1.事業の概況

(1)事業の経過及び成果

<1>全般の状況

 当事業年度におけるわが国の経済は、雇用情勢に厳しさが残るものの改善に広がりが見られ、企業収益が増加するとともに、国内民間需要に支えられた景気回復が続きました。
 情報通信分野におきましては「u−Japan政策」「IT新改革戦略」が目指すブロードバンド・ユビキタスネット社会の実現に向け、情報通信企業の合従連衡や、光化・IP化、モバイル化の急速な進展を背景とした固定・移動サービスの融合、通信・放送サービスの連携等、市場構造が急激に変化してまいりました。地域通信市場におきましては、光アクセスサービスの契約数が堅調に伸びる一方、DSLは純減に転じているなど、光アクセスサービスを中心としたブロードバンド化が急速に拡大し、インターネット・IP電話・映像サービスを一体的に提供するトリプルプレイサービスが本格化するとともに、ソーシャルネットワーキングサービス※1やブログ等のネット周辺ビジネスの普及が進展してまいりました。また、従来の電話サービスでの競争に加え、光IP電話サービスの進展等、アクセスラインの種別を問わない競争が本格化・熾烈化してまいりました。
 このような事業環境のもと当社は、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供に努めるとともに、NTTグループ中期経営戦略「2010年光アクセスサービス3,000万契約」(平成16年11月公表)を実現すべく、IP時代における情報通信事業の責任ある担い手として、ネットワークとお客様の情報通信環境について、総合的かつ継続的にお役に立つことによって、お客様のご愛顧をいただく「身近な総合ICT(※2)企業」を目指し、安心・安全で信頼性の高い魅力的なサービス・商品の提供に取り組んでまいりました。
 具体的には、自治体や地域住民の方々との連携を通じて、Bフレッツの提供エリアの拡大を図るとともに、最大で8チャネル、32番号までご利用可能な「ひかり電話オフィスタイプ」等の新サービスの提供開始や映像配信事業者との提携等による魅力的な映像配信等、光アクセスサービスの普及・拡大に積極的に取り組んでまいりました。さらに、法人ビジネス分野におきましては、「セキュリティ」「映像」「データセンタ」「CTI/CRM」(※3)等の各種ソリューションを積極的に展開し、自治体や企業における業務の効率化、新しいビジネス戦略等の実現をサポートしてまいりました。また、次世代ネットワーク(NGN)の本格的な商用サービスの提供に向け、NGNのフィールドトライアルを開始するなど、豊かなコミュニケーション環境の創造と企業活動の効率化・活性化及び新たなビジネス機会の創出にも努めてまいりました。
 また、お客様サービスの向上に向け、Bフレッツの開通納期の短縮や土休日対応の推進に取り組むとともに、ひかり電話のお客様のお問合せ、ご要望等をワンストップで解決する光サポートセンタの受付エリアを東日本全エリアに拡大するなど、光IP時代に向けた業務運営体制の確立の推進に積極的に取り組んでまいりました。さらに、物件費の削減を推進するとともにデータセンタ事業の展開や遊休不動産の利活用等を積極的に推進するなど、一層の経営の効率化による経営基盤の安定・強化を図り、経営環境の変化に即応した弾力的な事業運営に努めてまいりました。
 一方で、当社はCSR活動をNTT東日本グループにおける事業運営の重要な柱の一つとして位置づけ、昨年6月に制定された「NTTグループCSR憲章」を基本とし、積極的な啓発活動に努め、経済的側面はもとより、個人情報保護の徹底をはじめとした法令遵守や社会貢献等といった社会的側面や環境的側面にも配慮した活動を推進するとともに、「NTT東日本グループCSR報告書2006」の発行等、ステークホルダーへの情報開示にも積極的に取り組んでまいりました。
 そのほか、予期せぬ大規模な災害等に備え「通信ネットワークの信頼性向上」「重要通信の確保」「サービスの早期復旧」を災害対策の基本方針として、様々な対策を講じてきており、具体的には、災害時における重要通信の確保、お客様サービスの早期回復等を目的とした行政・自衛隊等と連携した防災訓練の実施や安否確認手段の充実を目的とした「災害用ブロードバンド伝言板(web171)」の本格的な運用等の取り組みを推進してまいりました。
 また、昨年、当社の「ひかり電話」が大変つながりにくい状況が発生し、お客様に多大なご迷惑・ご不便をおかけしたことにつきまして、心より深くお詫び申し上げます。
 当社としては、サーバの増設工事の前倒しやネットワーク全体の安定運用を一元的に担う「IPネットワーク統制室」の設置等、安心してご利用いただくための信頼性向上対策に取り組んでまいりました。今後も継続して、全社を挙げた再発防止と安定運用に向け、努めてまいります。
 以上の取り組みの結果、当事業年度の事業計画である「Bフレッツ150万回線純増」を達成し、営業収益は2兆613億円(前年同期比3.0%減)、経常利益は903億円(前年同期比7.3%増)、当事業年度の純利益は843億円(前年同期比64.5%増)となりました。
※1 人と人とのつながりを促進・サポートするコミュニティ型の会員制サービス。
  ※2 Information and Communication Technologyの略。情報通信技術を表す言葉。
  ※3 CTI:Computer Telephony Integrationの略。電話やFAXをコンピュータシステムに統合する技術。CRM:Customer Relationship Managementの略。情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法。CTIを含めた統合型の顧客対応システム。

<2>事業運営体制等の状況

 事業運営体制につきましては、「NTTグループ中期経営戦略の推進について」(平成17年11月公表)に基づき、IP化に伴うサービスの融合やワンストップサービスに対するお客様ニーズに対応するとともに、NTTグループ内リソースの有効活用による競争力強化等を図るため、上位レイヤ事業・法人事業の見直しを行いました。当社の主な取り組みとして、上位レイヤ事業につきましては、昨年8月にインターネット接続サービス等を提供している株式会社ぷららネットワークスの当社保有株式をエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社へ譲渡しました。また法人事業につきましては、昨年8月に地域に密着した活動での対応が必要となる地方自治体や地方銀行、学校教育機関等のお客様は当社が担当し、中央官庁、都市銀行、総合商社等のお客様はエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が担当するという体制の見直しに加え、本年1月にテレビ会議サービス事業等を提供しているNTTビズリンク株式会社の発行済株式の70%をエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社へ譲渡しました。
 また、お客様サービスの向上及び光IP時代に相応しい業務プロセスの抜本的な見直しによる効率化を図るため、本年3月に全社横断的な“業務プロセスの最適化”、“システム開発方針・開発計画の策定”、“最適かつ効率的なシステム開発”等を一元的に実施する「ITイノベーション部」を設置しました。
 そのほか、昨年6月にテルウェル東日本株式会社の株式追加取得により子会社化を行うなど、今後の市場における競争力強化及びNTTグループ内における効率化を目的としたグループ会社の事業見直しを視野に入れ、取り組みを行ってまいりました。


(2)業務の適正を確保するための体制等

 当社は、NTT東日本グループにおける内部統制システムの整備に関する基本方針を取締役会にて決議いたしました。また、内部統制への取り組みを強化する観点から「業務監査室」を設置し、内部統制システムの整備・運用状況について監査を実施するなど、有効性を評価し、必要な改善を実施しました。なお、内部統制システムの整備に関する基本方針の内容は、以下のとおりです。

【内部統制システムの整備に関する基本方針】
 NTT東日本グループは、「企業としての社会的責任を自覚しつつ、社会の持続的な発展に貢献していく」ことを基本姿勢として経営に取り組んできたところであり、今後とも、情報通信事業の責任ある担い手として、コンプライアンス(法令遵守)や、個人・顧客情報の保護などを徹底し、ブロードバンド・ユビキタスサービスの提供等の業務を取締役や社員が適正に実施することを通じ、少子高齢化問題、介護・医療問題、エネルギー・環境問題等、社会的課題の克服に向けて積極的に貢献していくこととする。
 NTT東日本は、これらのミッションを果たすため、NTT東日本グループ各社に対して適宜適切な助言・あっせんを実施するなど効果的なグループ経営を行っていくこととし、以下の通り内部統制システムの整備を行なう。

I. 内部統制システムの整備に関する基本的考え方
1. 当社は、内部統制システムの整備にあたり、法令の遵守、損失の危機管理及び適正かつ効率的な事業運営を目的に、損失の未然防止、損失最小化に向けた各種対策を講じる。
2. 上記内部統制システムの整備及び運用状況についての有効性評価を実施する組織として業務監査室を設置し、監査レビューの実施やグループとしてリスクの高い共通項目については、持株会社からのグループ統一監査テーマを含めた監査を実施することにより、有効性を評価した上、必要な改善を実施する。
3. 米国企業改革法(302条(開示内部統制)、404条(財務報告内部統制)等)に基づく内部統制システムの信頼性の確保についても、持株会社と連携し適切に取り組みを実施する。
4. 社長は職務執行の最高責任者として、内部統制システムの整備及び運用について責任をもって実施する。

II. 内部統制システムの整備に関する体制の整備
 
1. 取締役及び社員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  当社は、法令を遵守することはもとより、高い倫理観を持って事業を運営していくため、以下の取り組みを行う。
(1) 社員就業規則等において、事業を適正かつ効率的に運営するため、誠実に法令、規程及び通達を遵守し、全力をあげてその職務の遂行に専念しなければならないと定める。
(2) NTT東日本グループ全ての取締役及び社員は、NTTグループ企業倫理憲章に基づき、企業倫理の強化に向けた取り組みを実施する。
(3) 企業倫理の責任体制を明確化し、企業倫理の確立、コンプライアンス意識の醸成、綱紀の保持、申告に関する調査検討等を行うため、副社長を委員長として、企業倫理委員会を設置する。
(4) より風通しのよい企業風土の醸成に努め、社内およびNTT東日本グループ各社内に社内の申告・相談窓口を設置するとともに、グループ横断的な相談窓口である弁護士による社外の申告・相談窓口を活用する。
(5) 取締役や社員に対する継続的な啓発活動を行うため、企業倫理研修等を実施する。また、社内チェックの充実・強化を図るため、企業倫理に関する意識調査等を行なう。
 
2.ビジネスリスクマネジメントに関する規程その他の体制
当社は、ビジネスリスクについて適切にマネジメントするため、以下の取り組みを行う。
(1) ビジネスリスクマネジメントの責任体制を明確化するため、副社長を委員長として、会社運営に関わる新たなビジネスリスクへの対処に向けた危機管理を行うためにビジネスリスクマネジメント推進委員会を設置する。
(2) また、リスクの発生を予防し、事前準備をするとともに、リスクが発生した場合に的確かつ迅速な対応ができるように取り組めるよう、NTTグループとしてのビジネスリスクマネジメントマニュアルを配備する。
 
3. 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
当社は、取締役の適切な責任分担と監督体制により効率的な業務運営を行うため、以下の取り組みを行う。
(1) 組織の構成と各組織の職務範囲を定める組織規程及び権限の分掌を定める責任規程を策定する。
(2) 取締役会規則を定め、原則月1回開催される取締役会において、経営に関する重要事項について、関係法規、経営判断の原則及び善良なる管理者の注意義務等に基づき決定を行うとともに、定期的に職務の執行状況等について報告する。
(3) さらに会社経営・グループ経営に関する重要事項を課題毎に議論し、適正な意思決定を行うための経営会議、委員会を設置する。
 
4.取締役の職務の執行に関する情報の保存及び管理に関する体制
当社は、取締役の職務の執行に関する情報の管理を行い、適正かつ効率的な業務運営に資するため、以下の取り組みを行う。
(1) 文書(関連資料及び電磁媒体に記録されたものを含む。以下「文書」という。)その他の情報の管理について必要事項を定めるため、文書規程、情報セキュリティの基本方針を策定する。
(2) 文書の整理保存の期間については、法令に定めるものの他、業務に必要な期間保存する。
 
5.NTT東日本グループにおける業務の適正を確保するための体制
当社は、NTT東日本グループ会社間及び持株会社との取引については法令に従い適切に行うことはもとより、NTT東日本グループが適正な業務運営を行ない、グループとしての成長・発展に資するため、以下の取り組みを行う。
(1) 危機発生時におけるNTT東日本から持株会社およびNTT東日本グループ会社からNTT東日本への連絡体制
(2) 不祥事等の防止のための社員教育や研修等に係る体制
(3) 情報セキュリティ及び個人情報保護に関する体制
(4) 定期的な財務状況等の報告の受領
(5) NTT東日本の内部監査部門等によるNTT東日本グループ会社の監査
 
6. 監査役の職務を補助すべき社員に関する事項及びその社員の取締役からの独立性に関する事項
当社は、監査役の監査が実効的に行われることを確保するため、監査役の職務を補助すべき社員について以下の取り組みを行う。
(1) 監査役の職務を補助すべき専任の社員を配置するため、会社法上の重要な組織として監査役室を設置する。
(2) 監査役室に所属する社員は、監査役の指揮命令に基づき業務を実施する。
(3) 監査役室に所属する社員の人事異動、評価等について、監査役会の意見を尊重し対処する。
 
7. 取締役及び社員が監査役に報告をするための体制及びその他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
当社は、監査役の監査が実効的に行われることを確保するため、取締役及び社員が職務執行に関する重要な事項について監査役に報告するなど、以下の取り組みを行う。
(1) 取締役等から職務執行等の状況について以下の項目について報告する。
 
<1> 経営会議で決議された事項
<2> 会社に著しい損害を及ぼした事項および及ぼすおそれのある事項
<3> 月次決算報告
<4> 内部監査の状況
<5> 法令・定款等に違反するおそれのある事項
<6> ヘルプラインへの通報状況
<7> 上記以外のコンプライアンス上重要な事項
(2) 監査役の求めに応じ、代表取締役、会計監査人、内部監査部門等は、それぞれ定期的及び随時に監査役と意見交換を実施する。
(3) 監査役は取締役会のほか、重要な会議に出席することができる。
(4) 監査役は、独自に外部の専門家と契約し監査業務に関する助言を受けることができる。


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