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 [2006年5月 わが家の防犯対策と情報通信 「てれこむWhat's up」では身近な話題から海外の情報まで、テレビ・新聞・雑誌をにぎわすテレコミュニケーションの「ハテナ?」にお答えします。]

住まいの安心を実現する技術の進化

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 前半で紹介した生体認証は、そもそも不審者を住まいに入れない手段としては極めて有効です。普通の鍵を用いた扉ではピッキングにより侵入される恐れがありますが、生体認証で扉を管理することでピッキングによる不正な侵入の恐れがなくなるからです。今まさに、マンション等を中心として生体認証を用いて住まいの安全性を高めようとする事例が出てきつつあるところですが、ここに至るまでには、いくつかの課題を克服する必要がありました。

最も大きな課題
生体認証をだませてしまう手段への対策

 指紋認証の例で見てみましょう。

  指紋認証の流れは、あらかじめ自分の指紋のパターンを登録しておき、認証のときに登録された指紋のパターンと一致するかどうかを照合して、本人かどうかを判定するというもの。もしあなたの指紋が何らかの方法で入手されて、その指紋をもとに作った人工の指で指紋認証を通過してしまうとしたらどうでしょう? 実際、このような事態が起こりうることが、2000年7月に発表された横浜国立大学の松本勉教授の実験から指摘されました。

 この実験は、プラスチック粘土で指紋の型をとり、そこにゼラチンを流し込んで人工の指を作り、それで指紋認証をだませるかどうかを確認するというものでした。実験の結果、本物の指で指紋のパターンを登録しているにもかかわらず、ゼラチンで作った人工の指でも本物の指同様に高い確率で本人と認証されてしまうということが分かったのです。

 「意図的にプラスチック粘土で型をとることをしなければ、別に心配いらないんじゃない?」と思う方もいるかもしれません。しかし、そうではありませんでした。一連の実験では、プラスチック粘土で型をとらなくても、ガラスコップやマウスといった私たちが日常触れるものに無意識のうちについた指紋をパソコンで画像処理して型を作り、その型から作った人工の指でも、やはり指紋認証をだませてしまうことも分かったのです。まるで映画のワンシーンのようですが、現実に認証をだませてしまう以上、重大な問題となっていました。

 しかし、このような課題は認証技術の進化により今や解決されつつあります。
 マンション等に指紋認証技術の製品を提供している株式会社シーモンの担当者の方にお話を伺ってみると、「たとえ指紋のパターンが同じであって人工の指では指紋認証を通さない。血の通った本物の指でないと、指紋認証をだますことはできません」とのこと。

[万が一、他人の指紋が指に触れるパネルに残っていて、そこに太陽や蛍光灯の光が当たっても、解錠されることはない。]

指紋認証以外の生体認証

 生体認証技術の進化は、指紋認証に限りません。瞳孔の開きを調節する瞳の放射状の模様(筋肉部分のパターン)用いる虹彩認証では、その模様の画像を印刷した人工の虹彩をかざすことで認証をだませたり、顔の輪郭、目や鼻や口の形状を用いる顔認証においても、本人の写真をかざすことで認証をだませたりという弱点がありました。これらの弱点を克服するための研究開発も進められてきており、私たちの生活に身近な住まいの安全性を生体認証技術によって高められる期待は高まってきているわけです。

 とはいえ、指紋認証等の生体認証技術をわが家にすぐ導入しようというほど身近に感じられる方はまだまだ少ないのが現実ではないでしょうか。一つの要因としてこれらの装置が現時点では高価なことが挙げられます。また、実際に導入するとしても生体認証技術の装置単独で利用するのではなく、従来の鍵と併用することで安全性を高めようと考える方も多いかもしれません。

 急速な普及というのは難しいと思われますが、今後10年先を展望すれば、これから新しく住まいを購入するという機会などを中心に徐々に生体認証技術が私たちの住まいに普及していくのかもしれません。「鍵っ子」という言葉が流行したのは高度経済成長期の1960年代前半のころですが、20XX年には「鍵っ子」に代わる新たな言葉が生まれているかもしれませんね。

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*文中太字は用語解説あり

情報提供 (株)情報通信総合研究所 仁木孝典

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