1.事業の概況

1.株式会社の現況に関する事項
  事業の経過及び成果
 全般の状況
 当事業年度における我が国経済は、企業部門の好調が持続するなど、景気の緩やかな拡大が続いていましたが、米国のサブプライムローン問題に端を発する株式・為替市場の変動や原油価格の動向等を背景に、企業収益が弱含み、設備投資も横ばいとなり、雇用情勢の改善にも足踏みがみられるなど、景気回復への慎重な見方が広がってきました。
 情報通信分野におきましては「u−Japan政策」「IT新改革戦略」が目指すユビキタスネット社会の実現に向け、ブロードバンド化・モバイル化の急速な進展や次世代ネットワーク(NGN)構築に向けた取り組みが加速し、通信と放送の連携、固定と移動を融合したサービスの進展等により、市場構造が急激に変化してまいりました。
 ブロードバンドサービス市場におきましては、DSLサービスの契約数が純減に転じるなか、光アクセスサービスの拡大が続き、また、インターネット・IP電話・映像サービスを一体的に提供するトリプルプレイサービスの本格化や動画共有サイト、ソーシャルネットワーキングサービス※1等の消費者発信型メディアと呼ばれるネット周辺ビジネスや情報機器や無線機器を活用した新たなサービスなどが急速に発展してまいりました。電話市場におきましても、他事業者によるドライカッパ回線を利用した直収電話サービスとの競争が熾烈化するとともに、携帯電話間の通話料定額制サービスや固定と移動を融合したサービスの競争が開始されています。
 当社は、このような厳しくかつ激変する事業環境のもと、お客様と長いお付き合いをさせていただく「身近な総合ICT※2企業」として、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供に努めるとともに、「NTTグループ中期経営戦略(平成16年11月公表)」の実現に向け、次世代ネットワーク(NGN)の本格的な商用サービス「フレッツ 光ネクスト」等のサービス・商品を提供するなど、お客様のニーズにあった安心・安全で信頼性の高い魅力的なブロードバンドサービスの拡大に積極的に努めてまいりました。
<1>光・IP系サービス推進に向けた取り組み
   「NTTグループ中期経営戦略」の具現化に向け、次世代ネットワーク(NGN)の本格的な商用サービスの提供を行うため、平成18年12月に開始したフィールドトライアルを昨年4月から一般のお客様に対象を拡大し、また幅広い分野の事業者様との連携を図りつつ、お客様ニーズの把握に努めてまいりました。その結果、本年3月より、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の一部エリアで商用サービス「フレッツ 光ネクスト」等を提供開始しました。既存の光アクセスサービス、光IP電話サービス、VPNサービス、イーサネットサービスに相当する各サービスをはじめとし、次世代ネットワーク(NGN)の特徴である高音質な音声通話やテレビ電話を利用可能とするほか、VOD※3等のコンテンツ配信サービスをより高品質かつ安定的に視聴可能となる帯域確保の付加サービスを提供するなど、新たなサービスを併せて提供開始しました。
 引き続き、広帯域・高品質・高セキュリティ等の次世代ネットワーク(NGN)の特長を活かした利便性の高い新サービスの開発・提供など、次世代ネットワーク(NGN)の魅力を更に向上させるサービスラインナップの充実に努め、豊かなコミュニケーション環境の創造や新たなビジネス機会の創出を目指した取り組みを推進してまいります。
 光アクセスサービス「Bフレッツ」につきましては、より多くのお客様にご利用いただけるよう、月額利用料や工事費等の各種割引施策を通じて販売の拡大を図ると同時に、自治体や地域住民の方々との連携を通じた積極的な提供エリアの拡大に努めてまいりました。
 更に、任天堂株式会社様が提供するTVゲーム機「Wii(R)※4」と「Bフレッツ」との接続推進に向け協業を図るなど、光アクセスサービスの新たな利用シーンの提供による販売拡大に取り組むとともに、多チャンネル放送・VOD等の各種映像サービスを提供する事業者様等との積極的な連携や携帯電話等を使用して外出先からネットワークカメラによりご自宅の様子を確認することを可能とする「フレッツ ホームセキュリティ」を販売開始するなど、光アクセスサービスを利用した安心で便利な付加価値の高いサービスの普及・拡大に努めてまいりました。
 また、お客様サービスの向上に向けた取り組みにつきましては「Bフレッツ」の開通納期の短縮や土休日受付・工事の更なる推進に取り組むとともに、「Bフレッツ ハイパーファミリータイプ」について、24時間・365日故障修理対応を行うサービス「Bフレッツ ハイパーファミリータイプ アドバンスドサポート」の提供開始や「ひかり電話」をご利用のお客様からのお問合せ、ご要望等をワンストップで解決する「光サポートセンタ」の拡大を推進してまいりました。更に、日々増加するコンピュータウィルス等の脅威に対するセキュリティ対策の強化として「フレッツ・ウイルスクリア」の積極的な販売や「ひかり電話」を停電時でも利用可能にする機器のレンタルサービスを提供開始するとともに、ネットワークからパソコン、ルータ等周辺機器までのトラブル等に対するサポートサービスとして「Bフレッツ」をご利用いただいているお客様への訪問サービスや電話等によるリモートサポートサービス等をワンストップで行う「ワンストップアフターサービス」を本格的に提供開始するなど、光アクセスサービスの利用拡大に向け、お客様に安心してご利用いただけるサービスの充実に努めてまいりました。
<2>ソリューションビジネスの取り組み
 法人ビジネス分野におきましては、「セキュリティ」「映像」「データセンタ」「BCP」※5等の各種ソリューション営業を積極的に展開しました。具体的には情報漏えいの防止に向けた「キーワード指定型ファイル検索削除ソリューション」を提供開始するとともに、中堅企業向けBCPソリューション「Ephelio DR」(イフェリオディーアール)※6をはじめとした市場が拡大傾向にあるデータセンタビジネスを推進するなど、自治体や企業における災害時等の事業継続計画、情報セキュリティ対策、業務の効率化及び新しいビジネス戦略等の実現をサポートしてまいりました。
<3>事業運営体制の状況等
 事業運営体制につきましては、東京エリアの企業のお客様に対する地域に密着した営業活動の強化と、高度化・多様化するソリューションニーズへ、更にきめ細やかに対応することを目指し、昨年10月に東京支店及び管内5社※7に「オフィス営業部」を設置するとともに、「株式会社NTT東日本ソリューションズ」※8を設立・営業開始いたしました。更に、料金部門・116センタ等の拠点集約やアウトソーシング化の推進を図るとともに、経費の徹底した効率化や遊休不動産の利活用を積極的に推進するなど、一層の経営の効率化による経営基盤の安定・強化を図り、経営環境の変化に即応した弾力的な事業運営に努めてまいりました。
<4>CSRの推進に向けた取り組み
 安心・安全で豊かな社会の実現に向け、CSR活動をNTT東日本グループにおける事業運営の重要な柱の一つとして位置づけ、「NTTグループCSR憲章」(平成18年6月制定)を基本に、個人情報保護の徹底をはじめとした法令等遵守はもとより、経済的側面や環境的側面、社会・地域への貢献といった社会的側面にも配慮した事業活動を推進してまいりました。具体的には、社員一人ひとりがCSRに取り組むための行動指針である「NTT東日本グループCSR行動基準」を策定するなど、CSR経営の強化に努めるとともに、「NTT東日本グループCSR報告書2007」の発行等、ステークホルダーへの情報開示にも積極的に取り組んでまいりました。
 その他、災害時における取り組みとして、昨年7月に発生した「新潟県中越沖地震」においては、通信設備及びサービスの早期復旧に向け全社を挙げて取り組んでまいりました。具体的には、特設公衆電話の設置や「災害用伝言ダイヤル(171)」及び「災害用ブロードバンド伝言板(web171)」の運用により連絡手段の確保を図ったほか、被災による設備故障等で電話がご利用できなかったお客様につきまして、その期間の基本料金等を無料とするとともに、被災者への義援金募集に係るダイヤルQ2番組の回収代行手数料の無料化を行うなど、情報通信事業者として、被災者支援の一翼を担ってまいりました。
 更に、被災後直ちに当該支店(新潟支店)を通じ、柏崎市・刈羽村両行政当局の要望をお伺いし、非常食等の災害対策物品の提供を行いました。
 また、昨年5月に「ひかり電話」等の故障が発生し、お客様に多大なご迷惑・ご不便をおかけしたこと、更に昨年9月に相次いで発生した大規模な情報漏えいにつきまして、お客様及び関係者の方々に多大なご迷惑をおかけしましたことを心より深くお詫び申し上げます。
 「ひかり電話」等の故障につきましては、サービス復旧時間の短縮に努めるとともに、IP伝送装置の処理能力の向上を図るなど、早急に対策を講じました。今後も、再発防止と更なる安定運用に向けた取り組みやIP系サービスの技術者育成の充実・強化を図るなど、信頼性向上に全社を挙げて努めてまいります。
 情報漏えいにつきましては、当社ではこれまで、業務関連ファイルの社外への無断持ち出しの禁止やお客様情報を格納した専用サーバへのアクセスを指紋認証により制限するとともに、個人情報の取り扱いに関する全社員への周知・教育等を実施し、個人情報の保護に努めてきたところです。しかしながら、今回、このような事態が発生したことを厳粛に受け止め、機密情報流出防止対策ソフトの導入による社内パソコンの外部記録装置用接続口の制限や社員教育の再徹底に努めるなど、個人情報の取り扱いには更に厳正に取り組んでまいります。
 最後に、情報案内事業につきまして、お客様の利便性の向上、及び番号案内サービスにおける収益確保を目的として、104番号案内サービスでご案内した電話番号にそのままおつなぎする「DIAL 104」サービスを昨年7月から提供開始いたしましたが、昨年7月から同年10月にかけて実施した「DIAL 104」のテレビコマーシャル、新聞広告、雑誌広告、駅貼りポスター、並びに鉄道・バスの車内広告の表示について、取引条件が実際のものより著しく有利であると一般消費者に誤認されるものとして、不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定により、公正取引委員会から排除命令を受けました。お客様にご迷惑をおかけしましたことについて、心より深くお詫び申し上げます。今後は、お客様が安心してご利用いただけるよう、適切な対策を徹底するとともに、より一層のサービス向上に努めてまいります。
<5>販売状況
 以上の取り組みの結果、営業収益は2兆27億円(前年同期比2.8%減)、経常利益は674億円(前年同期比25.3%減)、当事業年度の純利益は968億円(前年同期比14.9%増)となりました。
※1: 人と人とのつながりを促進・サポートするコミュニティ型の会員制サービス。
  ※2: Information and Communication Technologyの略。情報通信技術を表す言葉。
  ※3: VOD:Video On Demandの略。お客様の見たいときに様々な映像コンテンツを配信するシステム、またはサービスの総称。
  ※4: 「Wii」は任天堂株式会社の登録商標。
  ※5: Business Continuity Plan(事業継続計画)の略。企業が被災しても重要事業を中断させず、中断しても可能な限り短期間で再開させ、中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。
  ※6: 「Ephelio」はお客様の業務システムの設計〜構築〜保守・運用をトータルで提供するNTT東日本のフルアウトソーシングサービスの総称。「DR」はDisaster Recoveryの略。災害復旧。業務用システムが被災した際に、業務を継続するために想定される運用体制の総称。
  ※7:
株式会社NTT東日本-東京南 (本社:東京都港区)
株式会社NTT東日本-東京中央 (本社:東京都千代田区)
株式会社NTT東日本-東京北 (本社:東京都新宿区)
株式会社NTT東日本-東京東 (本社:東京都台東区)
株式会社NTT東日本-東京西 (本社:東京都立川市)
  ※8: 株式会社NTT東日本ソリューションズ(本社:東京都文京区、会社設立:平成19年9月4日)


2.業務の適正を確保するための体制等
 当社は、NTT東日本グループにおける内部統制システムの整備に関する基本方針を取締役会で決議しています。その内容は、以下のとおりです。
 なお、情報漏えいや「DIAL 104」の広告表示に対する公正取引委員会からの排除命令を受けた事象等がありましたが、内部監査組織である業務監査室が、本社及び支店、並びにグループ会社に対して、監査を行い、適時必要な改善を図るなど、内部統制が有効に機能していることを確認しております。


〔内部統制システムの整備に関する基本方針〕
I. 内部統制システムの整備に関する基本的考え方
1. 当社は、内部統制システムの整備にあたり、法令の遵守、損失の危機管理及び適正かつ効率的な事業運営を目的に、損失の未然防止、損失最小化に向けた各種対策を講じる。
2. 上記内部統制システムの整備及び運用状況についての有効性評価を実施する組織として業務監査室を設置し、監査レビューの実施やグループとしてリスクの高い共通項目については、持株会社からのグループ統一監査テーマを含めた監査を実施することにより、有効性を評価した上、必要な改善を実施する。
3. 米国企業改革法(302条(開示内部統制)、404条(財務報告内部統制)等)に基づく内部統制システムの信頼性の確保についても、持株会社と連携し適切に取り組みを実施する。
4. 社長は職務執行の最高責任者として、内部統制システムの整備及び運用について責任をもって実施する。

II. 内部統制システムの整備に関する体制の整備
1. 取締役及び社員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
当社は、法令を遵守することはもとより、高い倫理観を持って事業を運営していくため、以下の取り組みを行う。
(1) 社員就業規則等において、事業を適正かつ効率的に運営するため、誠実に法令、規程及び通達を遵守し、全力をあげてその職務の遂行に専念しなければならないと定める。
  (2) NTT東日本グループ全ての取締役及び社員は、NTTグループ企業倫理憲章に基づき、企業倫理の強化に向けた取り組みを実施する。
  (3) 企業倫理の責任体制を明確化し、企業倫理の確立、コンプライアンス意識の醸成、綱紀の保持、申告に関する調査検討等を行うため、副社長を委員長として、企業倫理委員会を設置する。
  (4) より風通しのよい企業風土の醸成に努め、社内およびNTT東日本グループ各社内に社内の申告・相談窓口を設置するとともに、グループ横断的な相談窓口である弁護士による社外の申告・相談窓口を活用する。
  (5) 取締役や社員に対する継続的な啓発活動を行うため、企業倫理研修等を実施する。また、社内チェックの充実・強化を図るため、企業倫理に関する意識調査等を行なう。

2. ビジネスリスクマネジメントに関する規程その他の体制
当社は、ビジネスリスクについて適切にマネジメントするため、以下の取り組みを行う。
(1) ビジネスリスクマネジメントの責任体制を明確化するため、副社長を委員長として、会社運営に関わる新たなビジネスリスクへの対処に向けた危機管理を行うためにビジネスリスクマネジメント推進委員会を設置する。
  (2) また、リスクの発生を予防し、事前準備をするとともに、リスクが発生した場合に的確かつ迅速な対応ができるように取り組めるよう、NTTグループとしてのビジネスリスクマネジメントマニュアルを配備する。

3. 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
当社は、取締役の適切な責任分担と監督体制により効率的な業務運営を行うため、以下の取り組みを行う。
(1) 組織の構成と各組織の職務範囲を定める組織規程及び権限の分掌を定める責任規程を策定する。
  (2) 取締役会規則を定め、原則月1回開催される取締役会において、経営に関する重要事項について、関係法規、経営判断の原則及び善良なる管理者の注意義務等に基づき決定を行うとともに、定期的に職務の執行状況等について報告する。
  (3) さらに会社経営・グループ経営に関する重要事項を課題毎に議論し、適正な意思決定を行うための経営会議、委員会を設置する。

4. 取締役の職務の執行に関する情報の保存及び管理に関する体制
当社は、取締役の職務の執行に関する情報の管理を行い、適正かつ効率的な業務運営に資するため、以下の取り組みを行う。
(1) 文書(関連資料及び電磁媒体に記録されたものを含む。以下「文書」という。)その他の情報の管理について必要事項を定めるため、文書規程、情報セキュリティの基本方針を策定する。
  (2) 文書の整理保存の期間については、法令に定めるものの他、業務に必要な期間保存する。

5. NTT東日本グループにおける業務の適正を確保するための体制
当社は、NTT東日本グループ会社間及び持株会社との取引については法令に従い適切に行うことはもとより、NTT東日本グループが適正な業務運営を行ない、グループとしての成長・発展に資するため、以下の取り組みを行う。
(1) 危機発生時におけるNTT東日本から持株会社およびNTT東日本グループ会社からNTT東日本への連絡体制
  (2) 不祥事等の防止のための社員教育や研修等に係る体制
  (3) 情報セキュリティ及び個人情報保護に関する体制
  (4) 定期的な財務状況等の報告の受領
  (5) NTT東日本の内部監査部門等によるNTT東日本グループ会社の監査

6. 監査役の職務を補助すべき社員に関する事項及びその社員の取締役からの独立性に関する事項
当社は、監査役の監査が実効的に行われることを確保するため、監査役の職務を補助すべき社員について以下の取り組みを行う。
(1) 監査役の職務を補助すべき専任の社員を配置するため、会社法上の重要な組織として監査役室を設置する。
  (2) 監査役室に所属する社員は、監査役の指揮命令に基づき業務を実施する。
  (3) 監査役室に所属する社員の人事異動、評価等について、監査役会の意見を尊重し対処する。

7. 取締役及び社員が監査役に報告をするための体制及びその他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
当社は、監査役の監査が実効的に行われることを確保するため、取締役及び社員が職務執行に関する重要な事項について監査役に報告するなど、以下の取り組みを行う。
(1) 取締役等から職務執行等の状況について以下の項目について報告する。
   
<1> 経営会議で決議された事項
<2> 会社に著しい損害を及ぼした事項および及ぼすおそれのある事項
<3> 月次決算報告
<4> 内部監査の状況
<5> 法令・定款等に違反するおそれのある事項
<6> ヘルプラインへの通報状況
<7> 上記以外のコンプライアンス上重要な事項
  (2) 監査役の求めに応じ、代表取締役、会計監査人、内部監査部門等は、それぞれ定期的及び随時に監査役と意見交換を実施する。
  (3) 監査役は取締役会のほか、重要な会議に出席することができる。
  (4) 監査役は、独自に外部の専門家と契約し監査業務に関する助言を受けることができる。


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