当事業年度におけるわが国経済は、アジアを中心とする世界経済の改善や大規模な景気対策を背景として、輸出や生産に持ち直しの動きが見られたものの、企業収益の悪化などから設備投資が大幅に減少し、雇用情勢が急速に悪化するなど、厳しい状況が続きました。
情報通信分野においては、携帯電話の急速な成長、IP化・ブロードバンド化の進展に伴うネット利用の普及による広がりに加え、通信と放送、固定と移動の融合や、SaaS(※1)、クラウドコンピューティング(※2)、CGM(※3)等ネットを活用した新たなサービスの拡大等により、ダイナミックな構造変化が進展しています。
ブロードバンドサービス市場においても、光アクセスサービスがブロードバンドサービスの過半を占めるまでに拡大し、事業者間の設備競争およびサービス競争の進展に加え、映像配信も含めたトリプルプレイ提供の拡大、パソコン以外の情報機器等を活用した新たなサービスの登場など、市場環境が大きく変化しています。一方、電話市場においても、光アクセスサービスの拡大に伴い、既存固定電話から光IP電話への移行が進み、また、他事業者によるドライカッパ回線を利用した直収電話サービスやCATV事業者による電話サービスとの競争が続いています。
当社は、このような厳しくかつ激変する事業環境のもと、お客様が安心してすべてを任せることができる「身近な総合ICT(※4)企業」として、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供・維持に努めるとともに、平成20年5月に日本電信電話株式会社が策定したNTTグループの新たな中期経営戦略「サービス創造グループを目指して」の実現に向け、NGN(※5)の構築とそのネットワークを活用した新しいサービス・商品の提供を通じて、お客様のニーズにあった安心・安全で信頼性の高い魅力的なブロードバンドサービスの普及・拡大に積極的に努めてきました。
NTTグループ中期経営戦略「サービス創造グループを目指して」の具現化に向け、「フレッツ光」(※6)のエリアカバー率(※7)を90%以上にまで拡大し、更にNGNを活用した、信頼性に優れ、帯域確保型アプリケーションも利用可能な光アクセスサービス「フレッツ 光ネクスト」については、提供エリアを概ね「Bフレッツ」の提供エリア全域にまで拡大しました。
「フレッツ光」については、順調に契約数を伸ばし、平成21年10月には700万契約を突破しました。そのうち「フレッツ 光ネクスト」については、契約数が100万契約を突破し、「フレッツ光」新規開通の大半を占める状況になっています。また、NGNを活用した大規模ユーザ向けVPN型サービス「ビジネスイーサ ワイド」についても、順調に契約数を伸ばしております。更に、強固なセキュリティの実現に向け、「フレッツ・キャスト」ご契約者向けに「回線情報通知機能」を提供開始、最大通信速度が下り(データ受信)200Mbpsの「フレッツ 光ネクスト ファミリー・ハイスピードタイプ」および「フレッツ 光ネクスト マンション・ハイスピードタイプ」を提供開始、「フレッツ 光ネクスト」に対応した大規模事業所向け光IP電話サービスとして「ひかり電話オフィスA(エース)」を提供開始するなど、サービスの拡充にも取り組みました。
引き続き、広帯域・高品質・高セキュリティ等のNGNの特長を活かした利便性の高い新サービスの開発・提供など、NGNの魅力を更に向上させ、豊かなコミュニケーション環境の創造や新たなビジネス機会の創出を目指した取り組みを推進してまいります。
また、「フレッツ光」については、より多くのお客様にご利用いただけるよう、月額利用料や工事費等の各種割引施策を実施するとともに、マンションの光カバレッジ拡大による引越しを契機とした解約の抑制、CRM(※8)の充実によるお客様満足の向上を目的とした会員制プログラム「フレッツ光メンバーズクラブ」の開始など、お客様に継続してご利用いただくための取り組みを強化しました。
更に、「フレッツ光」の利用用途の拡大の取り組みとしては、株式会社オプティキャスト様との協業により提供している「フレッツ・テレビ」(※9)の提供エリアを拡大するとともに、集合住宅オーナー様、管理会社様および管理組合様向けの新料金プラン「フレッツ・テレビ 建物一括契約プラン」(※10)を提供開始、株式会社ケーブルテレビ山形様との協業による「ケーブルテレビ山形&フレッツ光」(※11)を提供開始、ニューデジタルケーブル株式会社様との協業による「ニューデジタルケーブル&フレッツ光」(※12)を提供開始、塩釜ケーブルテレビ株式会社様との協業に合意するなど、映像系サービスの拡充に努めました。一方、綜合警備保障株式会社様とのインターネットを活用した警備サービス「ホームセキュリティ」における協業、ライフネット生命保険株式会社様との生命保険業界で初めての遠隔テレビ電話相談サービスにおける協業、株式会社オービックビジネスコンサルタント様との協業による安心・快適な基幹業務運用環境を提供する「奉行 on フレッツ」の提供、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社様の「スターバックス コーヒー」店舗での「フレッツ・スポット」の提供、尚美学園大学様および東京家政学院大学様との「フレッツ・スポット コミュニティモデル(※13)」の提供に向けた協業の合意、株式会社リコー様および富士ゼロックス株式会社様とのオフィスICT分野における協業の合意など、幅広い分野の事業者と連携を図りました。また、「フレッツ光」による便利で安心・快適な生活を提案する情報機器「光LINK(リンク)」シリーズとして、リビングPC「光BOX」を提供開始するなど、利用シーンの拡充、付加価値の高いサービスの普及・拡大に努めました。
お客様サービスの向上に向けては、集合住宅向け「光配線方式」(※14)の拡充による工事日即決の推進や、無派遣工事の推進などにより、光アクセスサービスの開通納期短縮に継続的に取り組みました。また、お客様に安心してご利用いただけるサービスの取り組みとして、ネットセキュリティサービス「フレッツ・ウイルスクリア」や、パソコンやルータ、プリンタ等のブロードバンド全般に関するお客様からの幅広いお問い合わせに遠隔で対応する「リモートサポートサービス」の拡充を図り、平成22年3月には、「フレッツ・ウイルスクリア」については100万契約、「リモートサポートサービス」については150万契約を突破しました。
企業のお客様への最適なサービスのご提供と更なるサービス品質の向上を目的とし、これまで主に大規模事業所向けに個別ソリューションを提供してきました「ビジネスユーザ事業推進本部」と、中堅・中小事業所向けに汎用パッケージを提供してきました「コンシューマ事業推進本部オフィス営業推進部」を統合し、ビジネスユーザ市場全体に対する事業責任を担う「ビジネス&オフィス事業推進本部」を設置しました。
大規模事業所向けの取り組みとしては、自治体、警察・消防、教育・大学、アグリ、地銀、医療等の分野に対し、業界の特性や動向を踏まえた業界特化型のソリューションを中心に、ICTをより活用して、地域のお客様に喜んでいただけるよう、効率的かつ効果的な営業活動を展開しました。データセンタービジネスについては、従来に比べ安価で、拡張性・柔軟性に優れた練馬データセンターを新規稼動させるなど、新規需要の開拓に努めました。
また、企業向けVPNサービス「フレッツ・VPN ゲート」については、従来の10M品目、100M品目、1G品目に、10G品目を加えるとともに、アクセス回線として「フレッツ 光ネクスト ビジネスタイプ」にも対応可能となり、「ビジネスイーサ」については、ご契約回線に故障が発生した場合、お客様にメールにてお知らせする「ビジネスサービス故障通知」を提供開始するなど、サービスの拡充にも取り組みました。
更には、デジタル・ディバイドの解消および地域のニーズに合わせたブロードバンドサービス環境の提供に向け、各自治体と連携し、ブロードバンド環境整備に積極的に取り組みました。
中堅・中小事業所向けの取り組みとしては、光IP電話サービス「ひかり電話オフィスタイプ」等における新たな通話料定額サービス「グループ通話定額」を提供開始、ソフト会社様が「フレッツ光」等を介してパッケージソフトをご利用者に配信する「フレッツ・ソフト配信サービス」および「フレッツ・ソフト配信サービス」「フレッツ・キャスト」のご契約者向けに、有料情報サービス利用料を課金し、その料金の回収を代行する「フレッツ・まとめて支払い」を提供開始しました。
事業運営体制については、効率的なコールセンタ業務運営として、従来から取り組んできました116センタの拠点集約が完了し、新たに相互接続業務の拠点集約、113センタ等故障受付業務の拠点集約などにも取り組みました。
また、工事会社も含めたBPR(※15)やシステム改善にも積極的に取り組み、「フレッツ光」受付オーダ処理時間の短縮を実現するなど、一層の経営の効率化による経営基盤の安定・強化を図り、経営環境の変化に即応した弾力的な事業運営に努めました。
情報通信サービスの提供を通じて、地球環境に優しく、社会の健全で持続的な発展に寄与していくことを企業の社会的責任と考え、CSR活動をNTT東日本グループにおける事業運営の重要な柱の一つとして位置づけ、「NTTグループCSR憲章」(平成18年6月制定)を基本に、法令等遵守や低炭素社会に向けた取り組みはもとより、「つなぐ」ことを使命に、安心・安全な通信インフラの提供による信頼の維持・向上に努めました。
法令等遵守の取り組みとしては、個人情報保護、適正な広告表示、公正競争の確保、労働者派遣に関する各種法令等遵守に向けた継続した取り組みを行いました。
また、情報流出や不正アクセスなど、社会的に情報セキュリティに対する関心が高まる中、お客様情報・他事業者情報をはじめとした各種情報の保護・管理、適正利用や不正アクセス対策等の更なる徹底・強化を図るため、平成22年4月より、「情報セキュリティ推進部」を新たに設置し、情報セキュリティに関する全社的な方針の策定、制度・規程の整備、セキュリティ対策の企画・実施、監査・点検等を行うとともに、NTT東日本グループにおける情報セキュリティの横断的かつ統一的な取り組みを実施していくこととしました。
低炭素社会に向けた取り組みとしては、お客様への情報通信サービスのご利用による環境負荷低減のご提案や、省エネ型ネットワーク設備への更改などの取り組みに加え、社員等の環境意識の醸成に向けて、「eco検定(※16)受験」、「我が家の環境大臣(※17)への登録」、「地域清掃活動への参画」などを推奨し、職場や家庭、地域社会など、様々な場面での環境負荷低減につながる取り組みを推進する「NTT東日本グループアクトグリーン21」を展開しました。また、「グリーンポテト」(※18)の展開などの屋上緑化、太陽光発電システム導入、LED(※19)照明導入などの「NTT東日本本社ビルのグリーン化」に取り組み、一方、社用車の低公害車化や、公衆電話ボックス内蛍光灯のLED化を推進しました。
更には、ダイバーシティ・マネジメント(※20)により多様な人材の活用および多様な働き方の推進にも取り組み、また、危機管理として、新型インフルエンザ対策の実施や災害時の通信設備の早期復旧に向け、大規模災害を想定した自衛隊との共同訓練等にも取り組みました。
これらCSRの取り組みについて、NTTグループCSR憲章の理念を浸透させつつ、グループ一体となったCSR活動を一層推進するために「NTT東日本グループCSR目標」を設定するなど、CSR経営の強化に努めるとともに、「NTT東日本グループCSR報告書2009」を発行し、ステークホルダーへの情報開示にも積極的に取り組みました。
以上の取り組みの結果、営業収益は1兆9,286億円(前年同期比1.2%減)、経常利益は717億円(前年同期比9.7%増)、当期純利益は505億円(前年同期比34.8%減)となりました。