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麻酔科・手術センター

診療・業務内容

当院における麻酔科の業務は臨床麻酔、ペインクリニックに高い比重がありますが、麻酔科医は常に救急に対応できるようトレーニングされており、患者の急変時には積極的に蘇生に関わっています。また、職員ための救急蘇生の研修にも力を入れています。

臨床麻酔

麻酔科依頼の手術件数は、2009年2257件、2010年2378件、2011年2515件と右肩上がりに増加しましたが、2012年は2477件と若干低下しました。2011年は臨時手術受け入れを中止していただく時期がありましたが、関係各部署にご協力いただいた結果、2012年は手術制限することなく円滑な運営ができました。
手術室が6部屋に対し手術室担当麻酔科医は日によって4名か5名ですから、どうしても数が足りない時が生じます。当科では他病院で見られるような並列麻酔は行いませんが、この状況を乗り切る切り札として活躍してくれるのが研修医の諸君です。研修医の皆さんには、医師として必要なマスク換気・気管挿管手技と脊髄くも膜下穿刺の技術取得を第一目標に掲げて、麻酔維持の中で循環、呼吸、輸液などの全身管理の習得を目指してもらっています。一ヶ月も過ぎた研修期間後半には貴重な戦力となり、手術室の安全運営に欠かせない存在になっています。更に2年目に麻酔科を選択した研修医には、各自の目指す専攻科に合わせて上記技術のレベルを上げながら硬膜外穿刺、エコー下ブロックなど一段進んだ技能習得を目指してもらいます。

手術室の安全管理運営は重要な項目です。当科では安全な麻酔管理を行うために必要なシステムの一つとして、前日夕方に手術室スタッフを交えて翌日の全症例検討を行い、各症例の情報を共有できるようにしています。こうすることで麻酔困難症例を見逃すことなく全員でそれを認識し、チームとして対応できるように取り組んでいます。

ペインクリニック

全国的にペインクリニックを活発に展開している医療機関は限られていますが、当院ペインクリニックは患者数、治療内容の点で道内でも有数の施設とされています。これまで麻酔科のマンパワー不足により若手医師のペインクリニックの研修が容易に進まない状況でしたが、2012年度よりマンパワーに若干の余裕が生じ、この領域での研修もある程度可能となりました。

椎間板ヘルニアなどでは神経ブロックを中心とする治療により手術を回避できる場合が多く、また、腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症などの痛みについても神経ブロックによりコントロールが可能となる症例がしばしばみられます。その他三叉神経痛、帯状疱疹痛、複合性局所疼痛症候群、がんによる痛みも治療対象となっています。特にがんによる腹痛には内臓神経ブロック等が著効を奏する場合が多く、これにより自宅で過ごす期間を延長させることができると考えています。

神経ブロックにはレントゲン透視を必要とするものがあるほか、安全性、確実性を高めるためにレントゲン透視下、超音波ガイド下で施行する場合があります。下にX線透視下神経ブロック件数を示しますが、当院でこれほど多くのX線透視下神経ブロックを可能にしている要因として性能のよい透視装置とそれ以上に神経ブロックをよく理解している放射線技師、看護師のスタッフが挙げられます。当院は患者さんに安心して神経ブロックを受けていただける環境にあると考えています。神経ブロックが適応とならない患者さんには薬物療法を中心とする治療を行います。患者さんになるべく苦痛を与えずに安全で効果的な医療を提供することを当科の信条としています。

当院ペインクリニックにおいて特色ある治療は胸腔鏡下交感神経遮断術、脊髄刺激療法です。胸腔鏡下交感神経遮断術の最もよい適応は手掌多汗症ですが、頭部・顔面、腋窩多汗症、赤面症、手の末梢循環不全に対しても行っています。脊髄刺激療法は脊椎手術後に残存する痛み、四肢の末梢血管障害、複合性局所疼痛症候群などの難治性の痛みに対して施行しており、最近は機器の進歩もあり良好な成績を収めています。これらは北海道で施行可能な施設が極めて少ないため全道から患者さんが受診されます。特に前者は現在当院と他1-2施設で行われているのみです。

日々の外来を通じてペインクリニックの需要がいかに大きいかを実感しつつ、今後も一人ひとりの患者さんに質の高い医療を提供すべく努力したいと考えています。

最近5年間のペインクリニックの動向

  2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
新患数(名) 723 681 652 512 669
延患者数(名) 9,123 7,860 7,731 10,189 7,238
入院患者数(名) 150 116 133 117 124
透視下
ブロック件数(件)
1,193 1,215 1,066 1,159 1,109
多汗症手術件数(件) 35 23 19 18 24

2012年のX線透視下神経ブロック件数(件)

頭部 ガッセル神経節ブロック 3 腰部 one shot硬膜外ブロック 112
頚部 one shot硬膜外ブロック 75 神経根ブロック 75
神経根ブロック 16 神経根ブロック(サーモ) 6
神経根ブロック(サーモ) 2 椎間関節ブロック 28
椎間関節ブロック 24 椎間関節ブロック(サーモ) 10
椎間関節ブロック(サーモ) 2 仙腸関節ブロック 6
椎間板造影 2 腰部交感神経節ブロック 37
腕神経叢ブロック 144 椎間板造影・加圧 45
胸部 one shot硬膜外ブロック 412 経皮的髄核摘出術 4
神経根ブロック 2 大腰筋筋溝ブロック 2
神経根ブロック(サーモ) 20 硬膜外ブラッドパッチ 2
肋間神経ブロック 1 仙骨部 経仙骨孔ブロック 33
肋間神経ブロック(サーモ) 2 経仙骨孔ブロック(サーモ) 6
胸部交感神経節ブロック 1 仙腸関節ブロック 6
胸部交感神経節ブロック(サーモ) 2 硬膜外洗浄 27
腹部 内臓神経ブロック(アルコール) 1 その他 脊髄刺激電極挿入(puncture trial) 12
下腸間膜神経叢ブロック
(アルコール)
1 硬膜外カテ挿入(術前) 357
上下腹神経叢ブロック
(アルコール)
2 その他 2
不対神経節ブロック 1 合計 1159
不対神経節ブロック(アルコール) 3

※サーモ:高周波熱凝固による

研究活動

臨床研究

  1. 臨床治験
    1. 責任医師 御村光子
    2. 分担医師 山澤 弦、橘 信子、浦濱 聡、高橋三佳、宮本奈穂子
      KNK6188第U相臨床試験―帯状疱疹後神経痛に対するプラセボを対照とした二重盲検比較試験―.
  2. 原著
    1. Tachibana N, Yamauchi M, Sugino S, Yamakage M: Utility of longitudinal
      paramedian view of ultrasound imaging for middle thoracic epidural
      anesthesia in children. Journal of anesthesia 2012; 26(2): 242-5.
    2. 御村光子、本間英司、枝長充隆、宮本奈穂子:脊髄刺激療法施行症例における新たな脊髄刺激トライアル.日本ペインクリニック学会誌 2012;19(4):503-7.
  3. その他
    1. 御村光子:麻酔科・ペインクリニック. NTT東日本札幌病院だより「愛もーど」 2012;7:2.
    2. 橘信子,杉野繁一,周静,澤田敦史,早瀬 知,高橋和伸,高田幸昌,丸山大介,岩崎創史,佐々木英昭,平川由佳,立花俊佑,大須田倫子,玉城啓史,新山幸俊,渡辺昭彦,山内正憲,山蔭道明:誌上抄読会 デスフルラン.臨床麻酔2012; 36(4): 637-43
  4. 学会発表
    1. 国際学会
      【The annual meeting of the American Society of Anesthesiologists.】Washington DC, USA. Oct. 16-20, 2012
      1. Tachibana N, Niiyama Y, Yamakage M: Incidence of cannot intubate-cannot ventilate (CICV) situations: results of a 2-year retrospective multicenter clinical study in Japan. Anesthesiology: A308, 2012
      2. Tachibana N, Niiyama Y, Yamakage M: Reduction in intensity of postoperative sore throat by the use of a fiberoptic laryngoscope. Anesthesiology: A1035, 2012
    2. 全国学会
      【日本ペインクリニック学会第46回大会(松江)】 2012.07.5 -7
      1. 御村光子、本間英司、宮本奈穂子、硲 光司、浅井建基、宮下 龍、浦濱 聡、田辺美幸、中山雅康、福原世世:脊髄刺激療法施行症例の就労状況の検討.
      2. 橘 信子,山内正憲,渡辺昭彦,高橋三佳,山澤 弦,御村光子,山蔭道明:カルバマゼピン血中濃度測定に基づく抗てんかん薬のローテーション.
      【第17回日本緩和医療学会学術大会(神戸)】 2012.06.22-23.
      1. 御村光子、浅井建基、宮下 龍、浦濱 聡、田辺美幸、宮本奈穂子、中山雅康:旧肛門部痛、膀胱刺激症状が神経ブロックにより軽減し、退院可能となった直腸がんの1症例.
      【第19回日本静脈麻酔科学会(札幌)】 2012.09.29
      1. 宮本奈穂子,橘 信子,高橋 三佳,浦浜 聡,佐藤 道子,山澤 弦,御村 光子 :プロポフォール・レミフェンタニルによるTIVAにおいて、トラマドールのtransitional analgesia としての有用性と術後鎮痛効果の検討.
      2. 橘 信子,新山幸俊,御村光子,山蔭道明:Pelorus 1000TMにて測定した全静脈麻酔中のプロポフォール実測血中濃度と予測血中濃度の解離.
      【日本蘇生学会第31回大会(大津)】 2012.11.23-24.
      1. 橘 信子,新山幸俊,山蔭道明:CICV(cannot intubate, cannot ventilate)の発生頻度における多施設アンケート調査.
    3. 研究会・地方会
      【第18回日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会(高槻)】  2012.09.07
      1. 御村光子、本間英司、山澤 弦、橘 信子、浦濱 聡、高橋三佳、佐藤通子、宮本奈穂子:頭部・顔面多汗症、赤面症に対する胸腔鏡下交感神経遮断術における当科の試み.
      【日本麻酔科学会 北海道・東北支部第2回学術集会(札幌)】 2011.09.01
      1. 佐藤通子、御村光子、高橋三佳、浦濱聡、橘 信子、山澤 弦:稀な原因による手術後末梢神経障害の2症例.
      2. 浦濱 聡,御村光子,山澤 弦,橘 信子、佐藤通子、国谷恭子:麻酔導入後に手術中止が決定された3症例の検討.
      【第28回北海道ペインクリニック学会(札幌)】 2012.10.27
      1. 御村光子、本間英司、硲 光司、宮本奈穂子、橘 信子、硲 光司、福原世世:脊髄刺激療法・開始後に残存する腰痛に対し、皮下刺激を施行したFailed back surgery syndromeの2症例.
      2. 橘 信子,御村光子,佐藤通子,浦浜 聡,高橋三佳,宮本奈穂子,山澤 弦,山内正憲,山蔭道明:嚥下障害に対して星状神経節ブロック治療が著効した副咽頭間隙神経鞘腫手術後の1症例.
      3. 高橋三佳、御村光子、佐藤通子、浦濱聡、橘信子、山澤弦:当科において硬膜外ブラッド・パッチを施行した硬膜穿刺後頭痛7症例の検討.
      【第12回北海道機能神経外科研究会(札幌)】 2012.11.10
      1. 橘 信子,御村光子,佐藤通子,浦浜 聡,高橋三佳,宮本奈穂子,山澤 弦,山内正憲,山蔭道明:嚥下障害に対して星状神経節ブロック治療が著効した副咽頭間隙神経鞘腫手術後の1症例.
      2. 高橋三佳、御村光子、佐藤通子、浦濱聡、橘信子、山澤弦:麻酔に伴う硬膜穿刺後頭痛に対する硬膜外自己血パッチ;当科における方法と施行状況.
      【第9回麻酔科学サマーセミナー(恩納)】2012.06.30
      1. 山澤 弦 御村光子 宮本奈穂子 佐藤通子 高橋三佳 浦濱 聡 橘 信子: 間欠的下肢圧迫装置が原因と考えられた術後腓骨神経麻痺の一症例.
      2. 渡邉麻子、宮下 龍、御村光子、佐藤通子、高橋三佳、浦濱 聡、橘 信子、山澤 弦:複数科の連携により円滑な周術期気道管理が行われた小児気管支異物の2症例.
      【エピデューサー・リードデリバリシステム症例検討会(東京)】 2012.04.21
      1. 御村光子:当科の適応症例.
    4. 講演等
      1. 御村光子:ペインクリニック:診療の実際.大塚製薬社内講演会(札幌)2012.07.26

教育活動

  1. 授業等
    1. 院内
      1. 御村光子:手掌多汗症と胸腔鏡下交感神経遮断術(病棟・外来看護師対象勉強会) 2012.10.16
      2. 山澤 弦:エコー下末梢神経ブロック(下肢)とTAP(手術室看護師対象勉強会) 2012.09.10
      3. 山澤 弦:エコー下末梢神経ブロック(上肢 下肢)( 麻酔科産婦人科外来看護師対象勉強会)2012.11.16
      4. 山澤 弦:エコー下末梢神経ブロック(上肢 下肢)(整形外科病棟看護師対象勉強会) 2012.11.20
  2. 実習指導
    1. 院内
      1. 御村光子:札幌医科大学第6学年臨床実習 2012.4〜7の火曜日午前
      2. 山澤 弦、橘 信子、浦濱 聡、高橋三佳、宮本奈穂子:札幌医科大学第6学年臨床実習 2012.4〜7の火曜日午後
      3. 御村光子:院内ICLS研修会インストラクター 2012.1〜12の期間の計14回
      4. 高橋三佳:院内ICLS研修会インストラクター 2011.08〜12の期間の計5回
    2. 院外
      1. 御村 光子:緩和ケア研修会(札幌)講師 2012.10.13.

学会・社会活動

  1. 審議会・委員会等
    1. 御村光子:日本麻酔科学会
      代議員 平成20年度〜
      北海道・東北支部 教育委員 平成20年度〜
    2. 御村光子:北海道ペインクリニック学会 監事
    3. 御村光子:北海道医師会医事紛争処理委員会 特別委員 平成17年度〜
    4. 御村光子:日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会 幹事 H21年度〜
    5. 御村光子:北海道機能神経外科研究会 世話人 H20年度〜
    6. 御村光子:札幌麻酔科カンファレンス 幹事 H17年度〜
    7. 御村光子:「北海道痛みを考える会」評議員 平成22年度〜
  2. 社会人学習等への貢献
    1. 御村光子:第236回札幌市医師会家庭医学講座「頑固な腰下肢痛の治療」神経ブロックと新しい治療 ―ペインクリニックの現場からー
  3. 座長,司会,モデレータなど
    1. 御村光子:第13回北海道機能神経外科研究会 会長 2012.11.10
    2. 御村光子:第13回北海道機能神経外科研究会 特別講演「外傷性頸部症候群に関する最近の知見」座長 2012.11.10
    3. 御村光子:日本臨床麻酔学会第32回大会 一般演題「ペインクリニック・緩和医療」座長 2012.11.3