平成12年5月9日
報道発表資料
東映アニメーション株式会社
東日本電信電話株式会社
株式会社セルシス


ワイドLANサービス等を利用してアニメ製作をサポートする
「東映アニメ製作ネットワークシステム」の運用開始について


 東映アニメーション株式会社(以下 東映アニメ、本社:東京都練馬区、代表取締役社長:泊 懋(とまり つとむ))、東日本電信電話株式会社(以下 NTT東日本、本社:東京都新宿区、代表取締役社長:井上 秀一)、株式会社セルシス(以下 セルシス、本社:東京都渋谷区、代表取締役:川上 陽介)の3社は、東映アニメと取引先の各アニメプロダクションをつないでアニメ製作をサポートする『東映アニメ製作ネットワークシステム』(略称:PRONET[プロツーネット])を5月15日(月)から運用開始します。
 これにより、東映アニメの製作工程*1の効率化、及び一元的な工程管理が可能となり、現在よりも短期間で低コストかつ質の高いアニメを製作することができます。
 またこれは、NTT東日本が提供する「ワイドLANサービス」を利用した初のケースとなります。


1.背 景
 アニメ業界は、国内におけるテレビ放送の多チャンネル化、海外における日本のアニメの大ブームにより需要が増大しています。
 一方、アニメ製作においては、製作スタッフの高齢化による人件費の高騰や数十社にのぼる外注先との分業制のため、車や宅配便を利用した彩色データ*2の回収にかかる時間とコストが年々増加傾向にあります。さらに、製作途中において彩色データの修正作業が恒常的に発生するため、作業の遅れや回収回数の増加及び工程管理が煩雑といった課題を抱えています。
 こうした中、東映アニメは、従来から財団法人マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)、情報処理振興事業協会(IPA)を通じて、国から補助を受けてアニメ製作のデジタル化に取り組んできました。
 また、昨年5月から東映アニメ、NTT東日本、セルシスの3社により、製作工程の効率化を図るためのデジタル化、ネットワーク化、及び一元的な工程管理を図るためのシステム化を検討してきました。


2.PRONETの概要
(1)入力機器・ソフト
 アニメの製作のうち、主に協業体制により作業がすすめられるのは <1>原画作成→<2>動画作成(→<3>背景画作成)→<4>彩色(仕上げ)→<5>撮影の工程です。
 <1>、<2>は手作業で行い、<3>は入力機器としてスキャナーを使用しパソコンにデータを取り込むことによりデジタル化を図り、<4>、<5>では、データ加工ソフトに日本のアニメ製作ツールのデファクトスタンダードである『RETAS! PRO』シリーズ*3を使用しパソコン上でそれぞれの処理を行うことにより合成された画像を作成します。

(2) ネットワーク
 アニメ製作関連企業のほとんどは、東京の西部地域に集中しているSOHO企業で、製作工程ごとに特化した分業体制を形成していることから、物流コストの削減と彩色データの回収時間を短縮するために、光ファイバを用いた「ワイドLANサービス」等の高速通信サービスで関連企業間をネットワーク化します。
 デジタル化されたアニメデータは、画像情報量が大容量になるため、高速通信サービスが必須であること、アニメ関連企業が特定地域に集中しているという地理的条件や高セキュリティの確保、回線コスト等を考慮し、「ワイドLANサービス」等を利用したネットワークを構築します。
 これにより、東映アニメと各アニメプロダクションがあたかもひとつのLANでつながっているかのような利用形態を実現します。

(3) システム
 アニメ製作の一元的な工程管理を行うため、NTT東日本が、製作工程と連動したコラボレーションマネジメントシステム(CMS)を開発しました。
 CMSは、<1>ワークフロー管理、<2>ファイル管理、<3>受発注管理の3つで構成し、これにより、リアルタイムな製作工程の進捗状況の把握と一元的な工程管理が容易に行えます。
 また、恒常的に発生する修正作業も一元的に把握することができるため、彩色データの欠落等を回避することが容易になります。


3.「PRONET」導入メリット
 アニメ製作工程における彩色データの回収にかかる時間とコストを大幅に短縮できるため、アニメクリエータ側では作品製作にかかる時間の「ゆとり」が生まれ、経営者側では作品製作にかけるコストの「ゆとり」が増大します。
 これにより、各アニメプロダクションは、新しい製作に対し果敢な取り組みを実施することができ、より一層作品の質の向上が期待できるとともに、更に新しい映像表現も創出できると考えています。


4.各社の分担
(1)東映アニメ   <1> 取引先企業を巻き込んだネットワーク化への先導的な牽引
<2> ネットワークとシステムの導入による社内物流管理体制の確立
(2)NTT東日本   <1> 「ワイドLANサービス」等の高速ネットワークを利用したネットワーク構築及び保守
<2> サプライチェーンマネジメントを含む高度なコラボレーションを実現するシステムの開発および保守
(3)セルシス   <1> アニメ製作デジタル化ソフト『RETAS! PRO』シリーズの提供
<2> 『RETAS! PRO』シリーズと連携したアニメ画像ファイル管理ソフトの開発


5.今後の予定
(1)PRONETの拡大
 PRONETの接続拠点数は、5月の運用開始時は10拠点ですが、10月からは23拠点に増やし、残りの企業のネットワーク化、システム化を図ります。これにより、全ての関連企業間の製作工程および工程管理を本システムで対応できるようにするとともに、システムのバージョンアップ等を図っていく予定です。

(2)「アニメヒルズ」の推進
 東映アニメ、NTT東日本、セルシスの3社は、今後、他のアニメ製作プロダクションや関連業者との連携を強化し、世界にはばたく日本のアニメーション製作拠点である「アニメヒルズ」の形成を目指します。

(3)アニメコンテンツ配信ビジネスの推進
 東映アニメとNTT東日本は、昨年5月から「アニメコンテンツに関わる情報流通ビジネス」について検討を重ねてきましたが、今回のPRONETの運用開始を契機に、今後、「インターネットを利用した一般消費者向けアニメ配信ビジネス」の早期実現に向け検討を進めていきます。それに伴い、NTT東日本は東映アニメが実施する第三者割当増資を受け、NTTグループのコンテンツ配信プラットフォームを利用した「アニメコンテンツ配信ビジネス」を積極的に進めていきます。



*1: 製作工程
<1>原画作成 1カットごとの基本画であるレイアウトの指示に従い、動きの決め手となる線画を作る。
<2>動画作成 原画をタイムシートに従って細かい動きの線画に書き起こしていく。
<3>背景画作成 アニメーション中の背景画を作成する工程であり、1カットずつ描く。ここで描いたものを、スキャナーで読み込みパソコンに取り込む。
<4>彩色(仕上げ) 色を塗る。
<5>撮影 背景とキャラクターを合成し撮影する。

*2:

彩色データ
アニメ製作工程における一工程に彩色工程がありますが、この工程で使用される画像データのことを彩色データいい、アニメキャラクタ等の動きのある部分であるコマ画に着色を行った状態にあるデータです。

*3:

「RETAS!PRO」シリーズ
セルシスが開発したデジタルアニメーション制作支援ツールであり、従来、セルとフイルムを使用して行われていたアニメーション制作を、パソコン上で作成可能にします。



別紙 東映アニメ製作ネットワークシステムの概要


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