1.業績の概況

 当期におけるわが国経済は、企業収益が改善し、設備投資が増加する一方、雇用情勢は厳しさが残るものの改善に広がりがみられ、個人消費も緩やかに増加しているなど、景気の回復が続きました。
 情報通信分野におきましては、時間や場所を選ぶことなく様々な情報の送受信を可能とするユビキタスサービスや、インターネット・IP電話・映像サービスを一体的に提供するトリプルプレイサービスの登場等、情報通信に対するニーズの高度化、多様化、グローバル化が急速に進展し、移動体通信、インターネット通信需要が急増するなど市場構造そのものが急激に変化し、顧客獲得に向けたサービス競争が激しさを増してまいりました。
 ブロードバンド市場においては、光アクセスサービスを利用した動画映像の配信、TV電話等の双方向映像コミュニケーション等のアプリケーションの普及拡大により、光アクセスサービスの純増数が平成16年度第4四半期以降、DSLサービスを上回るなど、光アクセスサービスの急速な市場拡大が進んでまいりました。一方、固定電話市場におきましても、携帯電話やIP電話へのシフトならびに他事業者によるドライカッパを利用した直収電話サービスが本格化するなど、メタル・光といったアクセスラインの種別を問わない全面的な顧客獲得競争に突入し、競争環境は一層厳しいものとなりました。
 このような事業環境のもと、当社は、2004年11月に発表されたNTTグループ中期経営戦略「2010年 光アクセスサービス3,000万加入」を実現すべく、光IP電話の本格的展開をはじめとした、安心・安全に利用できる付加価値の高いサービスの開発・提供等、お客様のニーズにあったブロードバンド通信需要の拡大に積極的に努めるとともに、支店等組織の見直しによる意思決定のスピード化、および販売力のさらなる強化にも努めた結果、当期の事業計画である「Bフレッツ100万回線純増」を達成いたしました。また、物件費の削減や資産のスリム化等、一層の経営の効率化による経営基盤の安定・強化を図り、経営環境の変化に柔軟に即応しつつ弾力的な事業運営に努めました。
 具体的には、以下の取り組みを積極的に実施してまいりました。

<1>光・IP系サービス推進に向けた取り組み
 急速に拡大するブロードバンドサービスにつきましては、トリプルプレイサービスの提供等、多様なお客様ニーズに対応した光アクセス回線及び光IPサービスの飛躍的拡大に向けた魅力ある新サービスの提供に積極的に取り組み、さらなるサービスの充実と料金の低廉化に努めました。具体的には、光アクセス回線の拡充につきましては、「Bフレッツ」について、「ひかり電話ビジネスタイプ」と組み合わせてご利用頂ける新メニューの提供開始や、より多くのお客さまにご利用いただくことを目的に「マンションタイプ」等で利用されるVDSL装置(下り最大100Mbps(※1))の機器利用料の値下げを実施しました。また、光IPサービスにつきましては、低廉な通話料金で固定電話並みに高品質なIP電話サービス「ひかり電話」の提供を積極的に展開するとともに、昨年11月には同時に2回線分の通話を可能とする「複数チャネル(ダブルチャネル)」サービス、複数の電話番号が利用できる「追加番号(マイナンバー)」サービスの提供開始やIPテレビ電話端末「フレッツフォン VP1000」をご利用いただくことにより、NTTドコモの「FOMA(R)」との間でテレビ電話のご利用を可能とするなど付加サービスの充実にも努めてまいりました。
 さらに、法人のお客様向けIP電話サービスの名称を「ひかり電話ビジネスタイプ」とし、基本料金の変更や新しい通話料金プランの追加など提供条件の見直しや「Bフレッツ ハイパーファミリータイプ」をご利用いただいている法人のお客さま向けIP電話サービス「ひかり電話オフィスタイプ」の受付を開始するなど、多様化するお客様ニーズへの対応を図りました。
 また、ユビキタス社会に向けた取り組みとして、駅、空港、ホテルなどの外出先で、自宅やオフィスで使っている無線LAN機能を備えた様々な端末を用いて、安価な定額料金で手軽に高速無線通信ができる公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」の推進に努めてまいりました。具体的には、お客様の利便性向上を図るため、ご利用可能なアクセスポイントの拡大を積極的に展開するとともに、昨年10月にはNTT西日本が提供する「フレッツ・スポット」との相互ローミングおよび複数の無線LAN機器への対応を可能とする機能拡充を実施しました。
 販売促進施策につきましては、フレッツサービスにおける月額利用料等の各種「無料キャンペーン」の実施や「ひかり電話」初のキャンペーン「機器工事費等無料キャンペーン」を実施するなど、より一層お客さまのご要望にお応えできるよう積極的に努めてまいりました。
 このほか株式会社USENが提供する無料ブロードバンド放送「GyaO」の「フレッツ・オンデマンド」上での配信や光ファイバーを利用した多チャンネル放送サービス「スカパー!光」等の販売に関する運営会社の設立および出資を行うなど、他企業とのアライアンスを積極的に実施し、ブロードバンド環境を活用した付加価値の高いコンテンツの普及拡大に努めてまいりました。
※1 通信速度は、お客様宅内に設置する弊社回線終端装置から弊社設備までの間における技術規格上の最大値であり、お客様宅内での実使用速度を示すものではありません。

<2>固定電話サービスへの取り組み
 固定電話市場におきましては、ドライカッパを利用した直収電話サービスの参入により、基本料を含めた本格的な競争時代を迎えているなか、昨年5月より複数回線の電話料金を一括して請求しているお客様に対して、基本料(回線使用料)の割引を実施し、料金の低廉化に努めてまいりました。

<3>ソリューションビジネスへの取り組み
 法人ビジネス分野におきましては、お客様と課題を共有し共に新たなビジネスを創造していく「Team m@rketing solution」(チーム・マーケティング・ソリューション)というビジネスコンセプトのもと、「メガデータネッツ」「フラットイーサ」「スマートイーサ」「スーパーワイドLAN」「メトロイーサ」等のビジネスユーザ向けネットワークサービスと、セキュリティ、データセンター等の情報システムを駆使し、ネットワークと情報システムの垣根をこえたトータルソリューションビジネスを展開しました。具体的には、日常業務における「電話のかけ直し」や「作業中の電話対応」に伴い発生する業務ロスを削減し、企業経営におけるトータルコスト削減に寄与する「モバイルプレゼンスソリューション」や、企業におけるセキュリティ対策ニーズに対応するため、企業や公共機関における業務用パソコンのセキュリティ対策を強化することで情報漏洩やウィルス被害などを未然に防止する「検疫ソリューション」等の提供を開始しました。 このほか、東日本エリアの各自治体等におけるIT化の推進に対しましても、電子自治体ソリューションや医療ソリューションの提供を行うなど積極的に取り組んでまいりました。

<4>業務運営体制の見直し等への取り組み
 業務運営体制につきましては、お客様のワンストップショッピングニーズへの対応強化、業務のフロースルー化による更なる効率化等によるお客様サービスの向上を図る観点から、都道県域の営業系・設備系・共通系の3つのアウトソーシング会社(※2)を都道県域単位に統合するとともに支店の法人営業業務等を新会社へ委託するなどの見直しを行いました。なお、東京エリアにつきましては、きめ細やかなお客様対応と業務のスピードアップの観点から、5ブロックエリア単位の会社編成といたしました。また、昨年11月には、Bフレッツ、ひかり電話の工事日即決の本格実施や土休日受付・工事体制の強化を実施し、開通納期の短縮に努めるとともに、本年2月には「ひかり電話」ご利用のお客様からのお問合せ、ご要望、トラブル等を迅速に解決できるよう「光サポートセンタ」を開設いたしました。
 このほか、個人情報保護法の全面施行を機に、個人情報保護のさらなる推進のため「個人情報保護推進室」を昨年4月に新設しました。さらに、社会を構成する一員として、経済的側面はもとより、企業倫理や社会貢献などの社会的側面および環境的側面にも配慮した取り組みを推進し、社会の持続的な発展に貢献していく活動をマネジメントする「CSR委員会(※3)」を昨年8月に新設しました。具体的な取り組みとして、NTT東日本グループのCSR活動をまとめた「NTT東日本CSR報告書2005」を発行いたしました。
 また、災害時における取り組みにつきましては、昨年6月に発生した「新潟方面での豪雨」、昨年8月に発生した「宮城方面を中心とした地震」において、通信設備およびサービスの早期復旧に向け全社を挙げて取り組んでまいりました。また、被災地の家族、親戚、知人などの安否等を音声で確認できる連絡手段として「災害用伝言ダイヤル(171)」を運用いたしました。さらに「パキスタン北部地震」被災者への義援金募集に係るダイヤルQ2番組の回収代行手数料の無料化や、「平成18年豪雪」により災害救助法が適用された新潟県および長野県の各市町村において、電話料金等について特別措置を講ずるなど、情報通信事業者として被災者支援の一翼を担ってまいりました。
※2 営業系会社:「(株)NTTサービス○○」、設備系会社:「(株)NTTエムイー○○」、共通系会社:「(株)NTTビジネスアソシエ○○」(○○は「都道県名」、宮城県域の設備系会社のみ「東北」)
※3 CSR:企業の社会的責任 Corporate Social Responsibilityの略

<5>営業成績
 当期の営業収益は2兆1,253億円(前期比2.5%減)、経常利益は842億円(前期比13.7%減)、当期純利益は512億円(前期比11.8%減)となりました。


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