1. 業績の概況

 当期におけるわが国経済は、デフレ経済が継続するなか、緊張する国際情勢ともあいまって消費、投資とも低調に推移するなど依然として厳しい状況が続きました。
 情報通信分野におきましては、ブロードバンド化の一層の進展に伴い、市場構造は急激に変化しており、地域通信市場では、引き続き固定電話から移動体・IP通信への急速なシフトが続くとともに、ブロードバンド・アクセス分野の普及・拡大に伴い、ADSLにおける低廉な価格での顧客獲得競争、IP電話の拡大、光アクセスサービスにおける電力系事業者の相次ぐ参入等により、事業環境は極めて厳しいものとなりました。
 このような市場構造の変化や厳しい事業環境の下で、当社は、「真のお客さま主導企業」を事業運営の基本とし、お客様への付加価値最大化に向けて、そのニーズに誠実かつスピーディに応えていくとともに、「活力ある企業への変革」に向けたオープンでフラットな事業運営を推進することにより、新たな収益源の開拓と財務基盤の確立に努め、電話から情報流通企業へと事業構造の転換を図るという方針のもと、全社をあげてその実現に取り組んでまいりました。また、あわせて国家的重点課題となっている「e−Japan重点計画」の推進にも積極的に取り組んでまいりました。
 まず、急速に拡大するブロードバンド市場におきましては、お客様ニーズに対応したブロードバンド・アクセスサービスの拡充を図り、現在提供中のフレッツ・アクセスサービス(「フレッツ・ISDN」・「フレッツ・ADSL」・「Bフレッツ」)提供エリアについて順次拡大を図るとともに、「フレッツ・ADSL」の更なる高速化、料金の低廉化に積極的に取り組み、サービスメニューの充実とシェア確保に努めてまいりました。
 また、ブロードバンド・アクセス分野において多様化するお客様のニーズに対応し、お客様の活動圏に合致したネットワーク構築を可能とするため、県間IP通信網サービス提供に関する活用業務の認可を受け、フレッツサービスの広域化を実施し、首都圏エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉エリア)におけるサービス提供を開始しました。
 このほか、ブロードバンド時代のより高度なネットワークサービスを提供するため、Bフレッツを契約しているお客様を対象としたIPv6(次期インターネットプロトコル)サービス実験のほか、ライブ映像や音声等を配信するコンテンツホルダのニーズ増加に伴い、P2P(ピアツーピア)通信技術を活用した新たな低コスト配信システムを構築し、その最初の取り組みとして、株式会社ニッポン放送と提携したブロードバンド向けインターネットラジオ番組を配信する大容量配信システムの検証実験を開始しました。また、マイクロソフト株式会社とのアライアンスにより、IPv6技術を利用したディジタルコンテンツの再生、配信、制作、著作権保護ができる次世代ディジタルプラットフォームであるWM9(Windows MediaTM 9シリーズ)の提供に合わせ、次世代ストリーミング配信実験も開始しました。
 法人向けの営業につきましては、「チーム・マーケティング・ソリューション」というコンセプトのもと、メガデータネッツ、スーパーワイドLAN、メトロイーサ等のビジネスユーザ向け光アクセスサービスおよび最先端のデータセンタ技術等を積極的に活用した先進的かつ効率的な情報流通ネットワークの構築を行うなど、お客様とのチームコラボレーションを通じて、急速に高度化、多様化するお客様ニーズに的確に対応するトータルなソリューションビジネスを展開しました。
 また、ショールーム「E−Frontier」を開設し、電子政府・電子自治体、教育IT化などの公共向けソリューションを中心とした紹介を行うとともに、政府の「e−Japan重点計画」に対応して、電子申請システム、電子入札システム、電子投票システムなどをはじめとする各種ソリューションを積極的に提供していくため、法人営業本部に「e−Japan推進部」ならびに各支店法人営業部に「e−Japan推進室」をそれぞれ設置し、e−Japanビジネスへの営業体制の強化に取り組んでまいりました。
 子会社の設立につきましては、当社が保有する技術・ノウハウの活用と情報流通の促進に向け、ブロードバンド・アクセスラインの多様化に対応するため、無線LAN技術を利用した高速IP通信アクセスサービスを提供する「エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社」を設立したほか、安定した離島への通信サービスを提供するため、電気通信サービスおよび放送サービスを提供する「ジェイサット株式会社」へ衛星資産の譲渡を行うとともに同社の株式を取得しました。
 経営の合理化につきましては、事業環境の急激な変化に対応した経営基盤の確立に向けて電話から情報流通への事業構造の転換を図るため、業務のアウトソーシングや雇用形態・処遇体系の多様化を実施するなど、事業の抜本的な「構造改革」に全社をあげて取り組みました。この結果、当社は、企画戦略・グループマネジメント、お客様サービス提供責任等の機能に特化し、これにあわせ、販売・受付業務等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ サービス〔都道県名〕(※1)」、設備運営業務等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー〔都道県名〕(※1)」、ならびに共通業務等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ〔都道県名〕(※1)」の計51社による「新たな業務運営形態(※2)」へ移行しました。
 また、更なる構造改革の推進に向けて、当社グループ企業の事業ミッションを明確化し、グループ内における業務・ミッションの重複を排除し、IP・ブロードバンド市場におけるグループトータルパワーアップとシナジー効果の最大化を図ることを目的として、「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー」の事業・ミッションを法人向け第2種電気通信事業に特化しました。
 また、構造改革により新たに設立した子会社の自立化、機能充実を図るため、支店営業企画業務および法人営業業務の一部を「株式会社エヌ・ティ・ティ サービス〔都道県名〕(※1)」へ移行するとともに、専用サービスセンタ、技術総合センタ、ネットワーク運営センタなどから設備構築・サービス運営等にかかわるオペレーション業務を「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー〔都道県名〕(※1)」へ移行しました。共通業務についても、法人営業本部などの経理業務を中心に「株式会社エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ〔都道県名〕(※1)」に移行し、効率化を更に進めることとしました。これら「東日本グループフォーメーションの見直し」については、11月に公表し、本年4月の実施に向けて準備を進めてまいりました。
※1  〔都道県名〕:都道県単位に設置した各社共通の名称+都道県名を商号とする17社
※2  新たな業務運営形態の開始に伴い、退職・再雇用等により平成14年5月1日に2.7万人が当社から各アウトソーシング会社(51社)へ移行しました。(このほか、既存子会社からの移行は1.8万人)、平成15年4月に約0.4万人が当社から各アウトソーシング会社に移行しました。(このほか、既存子会社からの移行は、約0.3万人)


 環境保全への取り組みにつきましても、平成11年12月に制定した「NTT東日本地球環境憲章」に基づき、引き続き、紙資源対策、地球温暖化対策、廃棄物対策など、環境負荷軽減を推進するとともに、情報通信のライフサイクルアセスメント(LCA)の実施、環境負荷の低い通信機器への環境ラベル「ダイナミックエコ」の表示、環境会計の本格的導入および「NTT東日本環境報告書2002」の発行など地球環境保護に対する企業責任の遂行に努めてまいりました。


 以上の結果、当期の営業収益は2兆3,522億円(前期比8.6%減)、経常利益は633億円(前期比743.2%増)、当期純利益は30億円(前期は当期純損失1,867億円)となりました。


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