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第2回 島を守る通信ネットワーク

島を襲う大地震・津波から通信網を守れ

NTT東日本/西日本はいかなる災害でも早期に通信網を復旧させることを目指している。最悪の事態であっても、2週間以内に被災者が安否確認などを行えるようにするのだ。1995年の阪神・淡路大震災では、のべ28万人の技術者が投入されて地震発生から14日目に復旧にこぎつけた。

災害復旧は当然ながら莫大な費用がかかるが、通信サービスの途絶を許すことはできない。特に、加入者の少ない島の通信網維持はコストも高く、通信事業者としては経営効率上決して良いとは言えない。

離島も含めて、現代の日本で通信は「あって当たり前」の存在となった。重要な社会基盤の1つとして人々の暮らしを支えている。かつて通信が未整備だった時代と比較するとその重要性が浮き彫りになる。

明治のはじめ、大久保利通がニューヨークからロンドン経由で東京宛の電報を打ったところ、長崎までは数時間で電報が到着したが、その先は飛脚郵便であったため、長崎から東京まで実に3昼夜を要したといわれる。この事態をきっかけに、1871年(明治4年)に東京〜長崎間(1430km)で電信線工事がはじまったという。

この工事で、最大の問題となったのが関門海峡での電信線敷設だった。結局、海に敷設することになり、翌1872年(明治5年)、下関側・前田〜門司側・雨ヶ窪間の約1kmを結ぶ、日本初の海底ケーブルが完成した。

当時は、本州といえども「島」であったのだ。そして今、「本土」は通信網のループ化や多重化により、もはや島ではなく「一体の陸地」となった。同じように、現在では大小さまざまな島にも、海底ケーブルや無線(マイクロ波)送受信装置が設置され、あたかも陸地の一部のようになった島の暮らしを絶え間なく支えている。
NTT西日本の甲斐清治災害対策室担当課長は、「NTT西日本のエリア内には多くの島があるが、人が住んでいて通信ができない島はない」と胸を張る。

こうした不断の努力により、通信は島のライフラインとしての基盤を固め、島が抱えるリスクを軽減している。甲斐課長は、「台風に先回りしてどのような準備を整えるかといったソフト面での対応力が高まり、ポータブル衛星通信装置の開発などハード面での技術進歩も相まって島の通信を確保する道が広がっている」と説明する。

そして、「これからの課題は、大地震による津波被害にいかに対応するかだ」と話す。実際、いわゆる離島では、海岸から比較的近い所に居住地が多く、津波が来襲するとひとたまりもない。2004年暮れにインド洋で発生した大津波では、沿岸諸国あわせて18万人以上もの死者・行方不明者(1月13日現在)が出る未曽有の大惨事となっている。

津波の影響を少しでも軽減するには、地震情報の素早い伝達はもとより、津波災害に対して自治体等と連携した対応が必要だ。

一般的には、海底ケーブルが陸にあがる付近では、巨大な津波の力で陸に近い所のケーブルが押し流され、切断する危険性が高いと言われている。海底ケーブルの接続ポイントとなる電話局「陸上げ局」が津波によって破壊されれば、通信網の被害はさらに拡大する。
「すでに2002年に、大地震発生を想定した人員配置などの対応策をシミュレーションしたことがある。しかし、この時も津波被害に関しては十分にシミュレーションできたとは言い難い。100%の防災というのは理論上あり得ないが、"減災"と早期復旧のためのシナリオ作りを急ぐ必要がある」と甲斐課長は言う。

ライフラインとして島を支える通信。全国どこでも同じサービスが受けられる通信のユニバーサルサービスを維持することは、通信事業者の責務であり、経済効率性だけで処理してはならないものである。多くの人たちの熱意と努力が日本の島々を守っている。

「人が住んでいて電話ができない島はない。」NTT西日本甲斐清治災害対策室担当課長

島の通信網には長年にわたる独自のノウハウが詰め込まれている。

海底ケーブルの敷設作業を行う「すばる」

取材:船木 春仁