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呼吸器外科

当院の呼吸器外科について

北海道内には日本呼吸器外科学会の関連施設が全部で25病院あり、当院はそのうちの一つです。当院では今まで呼吸器外科関連の手術は外科で行ってきましたが、2015年4月より呼吸器外科が新設となりました。

方針

当科では「胸腔鏡を用いた低侵襲手術の追求」を基本方針としており、ほぼ全例に胸腔鏡手術を行っています。一方では進行肺癌に対する拡大手術や集学的治療としての手術にも積極的に取り組みます。医学の進歩にともない治療法は常に変わり得ますので、手術方法の決定にあたっては最新のエビデンスに基づくことを重要視します。その上で、患者様にとって負担の少ない方法をとると同時に、手術に際しては安全性を最も優先します。

他科・他院との診療連携

当科同様に内視鏡手術を最重要と考えている当院消化器外科チームと、手術を含めた診療全般において合同チームを形成しています。消化器外科と呼吸器外科は治療する臓器こそ違いますが、共通する手術技術が数多くあります。加えて現代では複数の病気を持つ患者様が多く、呼吸器系の手術を受ける際にも、異なった科同士で構成する合同チームで診療を行うことのできる当院の体制は、全身を網羅的に、迅速に、そして厳密に管理することができるという大きな利点があります。
肺と心臓は隣り合わせの臓器で、肺の病気を持つ患者様は同時に心臓にも病気が見つかる場合が少なからずあります。術式によっては当院心臓血管外科の強力なサポートを受けながらの合同手術も可能です。さらに北海道大学循環器呼吸器外科と常に緊密な連携をとる体制が整っており、種々の疾患に対する迅速かつ柔軟な対応を行います。これにより、大学病院でもなく呼吸器単科の病院でもなく、地域の総合病院ならではの唯一無二の治療を行うことが可能となっています。

施設認定

  • 日本外科学会認定施設
  • 日本呼吸器外科学会関連施設

呼吸器外科とは

呼吸器外科は、心臓・大血管と食道を除く胸部臓器の疾患に対する診断や外科治療を行う診療科です。対象疾患としては、肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、重症筋無力症、胸壁腫瘍、胸膜悪性中皮腫、自然気胸、膿胸、肺化膿症など、多岐にわたります。中でも、悪性疾患では肺癌が、良性疾患では自然気胸が多くを占めています。

対応症状・疾患

悪性疾患の代表:肺癌

Stage 肺癌術後5年生存率
I 85%
II 55%
III 35% 
IV 10% 

肺癌患者数は喫煙者の高齢化とともに増えている一方で、非喫煙者の肺癌も増加し続けています。

わが国の肺癌の死亡は、1998年に胃癌を抜いて臓器別癌死亡原因の第1位となり、今後ますます増加することが予想されています。

いままで肺癌は難治性の癌のひとつとされ、全体の5年生存率(治療開始から5年間生存している割合)は20%未満です。手術ができれば40%近くは5年間生存することが出来ますが、手術の対象になる症例は全体の40%に満たず、残りの60%以上は切除不能の進行癌で見つかることが多いです。一方、近年では診断器機や診療技術が発展し、早期肺癌が多く発見されるようになってきました。

肺癌も早期に発見し、適切な手術治療を受けることができれば、充分「治る」がんと言えます。

良性疾患の代表:気胸

気胸とは肺に穴があき空気が漏れて、空気が胸腔(胸の中)にたまっている状態をいいます。

空気が漏れても胸の外側は肋骨の硬い壁があるために、空気は胸より外へは漏れません。そのため胸の中で空気がたまり、その圧力に押されて肺がしぼんでしまいます。

気胸になってしまう原因は色々とあります。最も多いのが自然気胸というもので、10歳代後半から30歳代の、痩せ型の男性に多く発生します。肺の一部が脆くなり、「ブラ」と呼ばれる壁の薄い風船のように変化し、これが破裂し肺に穴が開きます。基本的には、肺のしぼみ具合によって気胸の治療が決まります。肺がほんの少ししかしぼんでいないのであれば入院の必要はなく、自宅で安静にして自然に穴がふさがるのを待ちます。肺のしぼみ方が中等度以上の場合は、胸の中に管(胸腔ドレーンといいます)を入れて、肺から漏れた空気を体の外に追い出します。状況によっては手術を受けるべきと判断されます。

どういう状況かと言いますと、

  • 過去に気胸になり改善したけど今回再発した場合
  • 胸腔ドレーンを入れて数日経っても気胸の改善がない場合
  • 左右両側が同時に気胸になってしまった場合

などです。

どの治療を選ぶべきかを決定するために重要な点がもう一つあります。それは治療後の再発率です。

実は、手術を受けなくても気胸が「一旦は」治るケースが40-50%あるとされています。ただし問題は再発する確率です。保存的治療(安静臥床や胸腔ドレナージ挿入)で一旦治ったとしても、再発率は30-50%と報告されています。一方、手術で治した場合の再発率は、3-10%です。これらの数字をどう考えるかは個人により異なるかもしれません。

当科では以上の数字に加えて患者様それぞれの背景を柔軟に勘案し、治療の選択肢の提示と予想される治療後経過を説明いたします。そして患者様のご希望を最大限伺った上で、最善の治療選択を行います。 

呼吸器外科の手術方法

呼吸器外科手術は、胸の中の内臓に対して行われます。内臓を見るためには皮膚に傷をつけ、筋肉をかき分け、胸の中に到達する必要があります。到達するためには2種類の方法があります。すなわち胸腔鏡手術、開胸手術です。まず当科で最も力を入れている、胸腔鏡手術についてご説明いたします。

胸腔鏡手術とは

胸腔鏡手術は内視鏡外科手術のひとつです。内視鏡外科手術とは、体の表面に作った小さな傷から、細長い望遠鏡のようなものを体内に挿入して、体内の様子をテレビに写して観察し、細長い道具を同じように体内に挿入して病気の部分を切除したり縫合したりする手術のことです。

ところで腹腔鏡という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。腹腔鏡も内視鏡外科手術のひとつです。お腹の内臓に対して行う場合は「腹腔鏡」、胸の内臓に対して行う場合は「胸腔鏡」ということになります。

なお混乱しやすいのですが、内視鏡(下)手術というと、胃カメラや大腸カメラ、気管支鏡などのファイバースコープを消化管や気管支に挿入して行う治療のことです。

内視鏡(下)手術と胸腔鏡手術は全く異なる治療です。内視鏡(下)手術には全身麻酔は必要ありませんが、胸腔鏡手術には原則として全身麻酔が必要です。

胸腔鏡手術と開胸手術の違い

胸の中に到達するもう一つの方法は、開胸術です。これは皮膚を大きく(一般的には20cm以上)切って、肋骨や胸骨などの骨を切り、筋肉を切り、道具を用いて胸を開け、直接外科医の手で内臓を触りながら行う手術です。傷が大きいより小さい方が体の負担が少ないのではないか、と直感的に予想されるかと思います。

そこで、胸腔鏡手術の長所と短所を整理してみますと、

胸腔鏡手術の長所

  • 体にできる傷が小さい
  • 手術後の痛みが軽い
  • 呼吸機能低下が少ない
  • 体力の回復が早い

など、多くのメリットがあります。

胸腔鏡手術の短所

  • 外科医の触覚(肺や癌を触った感じ)を頼りにすることができない
  • 癒着例での視野確保がしづらかったり、操作性が悪い
  • 出血時の対応が困難
  • 周囲の臓器の合併切除や血管形成など複雑な手術は困難
  • 外科医に高度な技術が要求されるが、習得が難しい

などが挙げられます。

当科ではほぼ全例に胸腔鏡手術を行いますが、一方では上記のような胸腔鏡手術の短所も軽視できない問題です。

患者様の安全と、病気の根治性を最優先すべく、胸腔鏡手術から開胸手術へと手術中に移行すべきと判断されれば、躊躇無く迅速に開胸手術へ移行します。ただし実際に開胸手術を要すると術中に判断されて移行する症例は10%以下のみとなっています。

当科での胸腔鏡手術の実際

まず体の表面に傷をつくらなくてはなりません。できる傷はどの内臓をどのくらい切除するかによって決定されます。

  • 気胸手術、肺部分切除など(下図左上):側胸部に2つの傷(3cm、1cm)
  • 肺区域切除、肺葉切除、肺全摘など(下図右上):側胸部に3つの傷(4cm、2cm、1cm)
  • 癒着例、血管再建、他臓器合併切除など(下図左下):背部〜側胸部〜前胸部にかけて20cm以上の傷
  • 良性縦隔腫瘍:側胸部に3つの傷(2cm、1cm、1cm)
  • 悪性縦隔腫瘍や大きな良性縦隔腫瘍(下図右下):前胸部の真ん中に縦に15〜20cmの傷

麻酔は全身麻酔です。さらに多くの場合ではきわめて高い鎮痛効果をもつ硬膜外麻酔カテーテルの留置も行います。これは背骨のそばから針を刺して細いチューブ(これをカテーテルといいます)を脊髄を包んでいる硬膜の外側に留置します。カテーテルを通じて持続的に麻酔薬を注入することにより、痛みに対して高い効果を発揮します。

手術時間は肺部分切除で30分〜1時間、区域切除や葉切除で3-4時間です。癒着があればさらに1-2時間加わります。

傷の一つからビニル製のカテーテルが胸の中に入った状態で手術室から病室に戻ります。このカテーテルは胸の中で出血や空気漏れなどのトラブルが生じていないかどうか、判断するために留置されています。トラブルが生じていなければ手術後1〜2日でこのカテーテルは抜き去ります。

手術の翌日から食事や歩行など、手術前とほぼ同様の行動を行うことができます。多くの患者さんは手術後4〜10日程度で退院されます。

肺癌手術:肺の切除範囲は?

肺癌に対する最も根治的な治療は手術とされています。手術を行うとすれば、どれくらいの範囲の肺を切除しなくてはいけないのか?が問題となります。術式と肺切除範囲の関係は以下の通りです。

どの術式がよいのかは時代とともに変遷してきました。

1950年代には左右片方の肺全てを切除する方法(肺摘除)が標準的治療とされましたが、1970年代になって右肺の1/3か、左肺の1/2を切除する方法(肺葉切除)が標準術式とされ、現在も基本的には同様です。

実際には、患者様自身の体力(これを生理的因子と呼びます)と、癌がどれだけ性質の悪いものか(これを腫瘍学的因子と呼びます)の両方を勘案して、最終的に肺切除範囲を決定することになります。

気胸手術:どのような手術を行って治すのか?

3cm前後と1cmの、計2箇所の傷が胸の横にできます。気胸の原因病巣であるブラの部分を含む肺部分切除を行います。

ブラ以外の部分の肺も脆弱化している症例の場合、その脆弱化した肺の表面を補強剤および組織接着剤で覆います。

外来担当医表

 
午前   道免 寛充      
午後          

スタッフ紹介

氏名 山田 秀久(やまだ ひでひさ) 山田 秀久
役職 部長
資格 医学博士
日本外科学会 指導医、専門医
日本消化器外科学会 指導医、専門医
日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会 技術認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本医師会認定産業医
麻酔科標榜医
氏名 道免 寛充(どうめん ひろみつ)
役職 医長
資格 医学博士
日本外科学会 専門医
日本呼吸器外科学会 専門医
日本呼吸器学会 専門医
日本消化器外科学会 専門医
日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医