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麻酔科・ペインクリニックセンター

診療・業務内容

臨床麻酔

4月から非常勤で週3勤務の木村さおり先生、週4勤務の田村亜輝子先生を新たに迎えました。6月には福田玲緒奈先生と佐々木那央先生が退職しましたが、7月から高平陽子先生、杉本美幸先生を迎え、+1.3人の人員増となった一年でした。

麻酔科管理手術件数の推移は2012年は2,477件、2013年は2,392件と若干減少しましたが、2014年は2,490件に、そして2015年は2,743例、2016年2,751例と大幅に増加しました。呼吸器外科と乳腺外科が充実した結果と思われます。これは札医大麻酔科関連病院の中でも上位に入る症例数であり、脳神経外科以外の各科手術が毎日活発に手術が行われています。

臨床研修制度により当科には1年次研修医が2か月必修として研修します。医師として必要なマスク換気・気管挿管手技と脊髄くも膜下穿刺の技術取得に加えて、循環、呼吸、輸液などの全身管理の習得を目指します。2年目に麻酔科選択した研修医は、各自の目指す専攻科に合わせて上記技術のレベルを上げながら硬膜外穿刺、エコー下神経ブロックなど一段進んだ麻酔技能習得と、帝王切開術、開心術など特殊麻酔管理も行える事も目指します。本年度は3名の2年目麻酔科志望研修医が長期に在籍しました。彼らには研修医としてではなく、麻酔科医として入局後と同じ指導を行なっています。

一年目から研修医の諸君は麻酔科にとっては大変貴重な戦力であり、手術室の安全運営に欠かせない存在になっています。

手術室の安全管理運営は重要な項目です。当科では安全な麻酔管理を行うために必要なシステムの一つとして、朝8時から当日の麻酔全症例検討会を行い、各症例の情報を共有しています。こうすることで麻酔困難症例を見逃すことなく全員でそれを認識し、チームとして対応できるように取り組んでいます。

ペインクリニック

ペインクリニックは痛み、機能障害に対し、主に神経ブロックを応用して治療を行う診療部門です。単に痛みなどの症状を軽減させることのみを目的として診療を行うわけではありません。

椎間板ヘルニアなどでは神経ブロックを中心とする治療により自然治癒を促進させ、手術を回避できる場合がしばしばあります。また、腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症などの痛みに対しても神経ブロックにより患者さんのADL改善が期待できます。その他三叉神経痛、帯状疱疹関連痛、複合性局所疼痛症候群、がんによる痛みも治療対象です。近年、薬物療法を主体とする緩和医療の発展によりがんの痛みに対する神経ブロックは以前ほど行われなくなりましたが、膵がん、胃がんなどの腹痛に対する内臓神経ブロック、直腸がん手術後の旧肛門部痛に対するサドル・フェノールブロックが著効し在宅での生活が可能となるケースも珍しくありません。これらがんの痛みには施行する意義のある治療と考えています。

神経ブロックにはX線透視を必要とする場合があるほか、透視を用いることにより完成度の高い神経ブロ ックを行うことができる場合があります。下にX線透視下神経ブロック件数を示します。当科では手術予定の患者さんに対して当日朝にX線透視下に硬膜外カテ ーテル挿入を行う場合があります。このような方法で硬膜外カテーテルを挿入している施設は他に例を見ないと考えますが、確実なブロック効果を期待でき、術後の鎮痛のためにも有用です。

神経ブロック以上に当院ペインクリニックにおいて特色ある治療は胸腔鏡下交感神経遮断術、脊髄刺激療法です。胸腔鏡下交感神経遮断術の最もよい適応は手掌多汗症ですが、頭部・顔面多汗症、腋窩多汗症、赤面症、手の末梢循環不全に対しても行われます。2014年より北海道において原発性局所多汗症に対してこの手術を行う施設は当科のみとなっており、年間40件前後の手術を行っています。原発性局所多汗症に悩む患者は人口の4〜5%とも言われますので、まだ多くの患者さんが潜在していると考えられます。手術という選択肢について周知を図ることが今後の課題です。脊髄刺激療法は脊椎手術後に残存する痛み、四肢の末梢血管障害、複合性局所疼痛症候群などの難治性の痛みに対して施行しています。最近は機器の進歩もあり、この治療により職業の継続が可能となる事例が増えています。脊髄刺激療法も北海道で施行可能な施設が少ないため全道から患者さんが受診されます。

これらの手術療法、神経ブロックが適応とならない患者さんには漢方を含む薬物療法を行います。理学療法は神経ブロックの可否を問わず重要な治療と考えています。どのような治療法を選択するにしても患者さんになるべく苦痛を与えずに安全で質の高い医療を提供することを当科の信条としています。また、痛みの治療を志す若い先生方の研修機関として彼らとともに研鑽を重ねていきたいと考えています。

最近5年間のペインクリニックの動向

  2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
新患数(名) 669 570 642 730 536
延患者数(名) 7,238 6,879 7,335 7,931 6,613
入院患者数(名) 124 114 110 96 97
透視下ブロック件数(件) 1,109 1,176 1,086 1,288 994
多汗症手術件数(件) 24 33 46 42 32

2015年のX線透視下神経ブロック件数(件)

頭部 GGB 9 腰部 one shot硬膜外ブロック 242
頸部 oneshot硬膜外ブロック 159 神経根ブロック 84
神経根ブロック 27 神経根ブロック(サーモ) 26
神経根ブロック(サーモ) 2 椎間関節ブロック 34
椎間関節ブロック 13 椎間関節ブロック(サーモ) 11
椎間関節ブロック(サーモ) 0 腰部交感神経節ブロック 29
椎間板造影 0 椎間板造影・加圧 7
腕神経叢ブロック 100 経皮的髄核摘出術 2
胸部 oneshot硬膜外ブロック 122 腰神経叢ブロック 15
神経根ブロック 11 硬膜外ブラッドパッチ 4
神経根ブロック(サーモ) 20 仙骨部 経仙骨孔ブロック 19
肋間神経 1 経仙骨孔ブロック(サーモ) 9
肋間サーモ 1 仙腸関節ブロック 5
胸部交感神経節ブロック 2 硬膜外洗浄 19
胸部交感神経節ブロック(サーモ) 5 その他 脊髄刺激電極挿入(puncture trial) 4
腹部 内臓神経(アルコール) 7 その他 0
下腸間膜(アルコール) 4 合計 994
上下腹神経(アルコール) 0
不対神経節 1
不対神経節(アルコール) 0

※サーモ:高周波熱凝固による

研究活動について

国際学会

  1. International Association for the Study of Pain, The 16th World Congress on Pain, Yokohama, Japan. Sep26-30, 2016
    Yukari Shindo, Soushi Iwasaki, Mitsuko Mimura, Yukitoshi Niiyama, Michiaki Yamakage: Opioid therapy in Japanese patients with chronic non-cancer pain and its everyday impact.

全国学会

【第50回日本ペインクリニック学会(横浜)】2016.7.7〜9

  1. 御村光子:原発性局所性多汗症に対する治療の現況.パネルディスカッション「多汗症治療 光と影」
  2. 御村光子、佐々木英昭、宮本奈穂子、硲光司、山澤弦、浦濱聡、福田玲緒奈、佐々木那央:新しいX線透視装置による3D 画像を用いた神経ブロックにおける造影剤の広がりの評価
  3. 佐々木英昭、御村光子、中山禎人、宮本奈穂子、浦濱聡、福田玲緒奈、佐々木那央、山澤弦:肺葉切除術後の胸部痛に対する当科における治療成績
  4. 宮本奈穂子、御村光子、山澤弦、佐々木英昭、福田玲緒奈:MPI拡散強調画像(DWI)が診断に有用であった中枢性悪性リンパ腫の1症例
  5. 硲光司、御村光子、山澤弦、佐々木英昭、宮本奈穂子、浦濱聡、福田玲緒奈、佐々木那央:難治性の腰下肢痛に対し皮下刺激が効果的であった脊椎術後痛の4症例

研究会・地方会

【H28年実地医家のための整形外科学セミナー(札幌)】2016.01.21

  1. 御村光子:特別講演U「実地医家のためのペインクリニックの知識」

【第13回 麻酔科学サマーセミナー(沖縄)】2016.24-26.

  1. 高橋可南子、宮本奈穂子、佐々木英昭、木村さおり、御村光子、山澤弦:新しい換気量測定器「エクスピロン呼吸モニター」の麻酔時における使用経験

【第96回北海道医学大会ペインクリニック分科会(札幌)】2016.9.17

  1. 御村光子:講演「胸腔鏡下交感神経遮断術に未来はあるか?」
  2. 田村亜輝子、御村光子、福田玲緒奈、宮本奈穂子、佐々木那央、浦濱聡、佐々木英昭、木村さおり、山澤弦:上腕部痛を主訴にペインクリニックを受診し、痛みのメカニズムが明らかになった後腹膜腫瘍の一症例

【北海道緩和医療研究会(札幌)】2016.9.24

  1. 宮本奈穂子、御村光子、佐々木英昭、松浦智子、太宰昌佳、山澤弦:神経ブロックの適応と有効性から緩和医療におけるペインクリニックの役割を考える

【第22回日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会(長崎)】2016.10.15

  1. 御村光子、佐々木英昭、山澤弦、宮本奈穂子、浦濱聡:R2で交感神経幹を遮断した頭部・顔面多汗症と赤面恐怖症とにおける代償性発汗認識の差異
  2. 佐々木英昭、御村光子、田村亜輝子、山澤弦、上田健太郎、臼井彩:胸腔鏡下交感神経遮断術における模擬訓練の試み
  3. 田村亜輝子、御村光子、硲光司、佐々木英昭、山澤弦:足底多汗症に対する治療の試み:症例報告

【第17回北海道機能神経外科研究会(札幌)】2016.11.19

  1. 佐々木英昭、御村光子、山澤弦:発症より長期間経過後に導入した脊髄刺激療法が著効した難治性疼痛の2症例

座長、司会、モデレータなど

【第41回札幌市医師会医学会(札幌)】2016.02.21

  1. 御村光子:司会.麻酔・ペインクリニック一般演題4題.

【日本麻酔科学会第63回学術総会 2016/5/26〜28(福岡)】

  1. 宮本奈穂子:座長 産科麻酔 合併症妊娠2

【ペインマネジメント フォーラム in 札幌】2016.07.30

  1. 御村光子:座長.特別講演「失敗しない慢性疼痛のオピオイド治療」(演者:山口重樹)

【第17回北海道機能神経外科研究会(札幌)】2016.11.19

  1. 御村光子:座長.一般演題4題.

【第7回北海道痛みを考える会(札幌)】2016.11.26

  1. 御村光子:座長.講演「ペインクリニックにおける腰椎椎間板ヘルニアの治療」(演者:表圭一)

取材・新聞記事・講演など

  1. 御村光子:アンギオ室にArtis Q TAを導入 血管系・非血管系の腹部インターベンションに幅広く活用.Siemens Future 30:7-9, 2016(取材記事)
  2. 御村光子:学んで治そう「手のひらなどに大量の汗 重症なら交感神経切断手術も」北海道新聞朝刊.2015.10.19
  3. 御村光子:寄稿文「これからのペインクリニックへの提言」日本ペインクリニック学会第50回記念誌.2016,p107
  4. 山澤弦:「エコー下神経ブロック」バクスター社内研修会(札幌)2016.04.18

その他

  1. 御村光子:第41回札幌市医師会医学会ポスターセッション司会印象記「麻酔科・ペインクリニック」.札医通信増刊No.306、2016