関東病院


顔面神経麻痺の治療

顔面神経麻痺とは

ある日突然、片方の頬がはれぼったい。水を飲もうとすると口からこぼれる、片方の瞼が閉じない、笑うと口が反対につれる。これが顔面神経麻痺(ベル麻痺)です。顔の異常にきづく前に、耳の周りとか後頭部が痛むことがあります。又、耳介、外耳道に水疱(帯状疱疹)ができ、その部分が非常に痛み、体がフラフラして歩けないことがあります。この場合は水痘・帯状疱疹ウィルスによる顔面神経麻痺(ハント症候群)が考えられます。顔面の症状以外にも、涙がでにくくなるとか、反対に涙がでて困る、味覚がなくなってしまう、小さい音が耳の中で大きく響くなどといったことがおこることもあります。顔面筋が働かないため顔を押えると痛みを生じることもあります。当科で平成19年12月末までに治療した顔面神経麻痺の患者さんは6,798名です。男性と女性はほぼ同率です。左右でどちらが麻痺しやすいかの差もありません。患者さんの年齢構成では10才代から50才代にかけて増加して50才代をピークとし60才代以降は徐々に減少します。10才未満の小児は 5%です。従来子供は何も治療しなくとも治癒すると言われておりましたが、われわれの研究では必ずしもそうではありません。やはりできるかぎり治療を行うべきでしょう。原因がはっきりせずベル麻痺と呼ばれているものが80%、水痘帯状疱疹ウィルスが原因とされているハント症候群は 12%です。顔面神経麻痺の再発率は1,000名に対して77人でそれほど多いものではありません。

原因は

通常の末梢性顔面神経麻痺をベル麻痺と呼び、大半がこの麻痺です。原因ははっきりわかっていませんが、顔面神経に栄養を与えている血液の流れが悪くなったり、ウイルス感染が関与して麻痺がおこるといわれています。ベル麻痺に比べると少なくなりますが、水痘帯状疱疹ウィルスが顔面神経の炎症をおこして麻痺になることがありハント症候群と呼びます。この場合は外耳道に水疱や発赤を生じ、めまい、急性の難聴、味覚障害、小さな音が大きく響く、などをともないます。ウィルスに対する抗体価を測ることで確実に診断できます。他の原因としては、外傷、腫瘍、中耳炎手術によるものがあります。場合によっては、顔面の三叉神経や後頭部や耳の後ろ部分の帯状疱疹になり、その後しばらくしてウィルスが顔面神経に波及して麻痺になる方もいます。

顔面神経麻痺,冷たい風にあたっても起こるとも・・。 顔面神経麻痺,冷たい風にあたっても起こるとも・・。

診断するために

麻痺の原因を調べるため血液検査を行います。ウィルス抗体測定のための採血は初診時とその後1〜2週間後に行います。麻痺の程度を判定するために顔面神経の筋電図検査を実施します。

この検査は治療開始時とその後数日毎か、発症10-14日後に行います。

顔面神経麻痺の原因を調べるために、顔面神経を中心に撮影する造影MRIを行う場合が多いです。

治療としては

  1. 末梢性顔面神経麻痺になったら,その側の星状神経ブロックを行います。また、ステロイド剤、抗ウィルス剤、ビタミン剤などの薬を併用します。特にステロイド剤を使用するときは、神経内科に紹介します。帯状疱疹のときは皮膚科に紹介します。
  2. このブロックは顔面の血液の循環を改善し、神経の浮腫、炎症を改善し、麻痺の回復を助ける働きがあります。
  3. ブロックによる治療効果は麻痺の程度、年齢、発病して何日目から治療を開始したかによって異なります。
  4. 発症して10日前後で顔面神経麻痺の程度が判定されます。
  5. ベル麻痺ですと、3週間以内に治療を開始した場合、10〜40回のブロックで約90% の患者さんが改善しています。
  6. ウィルスによるハント症候群では重症の麻痺が多く、その場合は治癒までに6カ月以上かかることもあります。
  7. 治療開始が遅れた場合、とくに発症後3カ月以上たっているときは不完全治癒となり、後遺症を残すことが多いのですが、静止状態では麻痺が余りわからない程度には改善します。
  8. 星状神経ブロックを受ける場合は、主治医とよく相談して最適な治療を受けてください。神経ブロック以外の治療もできます。
  9. 日常生活で無理をしないこと、寒気にあたるのを避けることも大切です。
  10. ブロック以外には自分で顔面の筋肉を動かす練習が大切です。その方法を別紙にあげましたので実行してください。
  11. 麻痺になって年数がたつと、治療しても麻痺の回復が難しく後遺症として少し残ります。後遺症になった方で、まぶたが少し痙攣する方がいます。その場合は、顔面ケイレンの治療で使うボツリヌスを少量注射することがあります。
  12. そのような古い麻痺では,形成外科による手術で顔のバランスをよくすることが効果的なことがあります。
  13. 手術を希望される方は専門医を紹介します。

顔面神経麻痺

顔面神経麻痺には重症の方がいます。

目が開いたままの方は角膜が傷つくことがあります。目薬を出す場合があります。