札幌病院


札幌病院ホーム > NTT東日本札幌病院について > 年報(2012年) > 心臓血管外科


心臓血管外科

業務内容

2012年の心臓血管外科は副院長 松浦(58期)、部長 瀧上(65期)、医長 松崎(68期)の3人体制で診療を行いました。本年も12月に研修2年目の山田 徹 先生が2か月間の長期で当科に研修に来てくれて、若さと多大な戦力を我々に供給してくれて、いろいろな意味で活躍してくれました。手術の総数は増加。心・大血管手術は例年の症例数を何とかキープし、静脈瘤の手術がレーザー治療症例も増え、外来手術も順調に行われた結果大幅に増加でした。手術以外の活動として2月には、神戸大学医学部名誉教授の岡田昌義先生に司会をお願いし、健脚を守る会を開催し、180名の一般の人々に参加していただき盛会をおさめました。当科だけではなく循環器科 川嶋先生、糖尿病内科 横田先生に講師をお願いし、脚の病気についての各分野からの講演をいただきました。その後の診療に反映したかどうかは不明ですが地道な働きかけで地域に根付いた医療も視野に進めていきたいと考えています。今後も機会があれば、他の企画も含め、開催していこうと考えています。以下に本年度の症例のまとめを記します。

2012年の手術症例の概要(表1)

表1 手術症例数(2012.1.1〜2012.12.31)
心疾患 人工心肺使用症例 47 末梢動脈疾患(腹部大動脈以下) 91
OPCAB 6 静脈疾患 127
TEVAR 7 内シャント関連 4
(人工心肺使用症例+OPCAB症例+TEVAR) (60) ペースメーカー交換・移動 2
その他 19
手術総数 303

2012年1月1日から12月31日までの手術総数は303例で、昨年より増加しました。心臓・胸部大血管手術総数は60例で、人工心肺使用症例+OPCABは53例で例年と同じでした。病院死亡は大動脈置換術と冠動脈バイパス術を施行した1例で、手術後は順調に経過されましたが、退院直前に病棟で転倒し頭を床に強く打ち付け頭蓋骨骨折および脳内出血をきたし、いったん脳神経外科転院して治療を受けたのち当科へ再転院。意識障害はなかったが、その後、肺炎から全身状態が悪化し全身の循環不全から腸管の虚血壊死をきたし、肝不全、敗血症となり失いました。医療安全が唱えられる中での、退院間近のaccidentにより残念な結果となってしまいました。腹部大動脈以下の末梢動脈疾患は91例、下肢静脈瘤などの静脈疾患は127例となっています。末梢動脈および下肢静脈瘤手術の増加がそのまま手術数の増加に反映していました。

虚血性心疾患(表2)

表2 虚血性心疾患(14例、死亡 0)
単独冠動脈バイパス術 11 心筋梗塞後合併症 3
Conventional CABG 2
3枝 1、1枝 1
CABG x 3 + MAP 1
Off pump CABG 6
5枝 1、4枝 2、3枝 2、2枝 1
VSP closure 1
On pump beating CABG 3
4枝 1、3枝 2
VSP closure + MAP + TAP 1
(residualで再手術)

虚血性心疾患は人工心肺を使用した単独冠動脈バイパス(CABG)が5例、オフポンプCABGは6例で、虚血性心筋症(ICM), 僧房弁閉鎖不全症の1例はCABG3枝+僧房弁輪形成術を施行しました。AMI後の心室中隔穿孔の症例に対する緊急手術を経験し、遺残短絡による心不全で、初回手術後約1か月で再手術を行いましたが経過良好でした。

弁膜症、先天性疾患、その他の心疾患(表3)

表3 弁疾患、先天性心疾患、その他の開心術(26例、死亡 1例)
MVP 2 AVR + TAP + PV isolation 1
MVR (redo) 1 AVR + MAP + TAP 1
MVP+CABG×2 1 AVR + MAP + TAP + CABG×3 1
MVP + TAP + PV isolation 1 AVR + MVR + TAP + MAZE 1
AVR(primary isolated) 5 ASD ( + CABG x 1 +TAP, + TAP(redo) ) 2
AVR + CABG 4(1) PS (p/oVSD, PA bandind) 1
AVR + PV isolation 1 Myectomy + MVR (HOCM) 1
AVR + MAP 1 Pacemaker lead removal 1 1
AVR + MAP + CABG×2 1    

(カッコ内は、病院死亡)

僧房弁、大動脈弁の単独症例はそれぞれ3例、5例で少なく、大半は複合弁膜症あるいは虚血性心疾患や、不整脈に対する手術の合併手術症例でした。手術の内訳は表3の如く、AVR+CABGの1例が前述のように病院死亡でした。成人先天性疾患はASD2例、肺動脈狭窄1例で、ASDの2例はCABG+TAPを同時に行った症例と、他病院で幼少期に手術を行い、今回遺残短絡で再手術を行った症例でした。肺動脈狭窄の1例は、VSD術後で、1回目の手術の際の肺動脈絞扼部の狭窄を修復する症例でした。その他、肥大型心筋症で左室流出路の圧較差が140mmHgでSevere MR、Severe PH、SAMの症例に、左室中隔心筋切除および僧房弁置換術を施行し、術後肺水腫となり心肺補助を行うなど管理に難渋したが、最終的には自宅退院でき、良好な結果であった1例と、ペースメーカーリード感染により人工心肺使用下にリード抜去した症例がありました。

胸部大血管疾患(表4)

表4 胸部大動脈疾患 (20例 死亡 0)
解離性 (5例)
急性A型解離 3例 上行置換 1
上行置換+Hemiarch 2
慢性A型解離 2例 弓部置換+ET 2(redo 1)
非解離性 (15例)
基部 1例 Bantall + CABG×1 1
上行 3例 上行置換 1
上行置換+AVR 1
上行置換+TAP 1
弓部 4例 弓部置換 + ET 2
弓部置換 + Open stent 2
下行 7例 TEVAR 5
Debranched TEVAR 2

胸部大血管疾患は合計20例で、死亡は無でした。解離性大動脈瘤は5例で、A型急性大動脈解離で緊急手術を要した症例は3例でした。術前から脳虚血を認めた2例は術後も覚醒遅延などを認めましたが、最終的には意識を回復し、リハビリ・療養のため他院へ転院となっています。慢性A型大動脈解離の2例は弓部全置換術を行いましたが、1例は急性期の初回手術で上行大動脈置換術を行い、遺残解離腔の拡大により再手術を要した症例でした。非解離性大動脈瘤は15例で、術式は表4のとおりでした。2012年は胸部大動脈ステントグラフト(TEVAR)が7例で比較的少なかった。

末梢血管(動脈)疾患(表5)

表5 末梢血管(動脈)疾患(91例)
AAA及び腸骨動脈瘤 39
EVAR 17 人工血管置換術 22
EVAR後付加手技 4
(Leg追加 3、腰動脈結紮 1)
TEVAR後付加手技 1
(LITA枝閉塞)
末梢動脈バイパス、形成 22
膝上 CIA−F bypass 1 膝下 F-T bypass 4
F-F bypass 1 P-T bypass 1
FA endoarterectomy + α 4 ハイブリッド治療 FA endoarterectomy + Iliac stent + α 4
FA plasty 1 FA plasty + Iliac stent 2
足関節以下 P(BK)-Plantal (GSV) 1 P-DPA 2
PPI 13
Iliac 8 Distal PTA 5
その他の動脈疾患 12
血栓摘除 7 血栓摘除+Iliac stent 1
上肢動脈仮性動脈瘤 1 下肢仮性動脈瘤 1
幹細胞移植 1 CIA-SMA bypass 1

腹部大動脈以下の末梢動脈や上肢動脈疾患は91例でした。腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤は39例でうち腹部大動脈瘤ステントグラフト(EVAR)は17例に施行しています。当科では、80歳以上の高齢者でも、特に手術を行うのにriskが高くなければ、開腹、人工血管置換術を適応があれば行ってきました。EVARも積極的に行っていますが、例年半分半分ぐらいの割合となっています。
鼠蹊部以下の末梢動脈症例は22例で、そのうち8例が膝下の血管へのbypassを要する症例でした。血管形成とstent留置を同時に施行したいわゆるハイブリッド治療も6例に行い、Stent留置やバルーン血管形成などの血管内治療も13例に行いました。
動脈硬化の程度のひどい症例も年々多くなり、複数回の処置を要する症例や、bypass後に虚血性潰瘍に対してVAC(吸引補助療法)を施行する例も認められました。例年に比較して、腹部大動脈瘤や末梢動脈に対する手術は増加傾向でした。

その他の血管疾患(表6)およびその他の手術(表7)

表6 その他の血管疾患(131例)
静脈疾患 127
下肢静脈瘤 118 IVC Filter + CDT 2
(静脈抜去+瘤切除 47、EVLA 68, 内視鏡下穿通枝結紮 + 瘤切除など 2、内視鏡下穿通枝結紮+EVLA 1)
Iliac vein stent 2 CDT 1
IVC Filter 1 Iliac vein palsty (balloon) 1
IVC Filter 抜去 1 上肢静脈瘤 1
内シャント関連 4
表7 ペースメーカー関連およびその他の手術(21例)
PPM 電池移動、抜去 2 縦隔炎(再閉鎖、VAC交換を含む) 4
PPM 電池交換 1 胸骨再閉鎖 1
創再縫合 2 足趾切断 4
創感染(VACを含む) 3 気管切開 3
術後出血再開胸 1    

今年は下肢静脈瘤に対する手術が118例と多く、そのうち68例にレーザー治療を行いました。数は少ないが内視鏡下の穿通枝離断も3例に施行しました。札幌市内でも他施設でレーザー治療が行われるようになってきたため、今後どのようになるかは不明ですが、日帰り外来手術や、局所麻酔による静脈瘤手術などを積極的におこなうことにより患者さんの要求にも応えるようにしています。

今後、ICUが新しい場所に移設され、院内の病棟再編などで、循環器内科との合併が実現すればいよいよ心血管センターが発足し、診療も今まで以上に内科の先生方とスムーズに連携をとって進めることができると期待しています。患者さんや、内科の先生方、ましては院内の他科の先生方のニーズに応えられるように日々の診療を行い、また最先端の技術や治療を積極的に取り入れて世界水準の心臓血管外科手術を行っていきたいと考えています。

心臓血管外科 2012年業績

総説

  1. 松崎賢司:部位別の治療法と考え方:ステントグラフト-胸部 Coronary Intervention 8:No3:69-72、2012

全国学会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:EndoTAを用いた動脈閉鎖術 第40回日本血管外科学会、2012/5長野
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:静脈に穿破したMRSA感染性腸骨動脈瘤破裂の1例  第32回日本静脈学会、2012/6大宮
  3. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:整形外科手術後下腿深部静脈血栓症の自然経過 第32回日本静脈学会、2012/6大宮
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:腹部ステントグラフト留置後遠隔期のエンドリークにより2度の準緊急手術を要した1例 第18回日本血管内治療学会 2012/7 東京
  5. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:腹部ステントグラフト留置術後エンドリークによる瘤拡大で開腹・腰動脈結紮を施行した1 例 第53回日本脈管学会、2012/10、東京
  6. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:内視鏡下筋膜下穿通枝切離症例の検討 第25回日本内視鏡外科学会、2012/12、横浜
  7. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司、神 幸二:健常人のEOAI値から見た大動脈弁置換術における人工弁Size選択の妥当性、第42回日本心臓血管外科学会総会、2012/4 秋田

地方会

  1. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:EndoTAを用いた動脈閉鎖術 第96回 北海道外科学会、2012/3札幌
  2. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:腹部ステントグラフト留置術後エンドリークによる瘤拡大で開腹・腰動脈結紮を施行した1 例  第97回 北海道外科学会 2012/9 札幌
  3. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の初期成績 第33回日本血管外科学会北海道地方会 2012/10 札幌
  4. 松崎賢司、瀧上剛、松浦弘司:下肢深部静脈血栓症に対するカテーテル血栓溶解療法 第33回日本血管外科学会北海道地方会 2012/10 札幌
  5. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司:高度脳血流障害を有する遠位弓部大動脈瘤にDebranched TEVARを施行した1例 第39回日本胸部外科学会北海道地方会 2012/9 札幌
  6. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司:大動脈弁および上行・弓部大動脈に疣贅様の瀰漫性腫瘤形成をきたした悪性リンパ腫の1例 第97回 北海道外科学会 2012/9 札幌
  7. 松浦弘司、瀧上 剛、松崎賢司:CPB離脱時にECMO導入を要したHOCMの手術例 第39回日本胸部外科学会北海道地方会 2012/9 札幌

講演その他

  1. 松崎賢司:静脈血栓塞栓症を理解するために 日本運動器看護学会第5回北海道地区セミナー 2012/10 札幌
  2. 瀧上 剛:心臓・大血管手術 −標準的な手術のあれこれ− 北海道診療情報管理研究会 2012/11 札幌(中村記念病院講堂)
  3. 瀧上 剛、松崎賢司、松浦弘司:当科における胸部大動脈瘤の手術 北大循環器外科心臓疾患研究会 2012/6 札幌
  4. 瀧上 剛:施設紹介 北大第2外科・循環器外科同門会総会 2012/12 札幌
  5. 松浦弘司、瀧上 剛、松崎賢司:著明な僧房弁輪石灰化を伴った症例に対するMVRの経験第15回 北海道心臓外科フォーラム 2012/6 札幌

座長、司会など

  1. 松浦 弘司:講演司会 【循環器・呼吸器外科 先天性グループ近況報告】 北海道大学病院 橘 剛先生講演 第60回 北大北大心臓疾患研究会 2012/12 札幌