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IMRT(強度変調放射線治療)開始

放射線治療はがん治療の大きな柱

放射線を照射することによってがん細胞を叩く放射線治療は、手術や化学療法と並んでがん治療の三本柱の一つです。正常構造を温存したままがん細胞を倒せる放射線治療は、重要な機能を担う部分にできてしまったがんを倒すために役立っています。例えば、頭頸部や脳のがんでは脳や神経や声帯などの重要な機能を司る構造をできるだけ温存することが重要ですから、放射線治療の役割が大きいです。前立腺がんのように全摘手術が可能ながんにおいても、手術を受ける体力が無かったり手術を希望しない場合には、放射線治療が良い選択肢となります。また乳がんのように、手術の後の再発を減らす目的で、残った組織に放射線を照射することもあります。更に、がんによって生じた痛みを減らすために、放射線治療が有効なこともあります。
放射線治療の効果を発揮させるためには、病変部分に十分な放射線を照射することだけでなく、病変近くの正常部分にあたる放射線をできるだけ減らすことが重要です。このためには多方向から病変を狙って正確に放射線を当てる必要があり、最新の装置ではより正確に照射することができます。当院ではガンマナイフという頭部専用の精密な装置が活躍しておりますが、2015年10月からはIMRT(強度変調放射線治療)という精密な治療が可能な最新鋭の装置が導入され、頭部以外の領域でも高度な治療ができるようになりました。

IMRTの利点は副作用軽減

IMRTの最大の利点は、がんの近くにある正常な組織を上手に避けて治療できることです。従来の放射線治療でも、複数方向から照射することによって狭い範囲に放射線を集中することはできましたが、放射線の集中する範囲がどうしても丸みを帯びてしまうという欠点があります。例えば前立腺がんを例に取りますと、前立腺は後ろや上の面が緩やかにくぼんでおり、このくぼみに直腸や膀胱が入り込んでいます。従来の放射線治療で前立腺がんに放射線を集中させると、くぼみに入り込んだ部分の直腸や膀胱にもがんと同じくらいたくさんの放射線が照射されてしまいます。このため、放射線治療の後で下痢や出血、尿道狭窄や性機能障害などの副作用が起きることがあるのです。これに対してIMRTは放射線の集中する範囲に凹みを作ることができるという特長があるので、前立腺がんへの放射線を減らすことなく、くぼみに入り込んだ直腸や膀胱へ当たる放射線を減らすことができます(図)。このためIMRTでは治療効果を保ったまま、副作用の頻度を減らし程度を軽くすることができるのです。

IMRTの特長 放射線が集中する範囲の後面(青線)を比較すると、IMRTでは前立腺(赤線)に沿った凹みを作ることにより直腸(黄色)をできるだけ避けていることがわかります。

IMRTによる放射線治療の実際

前立腺がんについて、IMRTの実際をご説明してみましょう。治療効果を高めて副作用を減らすためには、放射線を少しずつ繰り返し当てることが重要です。そこで前立腺がんの治療は7〜8週間、土日祝日を除き毎日放射線を当てます。毎回の治療で位置がずれてしまっては、がんと正常組織の境目ぎりぎりを狙った治療計画が無駄になりますから、あらかじめ前立腺内に小さな金の粒を埋め込んでおき、これを目印として毎回正確に位置を合わせます。がんと正常組織の境目を正確に知るため、当院でCTを撮影するだけでなく、特別なMRI検査を行っていただきます。毎回完全に同じ姿勢で治療を受けていただくため、皮膚にマジックで印をつけます。前立腺や周囲正常組織の位置情報が揃ったら、専用のコンピュータを用いて治療の精密な計画を立て、計画通りに放射線が当てられるかを正確に検証します。この計画は、コンピュータが何千〜何万通りの当て方を試行錯誤して最適なものを選び出すことによって実現しますので、1週間以上の時間が必要です。計画が定まったら、放射線治療を開始します。1回の治療に要する時間はおよそ20分程度です。前立腺がんに対するIMRTの治療効果は、おおむね手術と同程度です。
IMRTが有効とされているがんには前立腺がんの他に頭頸部がんや脳腫瘍があり、それ以外のがんにも応用が進んでいます。当院ではIMRT開始を機に放射線治療のエキスパートである放射線治療専門医を2名に増やすだけでなく、放射線治療を専門とする技師や医学物理士や看護師も増えましたので、今まで以上に精密な放射線治療と充実したケアが可能となり、当院のがん治療レベルが更に向上しました。