腐食速度は環境の関数である
土壌腐食は"電食"ばかりでない
異種材料の組み合わせは避ける
鉄の錆は膨張する
ステンレス鋼も"錆びる"
亜鉛めっき物品の赤錆発生までの期間はめっき厚に比例
亜鉛めっきは大気中で強いが土壌・水中では弱い
腐食促進のメカニズム
腐食の防止法
腐食速度は環境の関数である
□何年もつかは環境による
○「この材料の寿命は何年か?」は一概には答えられない
○同じ海岸地帯でも腐食厳しいところは穏やかなところの
100倍以上の腐食速度となる(鉄の場合)
○土壌中でも腐食速度に大きな幅がある
□どの程度の信頼性を必要とするかで材料を選定
土壌腐食は"電食"ばかりでない
□土壌腐食で最も多いのはバクテリア腐食と通気差腐食
○バクテリア腐食の危険地域
・埋め立て地、湿地帯等
・イオウ臭(温泉臭)のする土壌
○通気差腐食の危険地域
・埋め戻し土壌、多層構造の土壌
(地層の境界付近が集中的に腐食)
異なる種類の材料を組み合わせての使用は避ける
□異種金属接触腐食により一方の金属の腐食が促進
○アルミニウムとステンレス鋼→アルミニウムが腐食
(ステンレスのねじ周囲のアルミサッシの腐食等)
○アルミニウムと鉄→アルミニウムが腐食
(鉄錆の発生した吊架金物に接触したアルミ被覆鋼より線の腐食等)
※同種金属でも類似腐食の発生有り
○環境の違い
・コンクリート中と土壌中での鋼材の電位差による腐食
:コンクリート/土壌界面腐食
・酸素供給量の差による電位差による腐食:通気差腐食(前掲)
○表面状態の違い
・錆ているものと新品での電位差による腐食
(錆びた管の一部だけを新管に更改した場合の新管の腐食等)
鉄の錆は膨張する
□鉄が錆びると体積が著しく膨張するため以下の問題が生じる
○塗膜損傷部で剥離促進
○鉄筋腐食によるコンクリートのひび割れ
[対策]
○鉄塔塗装等に錆が出始めたら速やかに補修
○予め錆の膨張が小さい亜鉛めっきを施す
・塗装下地に亜鉛めっき
・鉄筋に亜鉛めっき
ステンレス鋼も"錆びる"
□海岸地帯では赤錆発生(強度は問題無し)
○美観を主とするものへの適用は避ける
□海水中では孔食、すきま腐食
○海水が侵入しやすいマンホール留水中でも同様の注意が必要
(スタンダードクロージャのステンレスバンドの腐食等;すきま腐食)
□より高級な鋼種を選定
SUS430:昔主流であった鋼種(ラッシングワイヤに使用)
SUS304:もっとも一般的鋼種(18−8鋼)
SUS316、316L:最近多用されるようになった鋼種
価格的には1割程度のアップ
亜鉛めっき物品の赤錆発生までの期間はめっき厚に比例
□めっきの薄い電気めっきは直ぐ錆びる
□亜鉛めっき鋼より線は金物類に比べめっきが薄く腐食地帯で使用不可
□めっきが薄いねじ部が先に錆びる
| めっきの種類 |
めっき厚(μm) |
| 電気めっき |
2〜7 |
| 溶融亜鉛めっき |
鋼より線 |
20〜30 |
| 金物類 |
60〜80 |
| ねじ部 |
20〜30 |
亜鉛めっきは大気中で強いが土壌・水中では弱い
□大気中では赤錆がでたら危険信号
○亜鉛めっき鋼より線、装柱金物等は全面に
赤錆が発生したら更改が望ましい
□土壌・水中ではめっき消失後も寿命有り
○鋼管柱の地中部は一般土壌中でも7年程度で
全面赤錆となるが、その先寿命はある
| 金 属 |
腐食速度(μm/年)
|
| 通常大気中 |
通常土壌・水中 |
| 亜鉛 |
1以下 |
5〜10 |
| 鉄 |
10〜100 |
5〜50 |
腐食促進のメカニズム
金属材料の腐食が問題となるのは、環境条件や使用条件により通常の使用状態に比べて腐食が著しく促進される場合である。このような条件とその代表的事例を表1に示した。
金属の腐食が促進される典型的な条件は腐食性環境(金属の腐食を促進する物質が含まれる環境)中に曝されることである。塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等を含む土壌・留水中では腐食が激しい。硫酸塩還元バクテリアの繁殖する土壌中でこのバクテリアが発生する硫化水素により腐食が促進される事例も多い。大気中では、海岸地帯、温泉地帯( 硫黄泉) 、工業地帯が腐食性環境の代表である。
一方、特に腐食性の強い環境でなくとも電気化学的作用により腐食が促進される場合がある。金属材料の腐食は電流の流出に伴う電解作用により金属がイオンという形で環境中に出ていく現象である。最も代表的なのが直流電鉄軌道からの漏れ電流による電食である。金属体に流入した漏れ電流が再び地中に流出する地点で電解腐食を生じさせる。これと類似現象が、イオン化傾向の異なる金属が接触したり、同種金属でもイオン化傾向が異なる部分が存在する場合に生じる。このような場合にはイオン化傾向の大きい金属( 部分) から小さい金属( 部分) の間に定常的に電流が流れ続ける。この電流の電解作用によりイオン化傾向の大きい金属( 部分) の腐食が促進される。
この他、特殊なメカニズムにより激しい腐食が生じる場合がある。ステンレス鋼およびアルミニウムは表面の保護被膜により、ほとんどの使用環境中で腐食の問題は無い。しかし、局所的に保護被膜が破壊され、この部分だけが局部的に腐食する場合がある。代表的なものは直径1mm以下の深い穴があく「孔食」、及テープを巻いた下部や重ね合わせ部分などのすきま部分が局所
的に腐食する「すきま腐食」である。いずれも保護被膜が破壊されやすい塩化物イオンを含む溶液中で生る。応力と腐食の相乗作用により金属材料に亀裂が生じる、「応力腐食割れ」も重要である。これは腐食環境としては、通常問題とならないマイルドな環境で生じるので注意が必要である。
腐食防止法
上記のような腐食の防止策としては
表2
に示した各種方法の中から、用途に応じて最適な方法が採られる。
防食法を原理的に分類すると、
(A)金属を腐食環境から遮断、
(B)耐食性材料の適用、及び
(C)電気化学的防食法の3通りとなる。
(A)の腐食環境から遮断する方法は「塗装」に代表され、最も簡便な方法である。塗装は短期で劣化しやすく、定期的な塗り替えを必要とするため、強腐食性あるいは塗り替えの作業性が悪い環境に適用する設備・物品には厚い塗膜の「有機ライニング」の適用が望ましい。
(B)の耐食性材料はステンレス鋼に代表される「耐食性合金」と環境に接する表面だけを耐食性合金で被覆した「めっき」との2種類に分けられる。耐食性合金は材料費が高いことから、めっきが多用されている。特に屋外施設用では溶融亜鉛めっきが非常に多く使用されている。
(C)の電気化学的防食法は、金属に電流を流入させ腐食を防止する方法である。腐食は電流流出による電解反応であるから、電流を流入させると腐食は全く進まない。方法としては直流電源を用い電流を流入させる「電気防食」と、簡便な「流電陽極」を取りつける方法とがある。流電陽極としてはマグネシウム、亜鉛、あるいはアルミニウム合金が代表的で、これを構造物に取りつけるとこれらの合金から電流が流出し、構造物に流入するため腐食が防止される。この場合、流電陽極の方は、電流流出により激しく腐食する。このため、事前に十分な量を取りつけるか、定期的な交換を行う必要がある。
表1 腐食が促進される代表的な条件
| 環境条件・腐食要因 |
腐食の概要 |
代表的事例 |
| 腐食性環境 腐食性物質による腐食促進 |
土壌・留水中 |
腐食性イオン |
塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等が土壌・留水に侵入することによる腐食 |
- 海水が侵入したマンホール内での金物類の腐食
- 肥料に含まれる硝酸イオンによる鉛被の腐食
|
| バクテリア腐食 |
泥湿地や埋め立て地に繁殖する硫酸塩還元バクテリアが発生する硫化水素による腐食 |
- 支線ロッド、管路等土壌埋設物品がこの原因で腐食する事例が多い
|
| 大気中 |
海岸地帯 |
海塩粒子が物品表面の付着水に溶け込み腐食を促進;日本は海岸線が長いため、被害が大きい |
- 橋梁添架管路、引上げ管、装柱金物類、電話ボックス等等各種屋外設備の腐食
|
| 温泉地帯 |
硫黄温泉で発生する硫化水素が物品表面の付着水に溶け込み腐食を促進 |
| 工業地帯 |
工場排煙に含まれる亜硫酸ガス、窒素酸化物、ダスト中の可溶成分等が物品表面の付着水に溶け込み腐食を促進;環境規制強化により近年は影響小 |
| 電気化学的作用による腐食促進 |
電 食 |
直流電鉄近傍での迷走電流に腐食 |
|
| 異種金属接触腐 |
イオン化傾向の異なる金属を接触した場合に、イオン化傾向の大きい金属が著しく腐食 |
- 鉄とアルミニウムの部品を組み合わせた排水ポンプ
→アルミニウム部分が腐食
|
| 通気差腐食
|
通気性の悪い部分のイオン化傾向は、良い部分に比べて大きく、上記と同様この部分が著しく腐食 |
- 砂礫層と粘土層 にまたがって埋設された支線
ロッドの粘土層部の腐食
|
| コンクリート/ 土壌界面腐食
|
コンクリート中はアルカリ性で金属のイオン化傾向が小さく、相対的にイオン化傾向が大きい土壌・留水中部分がが著しく腐食 |
- マンホール内鉄筋と接触した筋金物の腐食
- コンクリート建物に引込まれたガス管の地中部腐食
|
| 特殊なメカニズムによる腐食促進 |
孔食、すきま腐食 |
ステンレス 鋼、アルミニウム等の不働態金属は塩素イオンを含む溶液中で、孔食を生じたり、すきま部分が局所的に腐食
|
- Al被覆鋼より線の接続端子函ノズル部腐食(すきま腐食)
- 海水中で使用するステンレス鋼製物品の孔食
|
| 応力腐食割れ |
金属が大きな引張応力のかかった状態で腐食と応力との相乗作用で割れを生じる現象;残留応力でも生じる
|
- CP柱の鉄筋の折損
- CP柱の鉄筋の折損での黄銅物品の割れ
|
表2 屋外施設の主な防食法と適用事例
| 防食法 |
適用事例等 |
| 環境からの遮断 金属が直接環境に触れないようにする |
塗 装 |
建物、鉄塔、橋梁などに広く適用(定期的な塗り替えが前提) |
| 有機ライニング |
- PVC プラスチゾル被覆: 外装鉄線、防食支線ロッド
- 粉体焼付被覆: 防食支線アンカ、引上げ管用判割管
- 熱収縮チューブ: 管類の防食に適用(塗り替え無しで使用)
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| 耐食性材料の使用 |
耐食性合金 |
- 各種ステンレス鋼製物品
(材料費が高いため、小物または板状物品に適用)
|
| めっき表面だけを耐食性合金で覆う |
- 溶融亜鉛めっき:各種屋外物品の代表的防食法(鋼管柱、装柱金物類、ケーブル受金物等)
・ Zn-Al 合金めっき:高耐食鋼より線
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| 電気化学的防食 金属に電流を流入させ腐食と逆の反応を起こさせる
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電気防食 直流電源により電流を供給 |
- 塗装、有機ライニング、高耐食性材料の適用だけでは防食が不十分な場合に適用 (地中埋設のガス管、水道管の防食法に広く適用)
- 設備建設後防食が不十分と判明した場合に適す (鉛被の電食防止)
- 海水中での防食に最適(港湾構造物、船舶のスクリュー等)
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| 流電陽極 マグネシウム、亜鉛,アルミニウム合金等 |
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