関東病院


診療実績

診療実績

外科は年間約1400件以上の手術を行っています。2000年12月の新病院オープンを契機に手術数は増加しています。(図5)

以下、おもな疾患別に手術治療についてご紹介します。

図5:外科手術件数の推移図5:外科手術件数の推移

乳癌

乳腺専門外来では、不安を抱えて来院される患者さんのために、初診日にマンモグラフィー、超音波検査を行なうとともに,必要な症例では吸引細胞診まで行って、迅速な診断ができるように心がけています。乳癌の治療では有効な治療手段である手術治療、放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法を、世界的なガイドラインに従って、最もよい成績が期待できるように組み合わせて治療しています。乳頭、乳輪を温存し、乳腺の一部のみを切除する乳房温存療法の症例数も徐々に増加しています(図6)。また患者さんの御希望に応じて、人工乳房や腹直筋皮弁を利用する乳房再建術を行っています(図7)。腹直筋皮弁を利用する乳房再建術では顕微鏡を使用してマイクロ血管吻合を行うこともあります。

当院での乳癌の治療成績を、進行度別(図8)、リンパ節転移の程度別(図9)に示します。進行度(Stage)は、腫瘍径(T)、リンパ節転移の程度(N)、遠隔転移の有無(M)により、1、2A、2B、3A、3B、3C, 4の7段階に分類されます。Stage 1は早期乳癌に相当します。腫瘍径(T)は、腫瘍の大きさと胸壁や 皮膚への浸潤の有無により、Tis、T0、T1、T2、T3、T4の6段階に分類されます。リンパ節転移の程度(N)は、リンパ節転移の部位と固定の有無により、N0、N1、N2、N3の4段階に分類されます。

ホルモン感受性のある乳癌はホルモン感受性のない乳癌よりも生存率の高いことが示されています(図10)。現在までの治療成績ではHer-2陰性の乳癌はHer-2陽性の乳癌よりも生存率は高いですが、ハーセプチンを積極的に使用するようになっていますので、今後この結果は変わっていく可能性があります(図11、12)。悪性度と近い意味合いを持つ異型度別にみると、異型度が低いほうが、生存率が高いことが示されました(図13)

図6:乳癌手術症例数 −乳房切除術と乳房温存療法−図6:乳癌手術症例数 −乳房切除術と乳房温存療法−

図7:術後写真図7:術後写真

図8:乳癌患者の生存曲線 -進行度(Stage)別-図8:乳癌患者の生存曲線 -進行度(Stage)別-

図9:乳癌患者の生存曲線 −リンパ節転移度(N)別−図9:乳癌患者の生存曲線 −リンパ節転移度(N)別−

図10:乳癌患者の生存曲線 -ホルモン感受性別-図10:乳癌患者の生存曲線 -ホルモン感受性別-

図11:乳癌患者の生存曲線 -Her-2の陽性陰性別-図11:乳癌患者の生存曲線 -Her-2の陽性陰性別-

図12:乳癌患者の生存曲線 -Her-2の陽性例に対する トラスツマブ投与の有無別-図12:乳癌患者の生存曲線 -Her-2の陽性例に対する トラスツマブ投与の有無別-

図13:乳癌患者の生存曲線 -異型度(Grade)別-図13:乳癌患者の生存曲線 -異型度(Grade)別-

図14:乳癌患者の生存曲線 -サブタイプ別-図14:乳癌患者の生存曲線 -サブタイプ別-

食道外科

図14:胸腔内器械吻合の術中写真 図14:胸腔内器械吻合の術中写真

食道癌は悪性度も高く、手術も開腹操作と開胸操作が必要で、患者さんにとっては大変負担の大きな手術です。当科での手術方法は従来の食道癌手術と異なり、開腹操作を先行して胸腔内で器械で吻合する新しい術式(開腹先行・右開胸での胸腔内器械吻合の切除再建一期手術)を開発しました(図14 胸腔内器械吻合の術中写真)。この術式では合併症も少なく、術後15日前後で退院する患者さんが多くなっています(図15 食道癌の術後在院期間)。手術後の長期成績もStage I、II、IIIまでの進行度では良好な成績です(図16 食道癌の切除後の生存率)。入院も早くできますので、手術までの期間も短く、短期間で病気から快復を望めます。また放射線科と協力し、抗癌剤治療と放射線治療を組み合わせた新しい化学放射線療法を行い、癌が完全に消失する患者さんも経験し、良好な成績をあげています。小さな早期食道癌に対しては,消化器内科と協力して内視鏡的粘膜切除術での内視鏡的な治療を積極的に行っています。また咽頭癌、喉頭癌など頭頚部癌に対し、耳鼻科・口腔外科とタイアップして手術を行っています。声帯を切除する大きな手術となることも多いのですが、2002年の3例からスタートして、2003年には8例、2004年には8月までに10例の手術を行い、いずれも順調に経過しています。

図15:食道癌手術のクリニカルパス(15日)の術後在院日数2001.1〜2005.8(全食道癌切除症例;105例)
クリニカルパス症例;43例(2領域郭清;14例,3領域郭清;29例)
平均在院日数;15.0日

図15:食道癌手術のクリニカルパス(15日)の術後在院日数

図16:食道癌切除例の生存率図16:食道癌切除例の生存率

食道癌手術

食道外科では食道癌に対する内視鏡外科手術(低侵襲外科手術)を積極的に行っており、基本的に全例を適応にしております。内視鏡外科手術により小さな傷で切除が可能になります。
食道癌における内視鏡手術とは胸腔鏡で食道癌を切除し腹腔鏡で再建を行うことです。低侵襲外科手術は、胸壁と腹壁の破壊が少ないため痛みが少なく、術後の回復が早いため手術翌日からの歩行が可能となります。

腹腔鏡の創 開腹の創

胸腔鏡の創 開胸の創

再建手術

また、他病院などで食道癌手術を行い、術後縫合不全や再建臓器(胃管等)の壊死などで食事摂取が不能な患者様も積極的に受け入れ、微小血管吻合(マイクロサージェリー)を用いて遊離空腸再建(自家小腸移植)などを行い再度食事摂取していただけるよう治療を行っております。

他院で手術し、手術後組織が懐死した症例。ご自身の組織で図の欠損部をつなぎ食事摂取可能にする

胃癌

わが国の消化器癌のなかで最も多い胃癌では、出血の少ない安全な手術を心がけており、合併症の少ない器械吻合や膵臓を温存する脾臓合併切除の胃全摘術、さらには小さな創で手術ができる腹腔鏡補助下の胃切除術を行っています(図17 胃癌手術症例数)。クリティカルパスで治療していますので、幽門側胃切除術では、手術2日前に入院し、手術後16日目に退院するという、計19日間の入院を標準としています。もちろん、個々の患者さんの状態・ご要望に応じて変更も行っています。クリティカルパス導入で、術後の平均在院日数(図18)、胃癌手術での入院費(図19;幽門側胃切除術での入院費の平均。通常は3割が自己負担です。ただし約7万円を越える金額については、申請すれば後日に健康保険より還付されます)ともに徐々に減少しつつあり、合併症の少ない、より安全で確実な手術が行われていますので、良好な術後成績がえられています(図20)。また手術以外でも、新しい抗癌剤治療で化学療法の奏効例も増加しており、積極的に再発癌の治療も行っています。他院で手術を受けられてお悩みの方もどうぞお見え下さい。

図17:胃癌手術症例数の推移図17:胃癌手術症例数の推移

図18:胃癌術後在院日数図18:胃癌術後在院日数

図19:幽門側胃切除術での入院費用グラフの縦軸の数値は保険点数で、この10倍の額が医療費となり、通常はその3割を自己負担することになります。ただし約7万円を越える金額については、申請すれば後日に健康保険より還付されます。
図19:幽門側胃切除術での入院費用

図20:胃癌切除例(2001〜2009症例)Stage別生存率(他病死含む)図20:胃癌切除例(2001〜2009症例)Stage別生存率(他病死含む)

大腸癌

大腸癌はわが国で急増しています。大腸癌はその部位で結腸癌と直腸癌に分かれますが、併せると胃癌症例数にほぼ匹敵する手術数を行っています(図21 大腸がんの手術数)。早期の結腸癌では腹腔鏡を応用して創部の小さな侵襲の小さな手術を行い、患者さんに喜んで頂いています。また直腸癌では、器械吻合の応用により肛門を温存した手術を積極的に行っています。また小さな直腸癌では経肛門的に切除するTEM(transanal endoscopic microsurgery)手術を施行して、肛門機能を温存しています。大腸癌の手術成績は手術時の進行度によって決まります(図22,23,24 大腸癌の手術成績)。当院では消化器内科、内視鏡部だけでなく外科でも大腸ファイバー検査を行っていますので、大腸癌が早期で発見されるように大腸の定期検診をお受けください。

【図21:大腸癌の手術件数の推移】【図21:大腸癌の手術件数の推移】

【図22:大腸癌全体の生存曲線(1995年1月〜1999年12月)】【図22:大腸癌全体の生存曲線(1995年1月〜1999年12月)】

【図23:根治度別生存曲線(1995年1月〜1999年12月)】【図23:根治度別生存曲線(1995年1月〜1999年12月)】

【図24:大腸癌stage別生存率(1995年1月〜2001年12月)】【図24:大腸癌stage別生存率(1995年1月〜2001年12月)】

肛門疾患

肛門疾患の大半は痔核と痔瘻の手術ですが、クリティカルパスで5日間の入院で治療しています(図25)

図25:肛門疾患、痔核・痔瘻の手術件数の推移図25:肛門疾患、痔核・痔瘻の手術件数の推移

肝臓癌

肝細胞癌の治療法としては、外科的切除,アルコール注入療法、ラジオ波凝固療法、肝動脈塞栓術などの治療法があります。当院では消化器内科と協力、肝障害の軽度な症例で、径2cm未満の肝細胞癌ではアルコール注入療法やラジオ波凝固療法の適応とし、径2cm以上の肝細胞癌の場合を肝切除の適応としています。肝切除にあたっては術前に肝機能と肝細胞癌の占拠部位の正確な評価を行うとともに、術中超音波検査を利用して最終的な切除範囲を決定し、出血量の少なく、また術後合併症の少ない手術を行っています(図26 肝切除症例数)。肝機能と腫瘍の占拠部位からみて、可能ならば、再切除も積極的に行っていますので良好な成績がえられています(図27、28)

大腸癌からの肝転移は、積極的に切除することにより、20-40%の5年生存率が期待できます。切除後の肝転移再発例でも切除が最も有効な治療法ですので、積極的に再切除を行っています。

図26:肝切除手術症例数の推移図26:肝切除手術症例数の推移

図27:肝細胞癌の手術成績(累積生存率、他病死も含む)図27:肝細胞癌の手術成績(累積生存率、他病死も含む)

図28:大腸癌肝転移の手術成績図28:大腸癌肝転移の手術成績(累積生存率、他病死も含む)

膵臓癌

膵臓癌は症状が出にくいため、進行した状態で発見されることの多い癌です。術前に腫瘍の広がりを正確に評価した上で、膵頭部の癌には膵頭十二指腸切除を、膵体尾部の癌には膵体尾部切除を積極的に施行しています(図29 膵臓癌の手術症例数)。術後補助療法として、また再発時の治療として、抗がん剤(ジェムザール)治療を行い、成績とQOLの向上に努めています。

図29:膵臓癌手術症例数の推移グラフ(2001年〜2008年)図29:膵臓癌手術症例数の推移グラフ(2001年〜2008年)

図29_1:膵癌切除例生存率 (ジェムザール術後補助化学療法施行例)図29_1:膵癌切除例生存率 (ジェムザール術後補助化学療法施行例)

胆石症

当科では胆嚢胆石症は以前から腹腔鏡下手術を積極的に施行してきました(図30 胆石の手術症例数)。胆石症では入院翌日に手術、術後3〜4日目で退院のクリティカルパスで、計5日間または6日間の短期間で治療できます。腹腔鏡下手術では手術創が小さく、術中の出血は少なく、術後の疼痛も軽く、職場復帰も早い治療を行っています。また、急性胆嚢炎に対しては診断がつきしだい迅速に緊急手術を行って、早期の回復と入院期間の短縮を計っています。

腹腔鏡下胆嚢摘除と開腹 胆嚢摘除図30:胆嚢摘出術 腹腔鏡下手術vs開腹手術

ヘルニア

ソケイヘルニアは局所麻酔下、メッシュで補強するテンションフリー手術(図31、32 ソケイヘルニアの手術法)を行っていますので,入院期間は長くても3日までの短期間です(図33 ソケイヘルニアの手術症例数)。患者さんの御希望を伺って、日帰り手術(デー・サージェリー)か、手術日当日入院で手術翌日退院の1泊2日の入院、あるいは前日入院して術翌日に退院の2泊3日入院、以上の3種のコースから入院期間を患者さんご自身で選択していただく「お好みメニュー方式」で治療しています。術後の再発例も少なく優れた成績です。(図34)

図31:鼠径ヘルニア手術件数の推移図31:鼠径ヘルニア手術件数の推移

図32:テンションフリー3術式図32:テンションフリー3術式

図33:鼠径ヘルニア術式内訳(2002年)図33:鼠径ヘルニア術式内訳(2002年)

■全症例数 219例
■再発例に対する手術数 16例
■当院手術例での再発数
プラグ法後 1例
PHS法後 1例
クーゲル法後(初期症例) 3例
計5例
再発率 5÷219=2%

図34:再発症例の内容(2002年)

虫垂炎

急性虫垂炎は正確な診断へと向上し、抗生物質が進歩したことで、手術をせずに保存的治療で軽快する患者さんも増えています。しかしまだまだ緊急手術の必要な方も多いので、このような方には早期診断・早期手術・短期間で退院の方針で治療しています。腹腔鏡下手術も行っています。

甲状腺癌

甲状腺には悪性から良性まで多種類の腫瘍が認められます。甲状腺癌の多くは比較的悪性度が低いので、一般に径1.0cm未満の腫瘍は精査や治療の対象外とされており、当院でもその原則に従っています。径1.0cm以上の腫瘤については、超音波検査と穿刺吸引細胞診を初診日に行って、迅速な診断を心がけています。

腹腔鏡下手術

図35:腹腔鏡下手術図35:腹腔鏡下手術

当科では、腹腔鏡下胆嚢摘出術の導入に始まり、積極的に腹腔鏡下手術をおこなっております(図35)。全ての手術操作を腹腔鏡下でおこなう場合と、腹腔鏡下操作を活用して開腹するにしても最小限の侵襲でおこなう腹腔鏡補助下手術の場合とありますが、その疾患により適切に使い分けています。現在おこなっている術式を列記いたします。

腹腔鏡下:
胆嚢摘出術、総胆管切開切石術、脾臓摘出術、副腎摘出術、肝嚢胞開窓術、肝部分切除術
腹腔鏡補助下:
胃切除術、結腸切除術、小腸切除術

さらに適応を広げることが出来るように、努力しています。