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呼吸器内科

人の動き

3月に加藤宏治 先生が士幌町国民健康保険病院へ異動、後任の呉 賢一 先生が4月から9月(函館五稜郭病院へ異動)、次に10月から高橋晴香 先生が札幌医大から着任されました。常勤医は計4名を維持、引き続き皆精力的に活躍してくれました。また本年も年間を通して研修医はほぼ切れ間なく研修に来てくれました。

診療・業務内容

呼吸器内科では呼吸器疾患全般において特に高い専門性が不可欠な疾患の診療を担当しています。具体的には、高齢化の進行に伴い増加が避けられない肺癌(悪性腫瘍における死因第1位)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、日本人の死因第3位となった肺炎をはじめとする呼吸器感染症、気管支喘息などのアレルギー疾患、難治性で診断等に高度な専門性が必要とされる間質性肺疾患、各種の呼吸不全などです。

2017年は後述のように、対象となる疾患内容には著変はなく、外来患者数は例年とほぼ同程度を維持、入院患者数は大きく増加、呼吸器内視鏡検査の実施数も昨年より微増 等、総じて例年以上に高いアクティビティーを維持できたと考えています。呼吸器外科には当科から肺癌の加療/検査を中心に膿胸等も含めて2017年は約120名(2016年は約70名)の症例をお願いしており、また2016年に更新された放射線照射装置(当院の大きな強みである肺癌への動体追跡照射を含めた照射制度が向上)で治療できる環境も整っており、緊密な連携の下、院内で呼吸器疾患への対応が完結できる体制がより強固になってきたと感じています。

また当科が対象とする疾患の中で最も重要である肺癌に関しては、従来の手術・化学療法・放射線療法の3本柱に新たに加わった免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ)の使用が本格化しており、癌治療における第4の柱となってきたことを実感しています。免疫チェックポイント阻害剤は今後も新たな薬剤の登場が見込まれ、また従来の加療との組み合わせを工夫することにより更なる治療成績の向上が期待されており、治療のダイナミックな進歩の渦中にあることを肌で感じております。さらに他の癌腫と同様に腫瘍の生物学的特性(組織型・癌遺伝子のprofileなど)によって、個々の症例に応じた個別化治療が必要とされる流れがますます明確になってきています。年々複雑化してくる肺癌治療ですが、最新・最適な医療を遅れなく提供できますように引き続き研鑽を怠らないよう一同努力していく所存です。

免疫療法に関しては非常に高額であることが問題になりましたが最適な症例選択や投与法などまだ手探りな部分もある他に、従来の治療法とは異なる多彩な副作用にも注意が必要で、治療適応が肺癌以外の癌腫にも次々と広がっており、そのマネージメントに関しては診療科や職種横断的な対応が求められます。当院でもirAE(免疫関連有害事象)の委員会が正式に設置されることとなり頼もしい限りです。

COPDも今後さらに患者数の増加が懸念される疾患ですが単に呼吸機能障害だけではなく全身疾患として捉えることが求められており、薬物療法のみならず、理学療法・在宅酸素療法/在宅人工呼吸療法・栄養療法など包括的対応が重要となっています。関連各部門との協力関係を強化しつつ診療にあたっていきたいと考えています。また呼吸器症状が顕在化する前の介入が肝要であるため、肺機能検査やCTでの早期診断を心がけている他、週3回の受診枠で禁煙外来を継続しています(西山と橋本みどり先生とで対応)。

肺感染症は細菌性肺炎が主体ですが、基礎にある呼吸器疾患のため難治化・重篤化する症例や、また当院には免疫力低下を伴う併存疾患で通院されている患者さんも多く、真菌感染・抗酸菌感染・ニューモシスチス肺炎などの特殊な感染症にもしばしば遭遇するため正確な診断を心がけています。肺炎球菌ワクチンの対象となる患者さんには外来での接種を積極的にお勧めしています。

通院されている患者さんで最多なのは気管支喘息ですが、吸入ステロイド療法の普及、吸入薬の進歩(薬剤や吸入デバイス)によりコントロールは良好な症例がほとんどで、かつてよりは入院が必要な症例は随分と減少しています。

間質性肺疾患はその診断に特に高い専門性が要求される疾患ですが、高分解能CT・気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支肺生検(TBLB))・症例によっては外科的肺生検で確診を目指しています。間質性肺疾患の中でも治療が難しい特発性肺線維症(IPF)に関しては、治療戦略が従来の抗炎症療法(ステロイド剤や免疫抑制剤)から抗線維化療法に変わっており、2種類ある抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテンダニブ)の治療には対応しています。

検査

当科の特徴である呼吸器内視鏡検査の実施数は2016年よりやや多く207件でした。そのうち最先端の検査法である超音波気管支内視鏡(EBUS-GSやEBUS-TBNA)が約3/4を占め、また確診が難しい胸膜疾患の診断に非常に有用で他施設ではルーチンに行えていないことが多い局所麻酔下の胸腔鏡検査も積極的に継続しています。

2017年から呼気一酸化窒素検査(FeNO)が導入され、好酸球性気道炎症性疾患(気管支喘息、咳喘息 等)の簡便な選別が可能となり、我々が最も遭遇する症状である遷延性〜慢性の咳嗽の鑑別や適切な治療の早期導入、また気管支喘息コントロールのより正確な評価ができるようになりました。

外来患者数

年間の延受診患者数は約12,703人と例年とほぼ同数でしたが、症例当たりの単金が増えており、外来診療収入は例年の約3割増でした。

入院患者数

年間の延入院患者数は10,000人を超え、例年の約8600人/年から大きく増えました(平均在院日数は15日台と同様)。症例当たりの単金は著変なく入院診療収入は例年の約2割増でした。疾患の傾向は例年と著変はなく約半数が肺癌を中心とする悪性腫瘍で、他は肺感染症、気管支喘息、間質性肺炎等でした。

今後も地域医療の充実のため、円滑な地域連携の下、専門性の高い医療を提供し続けることができますよう当科スタッフ一同努力して参ります。

呼吸器内科疾患別入院患者数(2017年)

[単位:人]
肺癌 270
肺炎 140
気管支喘息 33
間質性肺炎 29
COPD 6
慢性呼吸不全 4
胸膜炎、胸水貯留 16
気管支拡張症 1
サルコイドーシス 6
その他 87
592