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副院長総括

NTT東日本札幌病院
副院長 吉岡 成人

2016年を振り返ってみますと、心なごむ出来事として大隅良典東京工業大学名誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞されたことや、森田浩介九州大教授をリーダーとした理化学研究所のチームが113番目の元素を発見し、ニホニウムと名付けられたことなどがあげられます。日本ハムファイターズが大谷翔平選手の大活躍でリーグ優勝し、日本シリーズを勝ちぬいたことも、素晴らしい思い出です。一方、心痛む出来事も少なくなくありませんでした。熊本市では2度にわたって震度7の大地震に襲われ、名城として誉れが高い熊本城の修復は今でもなかなか進んでいません。また、北海道でも台風の被害に見舞われ、農作物のみならず、基幹線であるJRの復旧にも多大な時間が費やされました。

毎年、毎年新たな出来事がひきおこされますが、私たちの身体では、知らず知らずのうちに老化という現象が日々進行しています。しかし、普段はその自覚がありません。あるとき急に、以前は簡単に出来ていたことが出来なくなってしまったことに気づいた時に、老いを自覚して驚きます。生まれた子供は1年の間に寝返りを打って、這って、立つて、そして歩くようになります。子供が着実に成長するのとは対照的に、私たちの身体は時間とともに衰えていきます。

日本老年医学会では2017年1月に75歳以上を高齢者と定義することを提唱しましたが、一般には、65歳以上を『高齢者』としています。

日本の社会全体が年々高齢化していますが、北海道で最も高齢化が進んでいる市町村は夕張市で、65歳以上の高齢者人口の比率(高齢化率)は48.9%にもおよびます。北海道全体の高齢化率は28.0%、高齢化率が最も低いのは千歳市で21.0%です(平成28年1月住民基本台帳)。札幌市でも早い速度で高齢化が進んでおり、平成22年には高齢化率が20.5%でしたが、平成28年には25.3%となっています(平成28年10月住民基本台帳)。札幌市内で高齢化率が高い区は南区で32.2%、低いのは中央区で21.9%となっています。

高齢化が進むことで、がん、認知症、歯周病、骨粗鬆症、肺炎などの感染症などの病気がQOLに大きな影響を及ぼします。私が専門とする糖尿病でも、20年前までは、三大合併症としての網膜症、腎症、神経障害が大きな問題としてとりあげられていましたが、最近では2型糖尿病患者の60%以上が高齢者であるという状況に鑑みて、がんや認知症などが糖尿病関連疾患として注目されています。昨年公表された糖尿病患者の死因調査でも、死因の第一位はがんで全体の38.3%、感染症(17.0%)、血管障害(14.9%)と続きます。がんでは肺がんが最も多く、肝臓がん、膵臓がんの順で、感染症の大部分は肺炎です。血管障害については脳血管障害が虚血性心疾患よりも多く、虚血性心疾患による死亡は10年前には死因の10.2%でしたが、今回は4.8%と大幅に減少しています。病院内での死亡に限定した調査ではありますが、糖尿病患者の高齢化とともにがんや肺炎による死亡が増加していることは毎日の外来診療の現場でも実感されます。

医療においては患者のQOL(Quality of Life)を高く保つことの必要性が声高に叫ばれていますが、私たちの2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるという現状を顧みた時、QOD(Quality of Death)についても議論が必要な時代を迎えつつあるのではないかと実感する昨今です。