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第6回 雷と闘う

「ブリおこし」と呼ばれる北陸特有の冬季雷

雷は、一般的には夏の現象である。俳句などでは夏の季語に定められ、雷の原因となる雷雲や入道雲(ともに積乱雲の異称)も夏の季語だ。しかし、日本海沿岸では冬にも雷が発生し、特に北陸地方に多い。冬の雷はほかにノルウェーの大西洋側に見られる程度で、世界的にも珍しいとされる。

北陸で冬に雷が発生するのは、冬型の気圧配置に伴って大陸から吹いてくる冷たく乾いた季節風が、真冬でも10度以上という対馬海流(暖流)から熱と水蒸気を受け、大量の積乱雲を形成するからである。

富山の漁業関係者は、この時期に富山湾沖で寒ブリが取れ始めることにちなんで冬の雷を「ブリおこし」と呼び、吉報として待ち焦がれる。

しかし、通信設備を保守するNTTネオメイト北陸の技術者たちにとっては、緊張を強いられるシーズンの幕開けを告げるものとなる。

冬の雷はやっかいだ。雷雲が夏よりも低空で形成されるため、同じ場所へ短時間に何度も落雷するという特色がある。さらに、夏の雷の数百倍ものエネルギーを持つものが多く、雷害の被害規模も大きくなる。

特に、雷と雪が重なると厳しい。「湿り気のある重たい雪が、『着雪(ちゃくせつ)』と言うのですが、お客さま宅への通信ケーブルの引き込み線に白クマの腕のように絡み付き、断線などの要因ともなるのです」。雷害と雪害が同時に多発すれば、故障の件数も膨大になる。

それだけではない。雪が積もれば道路事情が悪化し、現場へ到着するまでの移動時間が増大する。道路の両脇には除雪された雪が積み上がり、高所作業車を電柱に寄せることができない。そうなれば電柱をよじ上っての作業となり、危険も増す。積雪で車が通れない所へは、10kg近い機材を担いで歩く。「標高200mほどの山の上にある鉄塔での修理で、丸一日を要したこともある」とベテラン技術者。防寒着を着込むため、夏のようには体の自由が利かず、手もかじかんで、精密さが要求される故障修理の能率は下がってしまう。

しかも、冬は日が短い。その分、屋外での作業が可能な時間も限られる。故障修理にあたる技術者は、「心細い思いをしている人たちに、"電話がつながる"という安心を一刻でも早く届けたい」と、日が暮れて手元が見えなくなるまで作業を続ける。

そんな技術者の一人である岡本俊雄は、休日に家族とくつろいでいるときでも、雷鳴が聞こえると通信設備が気になり、「呼び出しがあるかもしれない」と妻に告げる。

58歳の岡本の体にはこたえる任務ではあるが、「ライフラインである通信サービスの障害を迅速に復旧させ、地域の人たちの安心と安全を守っている、そういう任務に就いているのだという使命感、そして誇りを、仲間のみんなが持っていると思う」。

職場の仲間と一献傾ければ、自ずとそんな話になる。現場での苦労話がさかなとなることも多い。業務を離れたこうした場においても、さまざまな知恵とノウハウが共有され、そして雷が落ちようと、雪が降ろうと、当たり前のように電話を使えるようにしなければならないという、ライフライン企業として百三十余年にわたり脈々と受け継がれてきたDNAが継承されているのだろう。

彼らにとっては、電話がつながって胸をなで下ろす人たちの笑顔と、その口から自然とこぼれる喜びの言葉こそが何よりのやりがいである。

しかし、現場では感謝されるばかりではない。「来るのが遅い」とすさまじい剣幕で怒鳴りつけられることも度々だ。それでも技術者たちは「電話に対するお客さまの期待はこんなにも大きいということの表れ。それだけ通信の担っている社会的使命は重いのだ」と自らの仕事への誇りを高め、誓いを新たにするのだった。

雷害をはじめとする自然災害時には、早朝に出発し、帰ってくるのは深夜ということもしばしば

冬場には現場まで車で行けず、10kgほどもある装備を担いで歩くこともある

真剣な眼差しで故障修理を行う。16年度に雷害により更改した通信ケーブルは富山県内だけでも約5kmに達する

高所作業には危険が伴う