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呼吸器内科

人の動き

呼吸器内科立ち上げ時から部長を務めてこられた本田泰人先生が3月をもって退職され、6月より西山が手稲渓仁会病院から異動し部長職を拝命いたしました(西山は2002年以来の勤務になります)。診療科部長が不在の2か月間、札幌医科大学から上原康昭先生に応援いただきました。9月に竹中遥先生が市立釧路総合病院へ異動、かわって10月から加藤宏治先生が市立釧路総合病院から着任されました。常勤医は計4名を維持、不慣れな新部長をよそに皆精力的に活躍してくれました。また年間を通して研修医はほぼ切れ間なく研修に来てくれました。

診療・業務内容

呼吸器内科では呼吸器疾患全般において特に高い専門性が不可欠な疾患の診療を担当しています。具体的には、高齢化の進行に伴い増加が避けられない肺癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、日本人の死因第3位となった肺炎をはじめとする呼吸器感染症、気管支喘息などのアレルギー疾患、難治性で診断等に高度な専門性が必要とされる間質性肺疾患、各種の呼吸不全などです。

悪性腫瘍における死因第1位である肺癌は依然として難治性・予後不良の疾患ですが、個々の肺癌症例における腫瘍の生物学的特性(組織型・癌遺伝子のprofileなど)によっては高い治療効果が期待できる新しい機序の薬剤が近年になって次々と登場し、治療の低侵襲化や副作用軽減手段の進歩もあって、肺癌患者さんの予後・QOLともこれまでより確実に改善してきており、外来治療へ移行できる症例も増えています。このような肺癌診療の趨勢において、個別化医療に対応するための高い診断能力がますます求められるようになってきていますが、当科では最先端の検査法である超音波気管支内視鏡(EBUS-GSやEBUS-TBNA)をルーチンで行っています(2015年における200件弱の気管支内視鏡検査のうち約2/3がEBUS-GSやEBUS-TBNAです)。標準的な薬物療法(抗癌剤・分子標的薬)は全て施行可能で多くはクリニカル・パスを適用し、これまでは入院以外での対応が難しいとされてきたシスプラチンを使用するレジメンも含めて積極的に外来化学療法を行っています。また放射線科との協力下に低侵襲かつ肺内の癌病変へ正確な照射ができる動体追跡照射が行えるのが当院の大きな特徴であり他院からの加療依頼にも対応しています。何よりも4月から念願であった呼吸器外科が新設され、緊密な連携の下、院内で肺癌治療が完結できる体制が整備されたことが非常に好ましいことでした。

COPDも今後さらに患者数の増加が懸念される疾患ですが単に呼吸機能障害だけではなく全身疾患として捉えることが求められており、薬物療法のみならず、理学療法・在宅酸素療法/在宅人工呼吸療法・栄養療法など包括的対応が重要となっています。関連各部門との協力関係を強化しつつ診療にあたっていきたいと考えています。また呼吸器症状が顕在化する前の介入が肝要であるため、肺機能検査やCTでの早期診断を心がけている他、禁煙外来の受診枠を週3回に増やしました(西山と橋本みどり先生とで対応)。

肺感染症は細菌性肺炎が主体ですが、基礎にある呼吸器疾患のため難治化・重篤化する症例や、また当院には免疫力低下を伴う併存疾患で通院されている患者さんも多く真菌感染・抗酸菌感染・ニューモシスチス肺炎などの特殊な感染症の併発にもしばしば遭遇します。他、当科では局所麻酔下胸腔鏡が導入(2015年は22例)されており胸膜疾患の診断の他に膿胸の治療にも積極的に適用しています。外来では対象者には積極的に肺炎球菌ワクチンの接種をお勧めしています。

外来患者さんの多くは気管支喘息ですが、吸入ステロイド療法の普及、吸入薬の進歩(薬剤や吸入デバイス)によりコントロールは良好な症例がほとんどで、かつてよりは入院が必要な症例はずい分と減少しています。

間質性肺疾患はその診断に特に高い専門性が要求される疾患ですが、高分解能CT・気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支肺生検(TBLB))・症例によっては外科的肺生検で確診を目指しています。治療面でのトピックとしては、従来から確立された治療法がなく予後不良な特発性肺線維症(IPF)に対して、進行を遅らせられる新たな抗線維化薬であるニンテンダニブが年末に市販化され、今後順次導入予定です。

外来患者数

本田前部長の退職に伴う影響の他、希望者で経過が安定している患者さんの受診間隔を延ばしたこともあり、年間の延受診患者数は13,000人弱と例年より1割ほど減少していますが、きめ細やかな診療が望まれる肺癌などの患者さんへの診察時間をより多く確保できたと思います。外来化学療法の影響と思われますが外来診療収入は例年より増収でした。

入院患者数

年間の延入院患者数は8,600人強で昨年より微増でした。約半分が肺癌を中心とする悪性腫瘍、約1/4が肺感染症、約10%が間質性肺炎、気管支喘息は数%で疾患の傾向は例年とほぼ変化はなく、平均在院日数も15日台と同様でした。

今後も円滑な地域連携を通して、地域医療の充実のため専門性の高い医療を提供し続けることができますよう当科スタッフ一同努力して参ります。