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心臓血管外科

業務内容

2013年も心臓血管外科は副院長 松浦(58期)、部長 瀧上(65期)、医長 松崎(68期)の3人体制で人員の変更はありませんでした。本年も8月、9月、さらに年明けの1月に研修2年目の稗田 哲也先生が合計3か月間の長期間、当科に研修に来てくれて、喜ばしいことに当科の研修を契機に北大循環器外科の医局の一員となることを決心してくれました。非常にAggressiveな性格で、いろいろと興味を持って仕事に取り組んでおり、将来は優秀な心臓血管外科医となるに違いありません。立田先生は年明けの研修で2013年中ではありませんでしたが、やはり2ヶ月間の長期に当科で研修をしてくれました。脳神経外科医を志しており、将来有望な先生で、急性期の循環管理を勉強したいということで当科の研修を選択された稀な逸材です。2人が来てくれて、お年寄りの我々にも活気を取り戻すことができました。

今年の心・大血管手術は例年より症例数が増え、特に冠動脈バイパス術が例年と比較して増加していました。以下に本年度の症例のまとめを記します。

2013年の手術症例の概要(表1)

表1 手術症例数(2013.1.1〜2013.12.31)
心疾患 人工心肺使用症例 52 補助循環(消化器外科手術時の補助) 1
OPCAB 18 末梢動脈疾患(腹部大動脈以下) 70
人工心肺非使用 2 静脈疾患 99
TEVAR 2 内シャント関連 6
(開心術+TEVAR) (74) ペースメーカー交換・移動 1
(人工心肺使用症例+OPCAB症例+TEVAR) (72) その他 21
手術総数 272

2013年1月1日から12月31日までの手術総数は272例で、昨年より30例ほど減少しましたが、心臓・胸部大血管手術総数は74例で、人工心肺使用症例+OPCABは70例で例年より10例近く増加しました。病院死亡は急性A型大動脈解離で術前のショック状態から脳障害をきたし他院転院後に敗血症で失った1例とAMI後の心破裂の症例の2例でした。大動脈弁置換術後にNOMIを発症し、外科の先生方に腸管切除、人工肛門造設など懸命の治療をしていただき、ほぼ半年間お世話になり何とか自宅退院することが可能であった症例も経験しました。腹部大動脈以下の末梢動脈疾患は70例、下肢静脈瘤などの静脈疾患は105例となっています。

弁膜症、その他の心疾患(表2)

表2 弁疾患、その他の開心術(26例、死亡 0例)
MVP 1 AVR + Maze 2
MVP+CABG 2 AVR + MVP 1
MVR 1 AVR + MVP + CABG + Maze 1
MVR + Maze 1 AVR + MVR + Maze 1
MVP + TAP 1 AVR + MVP + TAP 2
MVP + TAP + CABG 1 AVR + MVP + TAP + CABG + Maze 1
MVR + TAP + Maze 2 Constrictive Pericarditis 2
AVR(primary isolated) 5 Cardiac tumor(Papillary fibroelastoma of Aortic Valve) 1
AVR + CABG 1

今年は先天性心疾患の症例は無く、弁膜症23例、収縮性心膜炎2例、大動脈弁腫瘍1例でした。本年も弁膜症の大半は複合弁膜症あるいは虚血性心疾患や、不整脈に対する手術の合併手術症例でした。大動脈弁置換術を施行した14例中、10例に生体弁を使用し、70歳以上の高齢者が多くなってきています。開心術後と、原発性の収縮性心膜炎の症例に人工心肺を使用しないで心膜切除を施行しました。また、大動脈弁原発の稀な乳頭状弾性線維腫の症例にたいして腫瘍切除を行っています。

虚血性心疾患(表3)

表3 虚血性心疾患(30例、死亡 0)
単独冠動脈バイパス術 29 心筋梗塞後合併症 1
Conventional CABG 11
5枝 1、4枝 5、3枝 3、2枝 2
Overlapping LVP 1
+MAP+PMA
Off pump CABG 18
6枝 1、5枝 2、4枝 4、3枝 6、2枝 4、1枝 1

虚血性心疾患は昨年より増加し、単独のCABG症例は29例でした。人工心肺を使用した単独冠動脈バイパス(CABG)が11例、オフポンプCABGは18例でした。虚血性心筋症(ICM、EF30%以下、慢性透析中), 僧房弁閉鎖不全症の1例は北大循環器外科の松居喜郎教授に来ていただきOverlapping法と乳頭筋形成および僧帽弁弁輪縫縮による左室形成術に冠動脈バイパス術、三尖弁弁輪形成術を施行していただき結果は良好でした。

胸部大血管疾患(表4)

表4 胸部大動脈疾患 (18例 死亡 1)
解離性 (8例)
急性A型解離 6例 上行置換(他院転院後敗血症で死亡 1) 3
上行・弓部 2
上行・弓部置換+Bantall 1
慢性A型解離 2例 上行置換 2
非解離性 (10例)
上行 3例 上行置換+Partial arch 1
上行置換+AVR 2
弓部 3例 弓部置換+ET 2
弓部置換 1
下行 2例 TEVAR 1(rupture)
Debranched TEVAR 1
胸腹部(rupture 1) 2例 人工血管置換 2

胸部大血管疾患は合計18例でした。解離性大動脈瘤は8例で、A型急性大動脈解離で緊急手術を要した症例は6例でした。術直前に心タンポナーデからショック、心停止となり開胸心臓マッサージを行って蘇生し手術を施行した80歳台の1例は、脳虚血による脳障害をきたし、術後3カ月目に他院へ転院されましたが、転院先で敗血症となり救命できませんでした。慢性A型大動脈解離の2例に上行置換術を行いました。そのうち1例は86歳の高齢者で、急性期は血栓閉塞性の診断で保存療法を施行しましたが、ULPの拡大により再手術を要した症例でお元気に自宅退院されています。非解離性大動脈瘤は10例で、術式は表4のとおりでした。本年も胸部大動脈ステントグラフト(TEVAR)はわずか2例でした。胸腹部大動脈瘤の1例は、80歳以上の高齢でしたが感染性動脈瘤の診断で人工血管置換術を施行し、良好な結果でした。

末梢血管(動脈)疾患(表5)

表5 末梢血管(動脈)疾患(70例)
AAA及び腸骨動脈瘤 40
EVAR 14 人工血管置換術 23
(Y 18、S 5)
腸骨動脈瘤切除 1 EVAR後付加手技 2
(Leg追加 1、Aortic Cuff + Leg 追加 1)
末梢動脈バイパス、形成 8
膝上 F-P(AK) bypass 2
(FA Aneurysmectomy 1)
ハイブリッド治療 FA endoaterectomy + Iliac stent 1
SFA endoaterectomy 1
膝下 SFA endoaterectomy + F-T bypass 1 FA plasty + SFA stent 2
F-T bypass 1
PPI 14
Iliac 8 SFA 3
F-T bypass graft 3
その他の動脈疾患 8
血栓摘除 3 血栓摘除 + Iliac stent 3
血栓摘除 + Popliteal artery PPI 1 FA仮性動脈瘤 1

腹部大動脈以下の末梢動脈疾患は70例でやや少ない傾向でした。腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤は40例でうち腹部大動脈瘤ステントグラフト(EVAR)は14例に施行しています。例年通り、人工血管置換術が多い傾向にあり、EVARも積極的に行っていますが、高齢者や開腹手術の困難な症例に適応しており、今年は1/3ぐらいの割合となっています。80歳以上の高齢でしたが、EVAR後にエンドリークによる瘤の拡大をきたし、追加治療でも拡大を繰り返すため最終的に人工血管置換術を施行した症例を経験しました。
鼠蹊部以下の末梢動脈症例は30例で、bypassあるいは動脈形成術のみを施行した症例は5例だけでした。血管形成やbypass手術とstent留置を同時に施行したいわゆるハイブリッド治療も3例程度で、Stent留置やバルーン血管形成などの血管内治療が多い傾向がありました。

その他の血管疾患(表6)およびその他の手術(表7)

表6 その他の血管疾患(105例)
静脈疾患 99
下肢静脈瘤 89 IVC Filter 7
(静脈抜去+瘤切除など 42、EVLA 45, 内視鏡下穿通枝結紮+瘤切除など 2) IVC Filter + CDT 1
Iliac vein stent 1 Femoral vein plasty + Bypass(Palma ope) 1
内シャント関連 6
表7 ペースメーカー関連およびその他の手術(22例、死亡 1例)
PPM 電池交換 1 縦隔炎(再閉鎖、VAC交換を含む) 6
心嚢ドレナージ 1 膿瘍ドレナージ 2
心破裂(試験開胸) 1(1) 足趾切断、debredement 3
創再縫合 6 気管切開 1
術後出血再開胸 1 補助循環(消化器外科手術時の補助) 1

今年も下肢静脈瘤に対する手術は89例と多く、そのうち45例にレーザー治療を行いました。内視鏡下の穿通枝離断も2例に施行しています。日帰り外来手術や、局所麻酔による静脈瘤手術などを積極的におこなっており、現在殆どの症例は局所麻酔のみの手術を施行しています。AMI後の心破裂の症例は、心嚢ドレナージを施行し一旦は非常に安定した状態となっていましたが、翌日ICUで再破裂をきたしすぐに開胸をして手術を施行しましたが救命できませんでした。

以上、本年の症例をまとめてみました。2014年はいよいよICUが新しい場所に移設され、院内の病棟再編などで、循環器内科との合併病棟の実現することになっています。心血管センターが発足すれば診療も今まで以上に内科の先生方とスムーズに連携をとってけるのではないかと期待しています。強いて問題点を挙げるとすれば心臓血管外科の医師の高齢化ぐらいですが、症例数もこのまま増えてくるようであれば稗田先生のように若くて心臓血管外科をこれから志す医師の方にも、開心術や末梢血管に至るまで十分に研修を受けていただける環境は提供できると思いますので、積極的に後期研修の先生方の募集もさせていただこうかと考えています。もちろん今年も患者さんや、内科の先生方、さらに院内の他科の先生方と協力して日々の診療を行っていきたいと考えています。

心臓血管外科 2013年業績

症例報告

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:遠位塞栓、下肢虚血で発症した人工血管アスペルギルス感染の1例 日心外会誌 43、5-8、2014

全国学会

  1. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司:急性A型大動脈解離手術時の大腿動脈送血の是非についての検討 第41回日本血管外科学会学術総会、2013/05/30 大阪
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:下肢深部静脈血栓症に対するカテーテル血栓溶解療法 第33回日本静脈学会 2013/6 倉敷
  3. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:腹部大動脈瘤ステントグラフト留置後結腸切除を要する虚血性腸炎をきたした1例 第19回日本血管内治療学会 2013/7 青森
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:浅大腿動脈eversion endarterectomyを併用した下肢バイパス手術の経験 第54回日本脈管学会、2013/10、東京
  5. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司、三森太樹、森 猛、~ 幸二、松居 喜郎:大動脈弁置換術後、中等度人工弁位圧較差残存症例の術直後および中期遠隔期の臨床的検討
    第66回 日本胸部外科学会総会 2013-10-18, 仙台

地方会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:浅大腿動脈eversion endarterectomyを併用した下肢バイパス手術の経験 第98回 北海道外科学会、2013/3札幌
  2. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司:TRIFECTA人工弁による大動脈弁置換術の術後早期成績―6例の使用経験 第93回日本胸部外科学会北海道地方会、2013/09/14 札幌
  3. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:腹部血管外科におけるTLAの応用 第99回 北海道外科学会 2013/10 札幌
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:血栓摘除不成功時の術中腸骨動脈ステント留置 第34回日本血管外科学会北海道地方会 2013/10 札幌

講演その他

  1. 松崎賢司:AAA人工血管置換術後十二指腸出血で死亡した1例
    札幌Vascular meeting 2013/3、札幌
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:左鎖骨下entryを有する慢性解離に対してステントグラフトでentry閉鎖した1例 Endovascular Surgery Forum in Hokkaido 2013/4、札幌
  3. 松浦弘司、瀧上 剛、松崎賢司:著明な僧房弁輪石灰化を伴った症例に対するMVRの経験第1回 北大循環器・呼吸器外科疾患懇話会 2013/6/30 札幌
  4. 松崎賢司:内腸骨動脈瘤手術後の腰部仙骨神経叢障害の1例
    札幌Vascular meeting 2013/9 札幌
  5. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:Excluderでの術後早期脚閉塞の1例 Endovascular Surgery Forum in Hokkaido 2013/10、札幌

座長、司会など

  1. 松浦弘司:3/29 サムスカ講演会 座長、札幌
  2. 松浦弘司:11/16シネアンジオ研究会 座長、札幌