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外科 後期研修プログラム

一般目標(GIO)(General Instructive Objective)

外科医として信頼されうる医療を提供するために必要かつ基本的な知識・技能・態度を身につけ、外科専門医を取得することが、第一の目標である。さらに、消化器外科専門医など、より専門性の高い資格を認定すべく、手術を中心とした一般外科消化器外科全般の基礎修練をおこなう。

行動目標(SBOs)(Specific Behavioral Objective)

外科学会専門医修練カリキュラムに提唱される以下の到達目標1〜到達目標5を行動目標とし、『各年度で指導される具体的手術手技内容』を別に定める。


1)到達目標1:外科診療に必要な下記の基礎的知識を習熟し,臨床応用できる。

  1. 局所解剖:手術をはじめとする外科診療上で必要な局所解剖について述べることができる。
  2. 病理学:外科病理学の基礎を理解している。
  3. 腫瘍学
    ①発癌,転移形成およびTNM 分類について述べることができる。
    ②手術,化学療法および放射線療法の適応を述べることができる。
    ③抗癌剤と放射線療法の合併症について理解している。
  4. 病態生理
    ①周術期管理などに必要な病態生理を理解している。
    ②手術侵襲の大きさと手術のリスクを判断することができる。
  5. 輸液・輸血:周術期・外傷患者に対する輸液・輸血について述べることができる。
  6. 血液凝固と線溶現象
    ①出血傾向を鑑別できる。
    ②血栓症の予防,診断および治療の方法について述べることができる。
  7. 栄養・代謝学
    ①病態や疾患に応じた必要熱量を計算し,適切な経腸,経静脈栄養剤の投与,管理について述べることができる。
    ②外傷,手術などの侵襲に対する生体反応と代謝の変化を理解できる。
  8. 感染症
    ①臓器特有,あるいは疾病特有の細菌の知識を持ち,抗生物質を適切に選択することができる。
    ②術後発熱の鑑別診断ができる。
    ③抗生物質による有害事象(合併症)を理解できる。
    ④破傷風トキソイドと破傷風免疫ヒトグロブリンの適応を述べることができる。
  9. 免疫学
    ①アナフィラキシーショックを理解できる。
    ②GVHD の予防,診断および治療方法について述べることができる。
    ③組織適合と拒絶反応について述べることができる。
  10. 創傷治癒:創傷治癒の基本を述べることができる。
  11. 周術期の管理:病態別の検査計画,治療計画を立てることができる。
  12. 麻酔科学
    ①局所・浸潤麻酔の原理と局所麻酔薬の極量を述べることができる。
    ②脊椎麻酔の原理を述べることができる。
    ③気管挿管による全身麻酔の原理を述べることができる。
    ④硬膜外麻酔の原理を述べることができる。
  13. 集中治療
    ①集中治療について述べることができる。
    ②レスピレータの基本的な管理について述べることができる。
    ③DIC とMOF を理解できる。
  14. 救命・救急医療
    ①蘇生術について述べることができる。
    ②ショックを理解できる。
    ③重度外傷を理解できる。
    ④重度熱傷を理解できる。

2)到達目標2:外科診療に必要な検査・処置・麻酔手技に習熟し,それらの臨床応用ができる。

  1. 下記の検査手技ができる。
    ①超音波診断:自身で実施し,病態を診断できる。
    ②エックス線単純撮影,CT,MRI:適応を決定し,読影することができる。
    ③上・下部消化管造影,血管造影等:適応を決定し,読影することができる。
    ④内視鏡検査:上・下部消化管内視鏡検査,気管支内視鏡検査,術中胆道鏡検査,ERCP 等の必要性を 判断することができる。
    ⑤心臓カテーテルおよびシネアンギオグラフィー:必要性を判断することができる。
    ⑥食道内圧検査,食道24時間pH モニター検査,直腸内圧検査,デフェコグラムなどの消化管機能検査: 適応を決定し,結果を解釈できる。
    ⑦呼吸機能検査の適応を決定し,結果を解釈できる。
  2. 周術期管理ができる。
    ①術後疼痛管理の重要性を理解し,これを行うことができる。
    ②周術期の補正輸液と維持療法を行うことができる。
    ③輸血量を決定し,成分輸血を指示できる。
    ④出血傾向に対処できる。
    ⑤血栓症の治療について述べることができる。
    ⑥経腸栄養の投与と管理ができる。
    ⑦抗菌性抗生物質の適正な使用ができる。
    ⑧抗菌性抗生物質の有害事象に対処できる。
    ⑨デブリードマン,切開およびドレナージを適切にできる。
  3. 次の麻酔手技を安全に行うことができる。
    ①局所・浸潤麻酔
    ②脊椎麻酔
    ③硬膜外麻酔
    ④気管挿管による全身麻酔
  4. 外傷の診断・治療ができる。
    ①すべての専門領域の外傷の初期治療ができる。
    ②多発外傷における治療の優先度を判断し,トリアージを行うことができる。
    ③緊急手術の適応を判断し,それに対処することができる。
  5. 以下の手技を含む外科的クリティカルケアができる。
    ①心肺蘇生法―ALS(気管挿管,直流除細動を含む)
    ②動脈穿刺
    ③中心静脈カテーテルおよびSwan-Ganz カテーテルの挿入とそれによる循環管理
    ④レスピレータによる呼吸管理
    ⑤熱傷初期輸液療法
    ⑥気管切開,輪状甲状軟骨切開
    ⑦心嚢穿刺
    ⑧胸腔ドレナージ
    ⑨ショックの診断と原因別治療(輸液,輸血,成分輸血,薬物療法を含む)
    ⑩DIC,SIRS,CARS,MOF の診断と治療
    ⑪抗癌剤と放射線療法の有害事象に対処することができる。
  6. 外科系サブスペシャルティの分野の初期治療ができ,かつ,専門医への転送の必要性を判断することができる。

3)到達目標3:一定レベルの手術を適切に実施できる能力を修得し,その臨床応用ができる.


一般外科に包含される下記領域の手術を実施することができる.括弧内の数字は術者または助手として経験する各領域の手術手技の最低症例数を示す。

  1. 消化管および腹部内臓(300例)
  2. 乳腺(20例)
  3. 呼吸器(10例)
  4. 心臓・大血管(10例)
  5. 末梢血管(頭蓋内血管を除く)(10例)
  6. 頭頸部・体表・内分泌外科(皮膚,軟部組織,顔面,唾液腺,甲状腺,上皮小体,性腺,副腎など)(10例)
  7. 小児外科(10例)
  8. 外傷(多発外傷を含む)(10例)
  9. 上記@〜Gの各分野における内視鏡手術(腹腔鏡・胸腔鏡を含む)(100例)

注1 (1)術者となるときは,指導責任者のもとに執刀する。
注2 (1)修練期間中に術者または助手として,手術手技を350例以上経験する。

(2)前記の領域別分野の最低症例数を,術者または助手として経験する。
(3)前記の領域別分野にかかわらず,術者としての経験が120例以上であること。


4)到達目標4:外科診療を行う上で,医の倫理に基づいた適切な態度と習慣を身に付ける。

  1. 指導医とともにon the job training に参加することにより,協調による外科グループ診療を行うことができる。
  2. コメディカルスタッフと協調・協力してチーム医療を実践することができる。
  3. 外科診療における適切なインフォームド・コンセントを得ることができる。
  4. ターミナルケアを適切に行うことができる。
  5. 研修医や学生などに,外科診療の指導をすることができる。
  6. 確実な知識と不確実なものを明確に識別し,知識が不確実なときや判断に迷うときには,指導医や文献などの教育資源を活用することができる。

5)到達目標5:外科学の進歩に合わせた生涯学習を行う方略の基本を習得し実行できる。

  1. カンファレンス,その他の学術集会に出席し,積極的に討論に参加することができる。
  2. 専門の学術出版物や研究発表に接し,批判的吟味をすることができる。
  3. 学術集会や学術出版物に,症例報告や臨床研究の結果を発表することができる。
  4. 学術研究の目的で,または症例の直面している問題解決のため,資料の収集や文献検索を独力で行うことができる。

『各年度で指導される具体的手術手技内容(Bは症例の難易度、各人の到達程度による)』

1年次
A(術者まで可能) 胃瘻・腸瘻造設、虫垂切除(開腹・腹腔鏡)、ヘルニア根治術、気管切開、小腸吻合、胃空腸吻合、胆摘(開腹・腹腔鏡)、消化管潰瘍穿孔、内痔核、痔瘻根治術、直腸脱の手術、人工肛門閉鎖術(腸管吻合)、人工肛門造設術、イレウス管挿入
B(第一助手もしくは術者) 甲状腺手術、乳癌手術、幽門側胃切除術、総胆管切開Tチューブ、S状結腸切除術、回盲部切除術、右(半)結腸切除術、高位前方切除術、イレウス手術
C(第一助手まで) 食道癌頚・腹部、胃全摘術、噴門側胃切除術、腹腔鏡補助下胃切除、肝切除、膵頭十二指腸切除、腹腔鏡補助下結腸切除、直腸癌手術
2年次
A(術者まで可能) 甲状腺手術、乳癌手術、幽門側胃切除術、総胆管切開Tチューブ、S状結腸切除術、回盲部切除術、右(半)結腸切除術、高位前方切除術
B(第一助手もしくは術者) 食道癌腹部、胃全摘術、噴門側胃切除術、肝部分切除、横行結腸切除術、左半結腸切除術、低位前方切除術、イレウス手術
C(第一助手まで) 食道癌胸部、腹腔鏡補助下胃切除、肝区域切除、膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、脾摘(開腹・腹腔鏡)、腹会陰式直腸切断術
3年次
A(術者まで可能) 食道癌腹部、胃全摘術、肝部分切除、横行結腸切除術、低位前方切除術
B(第一助手もしくは術者) 食道癌胸部、脾摘(腹腔鏡)、噴門側胃切除術、腹腔鏡補助下胃切除、膵頭十二指腸切除(再建を除く)、膵体尾部切除、肝区域切除、左半結腸切除術、腹腔鏡補助下結腸切除、潰瘍性大腸炎手術(大腸全摘出)、腹会陰式直腸切断術、イレウス手術
C(第一助手まで) 膵頭十二指腸切除(再建)、骨盤内臓全摘術

方略(LS)(Learning Strategies)

  1. 指導医・上級医および下級医(初期臨床研修医)と共に、チーム内入院患者(担当患者)全員を朝夕回診し検討を行い、病状をすべて把握し、下級医を指導しつつ毎日のカルテ記載および入院患者管理を行う。
  2. 手術予定患者の術前サマリーを作成し(あるいは下級医を指導作成し)、各症例の問題点を明らかにして治療方針を立て、術前症例検討会でプレゼンテーションを行う(あるいは下級医のプレゼンテーションを指導する)。
  3. 担当患者の手術に、術者または第一助手または第二助手として参加する。切除標本がある手術の場合には、術後に標本整理を行い、その結果を手術記録に整備記録する。また、術者の場合には、手術当日に手術記録を完成させ、術後症例検討会でプレゼンテーションを行う。
  4. 担当患者の退院後は、速やかにカルテを整理し、退院後の初回外来受診時までに退院サマリーを完成する(あるいは下級医を指導して完成する)。
  5. 外来患者を主治医として担当し、問題点は指導医・上級医と相談しつつ、継続的に診療する。
  6. 木曜午前に、手術または外来の予定がない場合には、上部消化管内視鏡検査外科枠に参加し、上部消化管内視鏡検査を行う。
  7. 重症あるいは手術適応(疑い)の緊急入院患者の担当になった場合には、指導医・上級医と相談しつつ、第一優先で緊急対応を行う。
  8. 担当患者の夜間休日の急変にも常時対応できる心構えで生活する。
  9. 外科当直の場合には、原則すべての外科入院患者を把握する。
  10. 外科オンコールの場合には、QQセンターからの要請に、必要時には指導医・上級医と相談しつつ、迅速に対応する.
  11. 学会・研究会などで発表を行い,論文を作成する。
  12. 外科学会や関連学会が主催する教育講演などに参加して学習する。
  13. 外科カンファランス・週間予定
    月曜・金曜は8時から、水曜・木曜は8時15分から外科医師全員で検討会(7F病棟)
    緊急入院・緊急手術症例、発熱者、夜間の急変、重症者などを中心に入院患者の検討
    月曜 8時30分― 院内クリニカルボード(4Fカンファランスルーム)
    月曜 17時30分― 術後症例検討会・抄読会(7F病棟)
      *第1月曜 18時― SSI症例検討会 火曜 14時― 部長回診(7F病棟)
    火曜 18時― 術前症例検討会、消化器内科合同検討会(7F病棟)
    水曜 8時40分― 切除標本病理切り出し(2F病理)
    *第2水曜 18時― 病理消化器カンファランス(2F病理カンファランス室)
    金曜 8時15分― 術中迅速診断予定症例の術前検討会(2F病理カンファランス室)
      *第4金曜 17時― death conference(4Fカンファランスルーム)

評価(EV)(Evaluation)

  1. 記SBOを基本に評価
    評価者:自己ならびに指導医・部長
    評価時期:毎年度終了時
    評価方法:自己記録ならびに部長の面談(後期研修医の希望)
  2. 指導者アンケート
    評価者:指導医・病棟師長
    評価時期:毎年度終了時
    評価方法:アンケート方式