関東病院


関東病院ホーム > 受診案内 > 診療科案内 > ペインクリニック科 > 抹消血行障害による痛みとは

抹消血行障害による痛みとは

末梢血行障害による痛みとは

これは末梢血管が細くなることにより、皮膚や筋肉へ行く血流が少なくなるために生じる痛みとしびれのことです。症状は手や足の先が冬になると冷たくなったり、歩くとふくらはぎが痛くなったりする程度のものから、重症になると皮膚に潰瘍を生じたり、指や足が黒くなって腐ってしまうものまで血管の状態により様々です。また重症のものでは、びりびりとした不快な痛みとしびれを伴い、とても満足な日常生活は送れなくなります。

末梢血行障害を起こす病気を分類すると炎症や動脈硬化により血管がつまってしまうものと、血管が強く収縮するために血液の流れが悪くなるものの二つに分けられます。血管がつまってしまう病気の代表は、閉塞性動脈硬化症とバージャー病があります。また血管が収縮してしまう病気の代表としては、レイノー病があげられます。

ペインクリニック科には平成19年12月末までに、882名の患者様が来院されて治療しています。

1)閉塞性動脈硬化症

血管の壁にコレステロールが沈着することにより血管が弾力を失い、細くなるのが原因です。老化現象の一部といえますが、糖尿病や高脂血症を合併している人は若くても起こる可能牲があります。全身の血管がこの病気に侵されます(人によって狭心症、脳梗塞なども起こりやすくなります)が、特に足の付け根の血管がつまり易く、最初は長く歩くと足が疲れやすい、または痛いという症状から始まります。

2)バージャー病

バージャー病:タバコ好きの若い男性で手足の色が悪く、痛むようなら要注意。 バージャー病:タバコ好きの若い男性で手足の色が悪く、痛むようなら要注意。

手足の比較的細い動脈が炎症を起こすことによりつまってしまう病気です。原因は不明とされていますが、煙草をすわない人にこの病気が殆どみられないことから、喫煙が何らかの引き金になると考えられています。膝より下の足が侵されることが多いのですが、手に症状が現れるのも決して珍しくありません。バージャー病は閉塞性動脈硬化症に比べて若い人にみられる病気で、発病は30〜40才の男性が多いようです。

症状は初期の段階では手足の先が冷え、色が変わる程度ですが、進行すると痛みを伴う潰瘍を形成するようになります。この場合も普通、手足の付け根の太い血管はちゃんと脈を打っています。この病気は国の指定した難病の一つで、症状に応じて、公費で治療を受けることができます。

3)レイノー病

冷たい水に触れたときなどに、指先の血行が悪くなり、皮膚が白くなりしびれる病気で、血管の異常な収縮が原因となって起こります。温めてもなかなか元には戻りませんが、時間が経つと血管が拡張してきて、今度は逆に皮膚の色が赤くなり、そのとき痛みやかゆみを伴うことがあります。まったく原因なく起こることもありますが、リウマチや強皮症といった膠原病、長年振動工具を使った人にみられる振動病、また前に述べたバージャー病の初期にも同じ現象がみられます。レイノー病も進行すると指先に痛みを伴った潰瘍を形成し、いくら温めても元に戻らなくなることがあります。

治療について

1)自己管理

血管の病気全般にいえることですが、まず守っていただかなくてはならないのは、禁煙です。煙草に含まれるニコチンは強力な血管収縮作用があり、細くなった血管の血流はますます悪くなります。したがって煙草が止められない方は治療をしてもまったく意味がないといえるでしょう。一方、煙草を止めただけで症状の進行が止まることもありますので、自分でできる治療として是非禁煙をお勧めします。また手足の保護に注意して下さい。冬期に手足を寒冷から守るのは勿論ですが、日常生活で特に気を付けなければならないのは、足や手の指先を怪我しないことです。病気が進行して指先が痛くなり、皮膚の色が変わってきても、普通の膿瘍と同じように切開を加えるような治療をしますと、元来血行の悪い場所ですから、傷がいつまでたっても治らなかったり、痛みがひどくなったりすることがあります。その様な場合は必ず専門医に御相談下さい。

2)薬物療法

症状の軽いものでは、血管拡張薬、血栓を予防する薬、鎮痛薬などが投与されます。しかし薬を長期間に渡って服用し続けると、副作用を生じることがありますので注意して下さい。また皮膚の色が変色したり、潰瘍を形成したりしている場合は薬物だけでは不十分です。

高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は、内科で十分な治療と管理が必要になります。

3)神経ブロック、交感神経節ブロック

交感神経は腰椎の前をひものように走っている。この神経を遮断すると腰部交感神経ブロックになり、下枝の血流が改善する。 交感神経は腰椎の前をひものように走っている。この神経を遮断すると腰部交感神経ブロックになり、下枝の血流が改善する。

局所麻酔薬を痛む神経や交感神経節に注入することにより鎮痛と血管を拡張させる治療法です。鎮痛を主にした治療は、硬膜外ブロックがあり、1回毎にブロック針を刺して硬膜外腔に薬を入れる方法と、硬膜外腔に細いビニールの管を入れて、24時間連続的に薬を注入して鎮痛する方法があります。後者は入院して、潰瘍などがあり痛む患者様の鎮痛と循環改善するために行います。その他に末梢神経へのブロックがあり、痛む神経のそばに長時間の遮断効果を持つ局所麻酔薬を使用して鎮痛します。

血流をよくする交感神経ブロックには、星状神経節ブロック、胸部交感神経節ブロック、腰部交感神経節ブロックなどの種類があります。星状神経節ブロックは手の血行を改善する目的で行われます。このブロックの効果は2〜3 時間であるため、軽症の血行障害の治療によく用いられます。ブロックの効果を長く保つためには、胸部または腰部の交感神経節ブロックを行います。交感神経節は、背骨の腹がわの横を紐のように縦に走っています。交感神経節ブロックを行うときは、ブロック針をレントゲンで位置を確かめながら交感神経節のあるところまで進めて行き、試験的に局所麻酔薬を注入します。局所麻酔薬で十分な効果が得られ、さらに副作用のないことが確認された後、長期間その効果が保たれるように高周波(ラジオ波)の熱を加えたり、アルコールを注入したりしてブロックを終了します。ブロック後は約2時間ベッドの上で同じ姿勢をしたまま動くことはできません。その後も約5時間ベッドで安静にしていただかなければなりませんが、食事をするのは差し支えありません。

この交感神経節ブロックの特徴は、手術と異なり入院期間が数日と短く、必要なら何回でも繰り返して行えることです。ブロック後の安静も短く、その日の夜から歩行も可能です。ブロックの効果は下肢で平均2年、上肢で半年から1 年です。

4)手術療法

太い血管が閉塞している(つまっている)場合、手術によって血行を再開させることができます。閉塞性動脈硬化症では、しばしば閉塞した血管の代わりに人工血管をつないだり、血流をバイパスさせたりする手術が行われます。又は狭い血管に風船を通して血管を広げて、その後ステントという金属を使って血管を広げたままにする治療法もあります。

5)胸腔鏡下交感神経切除術

交感神経は血管を収縮させる神経ですが、それを手術的に切ることで血管の拡張が期待できます。手術は、腋に小さな穴をあけて内視鏡で診ながら交感神経を切る手術を行います。ほぼ永続的な効果があります。

6)脊髄刺激装置植込み術

この手術は、硬膜外腔へ電極を埋め込むことによって、脊髄に弱い電気を流し、その刺激で痛みを和らげて血行をよくする方法です。潰瘍が治っても、神経が障害されて痛みが持続する場合があり、その場合は特に適応があります。また、寒くなる時期に手足が冷たくなって痛くなる場合も、自分で刺激をコントロールして症状を改善できるので、この治療法のよい適応になります。

7)手足の切断

いかなる治療を行っても痛みが取れない場合、感染を起こしてそれがどんどん拡がるような場合に限り行われることがあります。しかし、切り取る部分を最小限に止どめなくてはなりません。そのためにも血管を拡張させる努力は併用して行われます。ただし感染などがある場合は、デブリードマンといって感染した部分や壊死にいたった部分を消毒液などで取り除く操作を行います。

以上、末梢血行障害の治療法について述べきましたが、われわれとしては、薬ではうまく管理できなくなるほど進行した血行障害の方には、安全性、管理の容易さからまず交感神経節ブロックによる治療をお勧めします。

8)単球による血管再生術

手や足の血行が悪くなる末梢の動脈がつまる病気には,慢性閉塞性動脈硬化症やバージャー病などがあります。その中に、重症になると、足に激しい痛みが続いたり、足が黒くなる壊疽が起こったりします。この時期は、治り難く、社会復帰を妨げるばかりか、下肢の切断を余儀なくされる場合も少なくありません。このような病気に対する治療として、単球を数時間かけて集めて、悪い足に小分けにした注射器で注射する末梢血の単球移植による血管再生治療が注目されています。従来の薬、神経ブロック、腰部交感神経ブロックなどの治療にても下肢の血が通わない症状が改善しない場合に適応になります。この治療法で血管の再生を促す治療を行います。