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心臓血管外科

業務内容

2014年も心臓血管外科は副院長松浦(58期)、部長瀧上(65期)、医長松崎(68期)の3人体制で人員の変更はありませんでした。本年も年明けの1月に研修2年目の稗田哲也先生が昨年からの合計3か月間の長期間、当科に研修に来てくれて、そのまま北大循環器外科の医局の一員となり、大車輪の活躍をしてくれています。当院出身の研修医として立派に勤めを果たし、当院のlevelの高さ?を世に示してくれています。立田先生は現在中村記念病院で脳神経外科医としての第一歩を歩みだしています。昨年、他科の患者さんでしたが搬送時にICUへ迎えに来ていました。元気で頑張っている様子でした。本年は消費税の影響か(?)6月ぐらいから秋までの間の症例数が激減し、心・大血管手術は昨年より症例数が減少してしまいました。以下に本年度の症例のまとめを記します。

2014年の手術症例の概要(表1)

表1 手術症例数(2014.1.1〜2014.12.31)
心疾患 人工心肺使用症例 43 OPCAB 11
TEVAR 人工心肺使用症例
+OPCAB症例+TEVAR
60
末梢動脈疾患(腹部大動脈以下) 78 静脈疾患 108
内シャント関連 5 ペースメーカー関連 1
その他 22
手術総数 274

2014年1月1日から12月31日までの手術総数は274例で、昨年とほぼ同じでしたが、心臓・胸部大血管手術総数は60例、人工心肺使用症例+OPCABは54例で昨年より減少してしまいました。病院死亡は上行から弓部大動脈瘤で冠動脈疾患、および大動脈弁狭窄症を合併した症例で、術前からDIC状態を合併していましたが、コントロールして手術に臨んだところ、術後に出血コントロールがつかず、最終的には右心不全、出血で失った1例とAMI後の心室中隔穿孔症例で、術後心不全が遷延し遺残短絡に対する再手術を施行しましたが心機能の回復が得られず残念ながら救命できなかった1例の2例でした。腹部大動脈以下の末梢動脈疾患は78例、下肢静脈瘤などの静脈疾患は113例となっています。左総腸骨動脈瘤破裂の緊急手術例が、腸管の浮腫で閉腹できず、さらにその後肝動脈瘤破裂なども合併し、2度の動脈瘤破裂の緊急手術を何とか乗り切り、長期間かかってようやく閉腹、救命できた症例も経験しました。現在食事調整中で何とか自宅へ戻れる状態になってきています。

弁膜症、その他の心疾患(表2)

表2 弁疾患、その他の開心術(21例、死亡 0例)
Valvelar disease MVP 1 MVP+CABG+Maze 1
MVP+Maze 1 MVR 1
re MVR+re TAP 1 MAP+TAP+Maze 1
AVR(primary isolated)m-1,
b-5
6 re-AVR 1
AVR+CABG 1 AVR+Maze 2
AVR+MAP+CABG 1
Cardiac tumor LA myxoma 1 MV myxoma 1
Adult Congenital PAPVR, Lung Ca 1 VSD, healed IE 1

成人先天性心疾患の症例が2例で、70台の肺癌手術前の左上肺静脈還流異常症と、20歳台の感染性心膜炎治療後の心室中隔欠損症の症例でした。弁膜症は17例で、本年も弁膜症の大半は複合弁膜症あるいは虚血性心疾患や、不整脈に対する手術の合併手術症例でした。大動脈弁置換術を施行した10例中、9例に生体弁を使用し、高齢者が多いのは昨年同様でした。心臓腫瘍が2例(左房粘液腫および僧房弁粘液腫)でした。

左房粘液腫の症例は巨大な腫瘍が僧房弁を介して左房、左室を出たり入ったりしているような状態で、高度な心不全となり準緊急的に手術を施行しました。

虚血性心疾患(表3)

表3 虚血性心疾患(20例、死亡 1)
単独冠動脈バイパス術 18 Conventional CABG 7
(4枝2、3枝3、2枝1、1枝1)
Off pump CABG 11
(6枝1、4枝4、3枝5、1枝1(re do))
心筋梗塞後合併症 ※ 2(1)
VSP(posterior AMI) 1 residual VSP(心不全) 1(1)

虚血性心疾患は20例で単独のCABG症例は18例でした。人工心肺を使用した単独冠動脈バイパス(CABG)が7例、オフポンプCABGは11例でした。80歳台後半の急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔の緊急症例は、初回手術後心不全が遷延し、2週間後に遺残短絡に対しての再手術を施行しましたが心不全の改善が得られなく残念ながら失ってしまいました。

※ 同一症例、2手術

胸部大血管疾患(表4)

表4 胸部大動脈疾患(19例、死亡 1)
解離性 (8例)
急性A型解離 3 上行置換 3
慢性A型解離 2 上行置換 1
上行+弓部置換 1
急性B型解離 1 TEVAR 1
慢性B型解離 2 下行置換 1
TEVAR 1
非解離性 (11例)
上行+弓部 1 上行+弓部全置換(破裂緊急例) 1
弓部 4 弓部置換+ET+CABG 2
弓部+Open Stent+AVR(DIC) 1(1)
弓部+Open Stent+CABG 1
下行 4 TEVAR 4
胸腹部 1 人工血管置換(感染性瘤) 1
胸部吻合部瘤破裂 1 縫合閉鎖(破裂) 1

胸部大血管疾患は合計19例でした。解離性大動脈瘤は8例で、A型急性大動脈解離で緊急手術を要した症例は3例でした。いずれも術後は問題なく退院されました。慢性A型大動脈解離の2例に上行置換術および上行+弓部置換術を行いました。B型急性大動脈解離症例に胸部ステントグラフトを施行してEntry closureを行い良好な結果でした。今後、このような症例に対しての適応も検討してきたいと考えています。

非解離性大動脈瘤は11例で、術式は表4のとおりでした。胸部大動脈ステントグラフト( TEVAR ) はOpen stent症例を含むと6例に施行しています。そのうち、弓部および下行大動脈に嚢状の多発性の動脈瘤を認め、さらに狭心症、大動脈弁狭窄症を合併していた70歳台の症例は術直前に動脈瘤によると思われるDICを発症し、術前に内科的治療を施行して改善したと思われましたが、術後に再度悪化し出血コントロールがつかなく、最終的に心不全で失いました。緊急例は胸部大動脈瘤の破裂および急性大動脈解離術後の吻合部動脈瘤破裂の2例でいずれも80歳台の高齢でしたが、良好な結果でした。弓部破裂の症例は、胸腹部および腹部大動脈瘤もあり、その後、腹部に対して人工血管置換術を施行し、腹部分枝の血行再建をあらかじめ行い、現在胸腹部大動脈瘤に対するStent graft挿入術の待機中です。胸腹部大動脈瘤の1例は、70歳台の症例で感染性動脈瘤の診断で人工血管置換術を施行し、術後は脊髄麻痺も認めず、感染もコントロールされ良好な結果でした。

末梢血管(動脈)疾患(表5)

表5 末梢血管(動脈)疾患(78例)
AAA及び腸骨動脈瘤 49
EVAR 27
(破裂1、Y-Graftリーク1)
人工血管置換術 20
(Y19、S1、破裂2、感染2)
人工血管置換+
debranching(for TAAA)
1 EVAR後付加手技
(Ib maior leakにLeg追加)
1
末梢動脈バイパス、形成 9
FA endoaterectomy 1 ハイブリッド治療 FA endoarterectomy+Iliac stent 3
膝上 F-P(AK)bypass 2
(FA endoaterectomy1,F-P graft thrombectomy+re bypass1)
膝下 SFA endoaterectomy+F-T bypass1,Pop. A -T bypass 1 Iliac a. 血栓摘除+Iliac a. stent+F-F bypass 1
PPI 12
Iliac 3,SFA 2,POBA 4 EVAR後付加手技(Type II leakのBranch coil閉塞) 2
EVAR前処置IIA coil閉塞 1
その他の動脈疾患 8
右腕頭動脈破裂(感染)に対してStent graft挿入 1 総肝動脈破裂 1
動脈血栓摘除 6

腹部大動脈以下の末梢動脈疾患は78例でした。腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤は49例で、うち腹部大動脈瘤ステントグラフト(EVAR)は27例に施行し、例年に比較して増加しています。他院でY-graft置換術後に人工血管自体からリークして、人工血管をCoverしておいた瘤壁の拡大をきたし、EVARを施行した非常に珍しい症例を経験しました。動脈瘤の破裂は3例で、そのうちの一例が苦労した前述の症例でした。感染の動脈瘤も2例あり、いずれも大網充填などを併用し解剖学的に再建する手術を行い、現在のところは再発なく経過されています。鼠蹊部以下などの末梢動脈症例は29例で、bypassあるいは動脈形成術を施行した症例は9例でした。そのうち、血管形成やbypass手術とstent留置を同時に施行したいわゆるハイブリッド治療も4例程度で、Stent留置やバルーン血管形成などの血管内治療は12例に施行。末梢動脈治療に関しては症例に応じて術式を検討しながら行っています。

その他の血管疾患(表6)およびその他の手術(表7)

表6 その他の血管疾患(113例)
静脈疾患 108
下肢静脈瘤 97 ※
(内視鏡的穿通枝結紮併施 6)
Stripping 32
EVLA 54
RFA 4
その他(瘤切除、硬化療法など) 7
Iliac vein stent 1 Iliac Vein, IVC PTA(カテ後閉塞に対して) 1
IVC Filter 6 IVC Filter+CDT 3
内シャント関連 5
表7 ペースメーカー関連およびその他の手術(23例)
縦隔腫瘍切除(開心術後、胸骨再正中切開) 1 ペースメーカー本体、リード抜去(感染) 1
創再縫合 6 術後出血再開胸 1
腹壁開放創処置(再閉鎖、血腫除去など)(同一患者) 4 術後血腫ドレナージ 1
下腿筋膜切開(急性下肢動脈閉塞患者) 1 足趾切断、debredement 4
気管切開 3 補助循環(抜去) 1

今年も下肢静脈瘤に対する手術は97例と多く、そのうち54例にレーザー治療を行いました。内視鏡下の穿通枝離断も6例に施行しています。日帰り外来手術や、局所麻酔による静脈瘤手術がほとんどとなりました。静脈血栓症に対するカテーテル溶解治療やステント留置などの治療も施行しています。

以上、本年の症例をまとめてみました。2015年は先延ばしになっていたICU新設が実現間近となり、いよいよ2月から稼働することになりました。今度は手術室と同じfloorとなり術後の移動する距離も短くなり移動によるストレスも軽減できると期待しています。相変わらず心臓血管外科の医師の高齢化問題は解決していませんが、昨今の病院事情もあり、今後、ますます症例数を増やすよう、高度で良質な医療技術の提供を心掛けて日々の診療を行っていきたいと考えています。

心臓血管外科 2014年業績

症例報告

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「腹部大動脈瘤ステントグラフト留置術後に結腸切除を要する虚血性腸炎をきたした1例」外科76、1653-55、2014

全国学会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「腸骨静脈ステント留置症例の検討」第34回日本静脈学会、2014年4月、沖縄
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「腹部血管手術における術後鎮痛を目的としたTumescent Local Anesthesiaの応用」第42回日本血管外科学会、2014年5月、青森
  3. 崎賢司:「腕頭動脈瘤破裂に対するステントグラフト留置時に腕頭動脈解離をきたした1例」第18回大動脈ステントグラフト研究会、2014年6月、和歌山
  4. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司、松居喜朗:「高齢者に対する順行性脳分離体外循環の安全性の検討−術後脳合併症に関して」第44回日本心臓血管外科学会総会、2014年2月、熊本
  5. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司:「高齢者腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤に対する治療戦略−ステントグラフトと人工血管置換術」第55回日本脈管学会総会、2014年10月、倉敷

地方会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「複数回の血管内治療施行を念頭に置いた初回浅大腿動脈open puncture法」第34回日本血管外科学会北海道地方会、2014年10月、札幌
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「小伏在静脈弁不全に対するレーザー焼灼術施行症例の検討」第34回日本血管外科学会北海道地方会、2014年10月、札幌
  3. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司:「腹部大動脈瘤に対するY型Knitted Dacron人工血管置換後、遠隔期に人工血管の破綻をきたしEVARを施行した1例」第97回日本外科学会北海道地方会、2014年9月、札幌
  4. 瀧上剛、松崎賢司、松浦弘司:「大動脈弁に発生した乳頭状弾性繊維腫の一手術例」第96回日本胸部外科学会北海道地方会、2014年2月、札幌

その他

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:「EVAR後type2 endoleakから十二指腸瘻にいたった1例」Endovascular Surgery Forum in Hokkaido、2014年10月、札幌

座長

  1. 松浦弘司:「第96回日本胸部外科学会北海道地方会」2014年2月、札幌