【別紙1】

共同トライアルの概要および、取り組みの背景と目的

 現在、映画業界では、従来のアナログフィルムを用いない「デジタルシネマ」と呼ばれる最先端の技術を活用した上映方式への移行が進展しています。このデジタルシネマの映写及び配給に関する技術仕様を制定するために2002年に7大メジャースタジオ※1によって設立された業界団体であるDCI(Digital Cinema Initiatives)は、4年間の検討期間を経て2005年7月、映画の中心地ハリウッドから世界へ向けて新たなデジタルシネマの技術仕様を発表しました。この技術仕様はDCI仕様と呼ばれ、SMPTE※2において国際標準化の作業が進行中です。今後、世界的にDCI仕様準拠の配給・興行システムによるデジタルシネマが本格的に普及すると予想されています。また、既に日本でも総務省のデジタルシネマプロジェクトにおいて研究開発を進めており、この新しい規格の活用に関する検討が進められています。
 このような背景のもと、DCI仕様策定にあたり、中心メンバとして主要な役割を果してきたWBEI、高品質な大容量コンテンツを高セキュリティに配信する技術を開発してきたNTT、さらに2001年夏に映画「千と千尋の神隠し」(制作:スタジオジブリ、配給:東宝)のデジタルシネマ配信実験の共同実施等で先進的な取り組みを展開してきた東宝とNTT西日本が各社の強みを軸に協力し、高速光ファイバー網を用いて配給から興行までの新たなサービスモデルの確立に向けて、昨年10月よりデジタルシネマ共同トライアルを行ってきました。約半年間のトライアル期間中、「ティム・バートンのコープス ブライド」、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」、「V フォー・ヴェンデッタ」の3作品をデジタル上映し、高品質な画像とオーディオについて、高い評価をいただきました。また、字幕の鮮明さから作品を見ていて疲れない、といった声も聞かれました。
 今回の拡大共同トライアルでもDCI仕様において最高水準となる4K規格(4,096×2,160画素、800万画素クラス)と、その4分の1の画素数を持つ2K規格(2,048×1,080画素、200万画素クラス)の両方での上映を予定おり、特に公開予定の「ダ・ヴィンチ・コード」や「ポセイドン」は、最高水準の4K規格で編集作業が行われているため、制作時の品質(マスター映像と完全同一の最高品質)をそのまま劇場でご鑑賞いただくことができます。
 SPEおよびSPEJとWBEIおよびWEJから配給される作品は、NTT横須賀研究開発センタで検査された後、NTT東日本およびNTT西日本のデータセンタへ配信され、NTT東日本の東京データセンタ内のサーバから「ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋」へ、NTT横須賀研究開発センタ内のサーバから「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」へ、NTT西日本の大阪データセンタ内のサーバから「TOHOシネマズ高槻」へ配信されます。同時に、NTT西日本の大阪データセンタではコンテンツを上映するために必要な暗号鍵が生成され、上記劇場に配信されます。劇場内では、NTTグループが開発した上映装置(SMB: Secure Media Box)および制御装置(TCB: Theater Control Box)とソニーの4KプロジェクターSXRDを用いて作品を上映します。拡大共同トライアルでは、DCI仕様デジタルシネマの配給から興行までのプロセスについて総合的な評価を継続すると共に、上映作品数、配信拠点数(映画館の数)を増やすことによる配給プロセスの負荷検証を実施し、映像品質、運用体制、セキュリティ、ネットワーク配信や劇場運営のコスト等について、映画鑑賞者による評価も交えながら、技術や運用などの観点から幅広く実用性を検証します。

※1 7大メジャースタジオ
ハリウッドのメジャー映画制作スタジオである、Warner Bros. Studios, Walt Disney, 20th Century Fox, Metro-Goldwyn-Mayer, Paramount Pictures, Sony Pictures Entertainment, Universal Studiosを指します。
※2 SMPTE
全米映画テレビジョン技術者協会(Society of Motion Picture and Television Engineers)


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