平成12年3月31日
報道発表資料
株式会社東京放送
NTTコミュニケーションズ株式会社
東日本電信電話株式会社
NTTエレクトロニクス株式会社


TBSとNTTグループがHDTVライブ映像伝送の共同実験
「HD-WAVE2000」を実施

──「NAB2000」会場と東京を結び、HDTV映像の双方向多重化伝送と
遠隔制御の実験を行います──


 株式会社東京放送(以下TBS、東京都港区、代表取締役社長:砂原幸雄)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com、東京都千代田区、代表取締役社長:鈴木正誠)、東日本電信電話株式会社(以下NTT東日本、東京都新宿区、代表取締役社長:井上秀一)、NTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL、東京都渋谷区、代表取締役社長:伊澤達夫)の4社は、本年4月10日(月)〜13日(木)の4日間(米国現地時間)、ラスベガス・コンベンション・センター(米国ラスベガス)にて開催される「NAB2000(全米放送事業者協会大会)(*1)」会場において、国際間でのHDTV映像の双方向多重化伝送と遠隔制御実験「HD-WAVE2000」を実施します。

 本実験は、世界に先駆けHDTV番組制作の基礎となる光回線による双方向国際デジタル中継・制御システムの技術検証を行うもので、太平洋をまたぐ初めてのHDTVライブ映像伝送実験です。

 期間中は、展示会場内(ラスベガス)と映像発信地点(東京:赤坂TBS放送センタ−)との間を、ATMサービス(*2)により結び、MPEG-2圧縮したHDTV映像の双方向多重化伝送と、東京に設置した無人HDTVカメラとHD-VTRをラスベガスから遠隔制御する実験を行います。


1.目的

 放送制作のグローバル化が進む現在、高品質なHDTV映像コンテンツを技術的な制約や混乱なく制作し、確実に視聴者のもとにお届けしていくために、HDTV映像に最適化したデジタル放送技術や機器の開発、通信事業者による高品質、大容量のデジタルHDTV映像コンテンツ中継配信用の国際間インフラの開発、整備等が急務となっています。

 TBSとNTTグループは、昨年11月に「InterBEE '99(国際放送機器展)」において横須賀〜幕張間でのHDTV映像伝送実験を行い、ATMサービスの映像伝送への適合性を確認しましたが、今回の実験では、TBS、NTT Com、NTT東日本、NEL4社が、各々の事業分野で培った技術とノウハウを集結させ、日米間15,000kmにおよぶ長距離国際伝送において、遅延が映像伝送に及ぼす影響等、HDTV映像の長距離伝送技術の総合的な実用検証を行うことを目的としています。


2.実施内容

「NAB2000」の会場であるラスベガス・コンベンション・センター(米国)と東京赤坂にあるTBS放送センターをATMサービスで結び、NTTサイバースペース研究所が開発した世界最小、最軽量ポータブルHDTVエンコーダ(*3)を使用してHDTV映像を会場内の複数モニターに実況中継し、併せてラスベガスに置いた制御端末より無人HDTVカメラとHD-VTRを遠隔制御します。

 具体的には、「Arcstarグローバル ATMサービス」(国際)と「ATMメガリンクサービス」(国内)によるシームレスな「双方向多重化伝送実験」、「海外からの無人HDTVカメラ・HD-VTRの遠隔制御実験」「ATM-ETHER変換実験」を、実際の番組放送と同様の中継スタイルを通じて実施します。

 なお、本実験における各社の作業分担は、TBSがHDTV番組制作およびVTRインテリジェント・コントロール・システム(*4)の開発及びオペレーションを、NTT ComとNTT東日本がATMサービスによるHDTV映像の多重化伝送技術の評価及びキャリア間接続の技術評価を、NELがポータブルHDTVエンコーダの各種中継システムとの接続性の実証を、それぞれ担当します。


3.実験の技術的ポイント

(1) ATMサービスを利用したデジタルワンリンクHDTV映像の双方向多重化伝送
 本実験のインフラ面での基盤となるものが、高速・広帯域なNTTグループのATMサービスです。TBS放送センターで撮影された複数の映像をMPEG-2ポータブルHDTVエンコーダによりそれぞれデジタル化し、ATMセル化を経て多重化を行ってラスベガスへ伝送します。また、従来の国際映像伝送では、キャリア間でアナログ〜デジタル変換を繰り返す必要がありましたが、今回はデジタルワンリンク(*5)での伝送実験を行います。

(2)海外からの無人HDTVカメラ・HD-VTRの遠隔制御
 今回、TBSが開発したVTRインテリジェント・コントロール・システムの制御信号をATM-CLAD装置(*6)を用いて1本のATM回線に多重化して伝送し、TBS放送センターに設置した無人HDTVカメラとHD-VTRをラスベガスから遠隔制御する実験を行います。

(3)ATM-ETHER変換装置
 伝送されたATMのセル・データをIP系のETHER-NETに変換し、「NAB2000」の会場内で、NTSC (SD)の信号と多重化し、伝送モニター実験を行います。


4.今後の予定

「NAB2000」での実験後も、映像伝送における接続性の確立を図るべく、引き続きフィールド実験を行っていきます。




<用語解説>

*1: NAB (The National Association of Broadcasters)
全米放送事業者協会大会。世界最大の放送機材関連展示会。もともと、放送事業者の集会だったものが、メーカの展示会の併設の時期を経て、現在の展示会のスタイルが生まれる。
主な出展者は放送機器メーカ、プロ用音響機器メーカなど。

*2:

ATMサービス
従来の伝送方式(同期式)とは異なるATM伝送方式(非同期式)を採用したNTTグループの通信サービス。音声、映像などのさまざまな情報を「セル」と呼ばれる53Byteのブロックに分割して転送することにより、高速・広帯域の通信ニーズに対応することが可能。

*3:

HDTVエンコーダ
NTTが開発したMPEG-2ビデオエンコーダ用LSI「Super ENC」を9個並列連結したもので、世界最小サイズ(従来体積比約1/2〜1/4)を実現している。また、マルチチップ間での符号量配分の最適化により、高画質・高圧縮効率・低遅延のエンコードを実現している。

*4:

VTRインテリジェント・コントロール・システム
VTRのリモート制御プロトコルは、短距離の伝送を基本に設計されているため、LANやネットワークを用いることが困難である。本システムでは独自の制御方式を新たに開発することで伝送エラーや遅延に対する耐性を高め、長距離伝送においてもリモート制御が可能。

*5:

デジタルワンリンク
通信回線の起点から終点までの間、デジタル信号の状態で伝送する方式。アナログ変換が介在しないために信号の劣化が少なく、高品質の映像伝送に適している。

*6:

ATM-CLAD装置
各種信号をATM回線で伝送するためのインタフェース装置。今回の実験では、IPベースの制御信号及びMPEG-2圧縮したHDTV映像をATM伝送するために使用。


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