1.当期の業績の概要


 当社は、日本電信電話株式会社の再編成にともない、東日本地域において地域電気通信業務等を営む会社として、平成11年7月1日に設立し、同日より営業を開始しました。
 当期におけるわが国経済は、個人消費の低迷や設備投資の減少基調が続くなど民間需要の回復力が弱く、総じて厳しい状況にありましたが、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響から、景気は緩やかながら改善が見られました。
 情報通信分野においては、これまでの「音声を中心とした情報の伝達」から「ディジタル化された情報の流通」への移行や、移動体通信の急増など、市場構造が大きく変化するとともに、インターネットの普及による市場規模の拡大が続いています。また、GC接続の進展による県内通信市場での競争激化や、ADSL、無線、光ファイバなどの技術を用いてインターネットアクセスサービスを提供する事業者の新規参入に見られるように、地域通信市場においても競争が急速に進展し、地域通信から長距離・国際通信までの全分野において激しい競争が展開されています。
 一方、プライスキャップや長期増分費用方式、優先接続など、制度上の変更が予定されており、これによって新たな値下げ・割引き競争やお客様の囲い込み競争が加速するものと考えられます。
 このような事業環境のなか、当社は、市場の動向を的確に捉え、「安く」、「使い易く」、「信頼のある」魅力的なサービスをタイムリーに提供することを事業運営の基本とし、電話から情報流通への事業転換を図ることによって新たな収益源を開拓するため、さまざまな取り組みを実施しました。
 まず、急速な普及拡大が続くインターネットニーズに対応して、INSネット64などISDN回線の販売を強力に推進するとともに、より低廉な料金で利用したいとのお客様ニーズに応えるため、毎月一定料金をお支払いいただくことによりお客様にあらかじめお選びいただいた同一区域内の1電話番号への通信が一定額までご利用いただけるインターネット向け料金割引サービス「i・アイプラン」の販売を開始しました。さらに、INSネットサービスをご利用のお客様を対象とした完全定額制のインターネット接続サービス「IP接続サービス」を昨年11月より試験サービスとして提供しましたが、お客様のご利用状況を踏まえ、本年5月より月額利用料を8,000円から4,500円に引き下げるとともに、サービスの対象となる地域を拡大して提供することとしました。また、昨年12月より、ADSL技術を利用した定額制インターネットアクセスサービス「ADSL接続サービス」を試験サービスとして提供開始し、高速かつ低廉なアクセスサービスに対する多様なニーズにお応えするための取り組みを推進しました。
 次に、法人向けの営業につきましては、お客様とのチーム・コラボレーションを通してお客様の経営をサポートする取り組みを積極的に展開しました。具体的には、「チーム・マーケティング・ソリューション」ブランドのもと、グループ各社とも十分な連携を図りつつ、システムの設計・構築から保守・運用のアウトソーシングに至るまでのトータルなソリューションビジネスを展開することによって営業力の強化に努めました。
 お客様サービスの向上につきましては、各種サービスなどのご注文・お問い合せを電話で承っている「116」の土曜・日曜・祝日営業を昨年7月より開始し、ライフスタイルの多様化にともなうお客様のご要望に応えました。
 また、放送のディジタル化にともない、放送と通信が融合した新しい情報流通市場が創出されると見込まれておりますが、当社としても、他企業との協力体制の構築を含め、新たな収益源を開拓するための準備を積極的に進めました。まず、東経110度に打ち上げ予定のCS(通信衛星)によるディジタル衛星放送事業について、加入者受付、課金、請求など顧客管理業務の事業性を検討するための企画会社「エスエヌ企画株式会社」を昨年12月に日本デジタル放送サービス株式会社と共同で設立しました。さらに、視聴者の特定に係るシステムの管理・運営業務を受託する「株式会社エヌ・ティ・ティメディアクロス」を3月に設立し、新たな情報流通市場に進出する足がかりとしました。
 経営の合理化につきましては、事業環境の急激な変化に対応できる経営基盤を確立するとともに、NTTグループが「グローバル情報流通グループ」への事業転換を目指すなかで当社がグループの中核企業としての役割を果たすため、平成12年度から14年度の3年間における「中期経営改善施策」を昨年11月に発表し、その達成に向けた全社的取り組みを進めました。このうち、人員削減については、営業拠点の統廃合や本社・間接部門のスリム化による効率化の推進、グループ各社への人員再配置、新規採用の見合わせなどを実施することとし、平成14年度末までに約1万人の人員を削減する計画としました。また、設備投資の削減についても、機器などの購入価格の低廉化、工事設計・発注の効率化など一層のコストリダクションを推進するとともに、需要動向を踏まえた設備高度化投資を推進することにより、平成12年度から14年度の3年間で約4,500億円の削減を行うこととしました。
 一方、いわゆる「コンピュータ西暦2000年問題」につきましては、社内に「2000年問題委員会」を設置し、各種のシステム・装置に対する必要な措置を講ずるとともに、危機管理計画を策定することによって問題の発生に速やかに対応できる体制を確立しました。この結果、電気通信サービスに影響を及ぼすような問題は発生せず、安定したサービスの提供を行うことができました。
 また、21世紀の豊かで安心できる暮らしを実現するため、地球環境保護活動を積極的に展開しました。昨年12月、「NTT東日本地球環境憲章」を制定し、具体的な取り組みとして、紙資源節約、地球温暖化防止、廃棄物削減などを推進するとともに、地球環境保護活動の交流の場として「エコロジー・コミュニティ・プラザ」を設置し、地球環境保護に対する企業責任の遂行と地域社会への積極的貢献に努めました。
 お客様情報の漏洩事件につきましては、各種個人情報を扱う電気通信事業者として社会から厳しく指弾されるなど、当社の事業運営に深刻な影響を及ぼす重大な問題であると認識しており、当社としては、再発防止策の継続的な実施によるお客様情報管理の徹底を図り、お客様の信頼回復に全力で取り組んでいく所存です。
 以上の結果、当期の営業収益は2兆1,547億円、経常利益は567億円となりました。
 なお、特別損失として、退職給与引当金3,250億円を計上したことなどにより、1,572億円の当期損失となりました。


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