札幌病院


札幌病院ホーム > NTT東日本札幌病院について > 年報(2015年) > 心臓血管外科


心臓血管外科

業務内容

心臓血管外科は副院長 松浦(58期)、部長 瀧上(65期)、医長 松崎(68期)の3人体制で2015年も人員の変更はありませんでした。本年も9月に研修2年目の高橋さゆみ先生が、11月には渕崎智紀先生が当科に研修に来てくれました。年々年老いていく心外Staffに活気をもたらしていってくれました。それぞれ1か月間の短い時間でしたが、高橋先生は初日から大動脈解離の緊急基部置換+弓部置換術をはじめそれなりの数の開心術を経験してもらい将来の仕事に役立つはず(?)の研修ができたのではないかと思っています。渕崎先生も重症の弁膜症や、慢性解離の上行置換、冠動脈バイパス術とこちらも当科で経験できる開心術を経験してもらいました。将来外科系の科を選択する気持ちがあるようなのでこちらもよい経験をしてくれたのではないかと思います。

2015年1月1日から12月31日までの手術総数は206例で、昨年より総数は減少しましたが、心臓・胸部大血管手術総数は63例、人工心肺使用症例+OPCABは55例でほぼ昨年と同数でした。手術による病院死亡は無く、破裂を含む胸部大血管疾患の緊急手術が10例と昨年より増加しましたが死亡例は無く、成績は良かったと考えています。

手術症例の傾向として、冠動脈バイパス術や弁膜症疾患にたいする手術数は例年と大きく変わりませんでしたが(表2、3)、今年はいわゆるOff Pump CABGが冠動脈バイパス術の7割と多かったのが特徴でした(表3)。弁膜症は20例で、本年も弁膜症の半分以上は複合弁膜症あるいは虚血性心疾患や、不整脈に対する手術の合併手術症例でした。

B型急性大動脈解離症例で下行大動脈の真腔の高度狭窄で下行以下の虚血症例に胸部ステントグラフトを施行してEntry closureと真腔血流の確保を行い良好な結果でした。胸部大血管疾患は23例で約半分が大動脈解離症例でした(表4)。末梢血管疾患(表5)は、腹部大動脈以下の末梢動脈疾患が47例、下肢静脈瘤を含む静脈疾患が73例、透析用の内シャント症例が9例で合計129例でした。腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤は26例で、うち腹部大動脈瘤ステントグラフト(EVAR)は14例に施行し、作年に比較して減少しました。EVAR後のリークに対する追加治療の症例も7例と、今後多くなる可能性がある手術です。鼠蹊部以下などの末梢動脈症例は14例で、血管形成やbypass手術、stent留置を同時に施行するいわゆるハイブリッド治療が多い傾向を認め、単独バイパス手術は少なくなる傾向があります。下肢静脈瘤に対する手術は64例で、そのうち43例にレーザー治療を行いました。内視鏡下の穿通枝離断も2例に追加しています。日帰り外来手術や、局所麻酔による静脈瘤手術がほとんどとなり入院による手術は少なくなりました。静脈血栓症に対するカテーテル溶解治療やステント留置などの治療も継続的に施行しています。

心臓血管外科は現在のスタッフとなり2016年4月で9年になります。10年目を迎えるにあたりこれまでの軌跡を顧みると同時に、今後の当院での心臓血管外科医としての役割や活動、教育に目を向けていかなければならないと考えています。札幌市内のみではなく近郊や遠方からの患者さんも多数当院での手術を受けられており、治療成績や病院での対応についての評価もますます今後の診療に反映されてくると思います。自分たち自身の研鑽とStaffの教育、その結果として成績の向上を目指すことがこれからの目標となります。

表1 手術症例数(2015年1月1日〜12月31日)

心疾患 人工心肺使用症例 41
OPCAB 14
TEVAR(人工心肺使用症例+OPCAB症例+TEVAR 63) 8
末梢動脈疾患(腹部大動脈以下) 47
静脈疾患 73
内シャント関連 9
ペースメーカー関連 3
その他 11
手術総数 206

表2 弁疾患、成人先天性心疾患、その他の開心術(20例、死亡0例)

Valvlar disease re-MVP 1
MVP + Maze 2
MVR 2
MAP + TAP + CAB G 1
AVR(primary isolated)m-1, b-2 3
re-AVR 1
AVR + CABG 1
AVR + Maze 3
AVR + MVR + Maze 1
AVR + MAP + CABG 1
AVR + MVR + TAP + Maze 1
AVR + MAP + TAP + Maze 1
Cardiac tumor LA myxoma 1
IVS perforation 1

表3 虚血性心疾患(20例、死亡0)

単独冠動脈バイパス術(20例)
Conventional CABG 4
(5枝1、4枝1、3枝1、2枝1)
(Conversion to CABG 1、3枝1)
Off pump CABG 14
(5枝3、4枝3、3枝5、 2枝3)
Off Pump Beating CABG 2
(4枝1、3枝1)

表4 胸部大動脈疾患(23例、死亡0)

解離性(11例)
急性A型解離 (8例)
上行置換 3 上行+弓部置換 1
上行+弓部置換+TAP 1 上行+弓部置換+AV sus 1
Bentall +上行+弓部置換 1 Bentall +弓部置換+MVP+TAP 1
慢性A型解離 (2例)
上行置換 1 弓部 + Open Stent + CABG 1
急性B型解離 (1例)
Debranching TEVAR, Ax-Ax 1
非解離性(12例)
AAE 1 Bentall+MAP 1
上行 (吻合部瘤) 1 上行再置換 1
上行 + 弓部 1 上行+弓部全置換(rupture) 1
弓部 1 弓部 + Open Stent + CABG 1
下行 (6例)
TEVAR 5 Debranching TAVER, Ax-Ax 1
胸腹部 (2例)
人工血管置換 1 Debranching TEVAR 1

表5 末梢血管疾患(129例)

腹部および腸骨動脈領域 (33例)
AAA及び腸骨動脈瘤 (26例) EVAR 14
人工血管置換術 12
EVAR後Endoleakage 6 EVAR前 IIAA Coil閉塞 1
末梢動脈バイパス、形成 (14例)
Distal bypass 2 EVT 5
FA形成 + α 5 その他(仮性動脈瘤修復など) 2
静脈疾患 (73例)
EVLA 43 Stripping(+SEPS 2) 21
その他(IVC lter+CVTなど) 9
透析内シャント作成 9

表6 ペースメーカー関連およびその他の手術(14例)

ペースメーカー関連 3
その他 11

研究活動について

著書

  1. 松崎賢司:「表在静脈弁不全に対する外科治療の現状.内視鏡下筋膜下穿通枝切離術」松本純夫、春田直樹編 p22-26、2015

症例報告

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「腹部アンギーナに対して腸骨動脈―上腸間膜動脈バイパスを施行した1例」外科78、106-108、2016

全国学会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「内腸骨動脈瘤術後に腰部仙骨神経叢障害をきたした1例」第29回心臓血管外科ウィンターセミナー学術集会、2015年1月、ニセコ
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「複数回の血管内治療を念頭に置いた初回浅大腿動脈open穿刺法」第43回日本血管外科学会学術総会、2015年5月、横浜
  3. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「下大静脈浮遊血栓に対してカテーテル血栓溶解療法を施行した2例」第35回日本静脈学会総会、2015年6月、奈良
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「TEVARでのアクセストラブルに対し術中腸骨動脈ステントを留置した1例」第21回日本血管内治療学会総会、2015年7月、名古屋
  5. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「外腸骨動脈血栓内膜摘術と腸骨動脈ステント留置によるinflow surgery」第21回日本血管内治療学会総会、2015年7月、名古屋
  6. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「腹部ステントグラフトの脚閉塞に対して血管内治療を行った1例」第56回日本脈管学会総会、2015年10月、東京

地方会

  1. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司、三浦巧、竹本法弘、小西和也:「大動脈弁置換術後に非閉塞性腸管虚血症(NOMI)を発症した1救命例」第99回日本胸部外科学会北海道地方会、2015年9月、札幌
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「下大静脈浮遊血栓に対してカテーテル血栓溶解療法を施行した2例」第35回日本血管外科学会北海道地方会、2015年10月、札幌
  3. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司:「術後20年以上経過し、中枢側の吻合部離解によりWrapping部分の拡大を来たした腹部大動脈瘤術後の1例」第35回日本血管外科学会北海道地方会、2015年10月、札幌
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「Composix Meshと持続陰圧閉鎖による一時的腹壁形成術」第35回日本血管外科学会北海道地方会、2015年10月、札幌