病内科と連携し腎臓疾患の治療にあたっています。また、循環器疾患や整形外科疾患などの合併症治療が必要な慢性腎臓病患者の受け入れも、各科と連携し幅広く行っています。

急性腎障害(AKI)については、自科のみならず、院内各科や近隣医療機関での発生患者の受け入れ、管理、治療、緊急透析等に対応しています。

腎臓病が進行し、末期腎不全に至った場合、透析療法をはじめとする腎代替療法を行う必要がありますが、当科では患者さんの背景や希望に合わせて、腹膜透析や腎移植についてもご提案しています。腎移植については移植可能施設への橋渡しを行っています。

透析センター

透析では、新規透析導入(導入教育などを含む)・外来維持透析・合併症などによる他科入院患者さんの透析管理・AKIなどの患者の緊急透析、腹膜透析患者さんの日常管理などを業務としています。

【腹膜透析】
現在12名の患者さんが当院で腹膜透析を行っています。2017年に施行した腹膜アクセス関連手術は8件でした。

【血液透析】
透析ベットは現在41床で運営しています。維持透析は、月・水・金曜日が3部制(午前、午後、夜間:8:30〜22:30)、火・木・土が1部制(午前のみ:9:00〜14:30)で行っています。2017年に施行したバスキュラーアクセス関連手術(経皮的シャント血管拡張術を除く)は69件でした。

診療実績

[単位:人]
  2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
延外来患者数 6,968 7,112 8,213 8,075 8,171
延入院患者数 4,162 3,949 4,789 4,600 4,092
経皮的腎生検 73 61 71 59 61
透析導入数(腹膜透析) 2 2 1 2 8
透析導入数(血液透析) 35 36 54 67 56
腹膜アクセス関連手術 0 5 2 5 8
血管アクセス関連手術 50 55 70 74 69
経皮的シャント血管拡張術 35 32 42 37 20

研究活動について

原著

  1. 橋本 整司、渡邉 加奈子、川島 圭介、中垣 祐、眞岡 知央、山本 理恵、吉田 美穂、西尾 充史、深澤 雄一郎、小池 隆夫:Plasma cell dyscrasia 関連腎症の臨床像の検討。札幌市医師会医学誌 312:129-130、 2017
  2. 橋本 整司、山本 理恵、眞岡 知央、中垣 祐、渡邉 加奈子、横山 あい、吉田 美穂、西尾 充史、小池 隆夫:240μg/weekの高容量ダルべポエチン静脈注射により貧血改善を認めた骨髄異形成症候群合併維持透析患者の1例。臨床透析33: 1635-1638、 2017
  3. 3. Hashimoto Seiji, Sasaki Hiroyoshi , Matsuura Hiroshi , Koike Takao , Haga Tomoaki ; A case of paradoxical cerebral infarction by spraying thrombus in the catheter for dialysis. Renal Replacement Therapy 3: 44, 2017

学会発表等

  1. 恒川良兼、山本理恵、眞岡知央、中垣祐、牧田実、伊藤一洋、橋本整司、吉岡成人、小池隆夫:血液透析で復温を行った偶発性低体温症の一例,第28回日本老年医学会北海道地方会、札幌、2017年6月24日
  2. 牧田実:ADPKDモデルマウスにおけるV-ATPase阻害薬の投与、第47回日本腎臓学会東部学術大会、横浜、2017年10月28日
  3. 眞岡知央:モーニングトーク2、北海道APES、札幌、2017年9月3日
  4. 伊藤一洋、山本理恵、眞岡知央、中垣祐、横山あい、橋本整司、吉岡成人、深澤雄一郎、小池隆夫:ステロイド治療を行った半月体形成を伴う感染後糸球体腎炎の一例、第45回日本腎臓学会西部学術大会、岡山、2017年10月13日