関東病院


三叉神経痛とは

三叉神経痛の治療についてペインクリニック科は、40年以上の歴史があり、平成19年12月末までに5,221例の患者さんが訪れ、25,209件の三叉神経への神経ブロック治療を行って、すぐに痛みを治します。
三叉神経痛について症状原因治療などを述べてみたいと思います。

痛みの特徴

三叉神経は、痛みなどを感じとって脳へ伝える知覚神経の1つです。脳幹部から左右に1本ずつ出て、それぞれ額、頬、顎の3方向に枝分かれして伸びています。この三叉神経に異常が生じて、発作的に激しい痛みが起こるのが、三叉神経痛です。

多くは、顔の左右どちらかに起こり、軽く顔に触るとか、風に当たる、口を少し動かしたときなどのわずかな刺激でも、痛みが誘発されます。その痛みは、患者さんが「いなづまが走るような」「「針で突き刺されるような」「えぐられるような」と表現するほど激烈です。

そのため、高齢の患者さんのなかには、喋ることも食べることも困難になり、体重が減ったり、脱水を起こす人もいるほどです。

特徴は何と言っても発作性激痛です。軽く顔にさわるとか、風があたっても、口を動かしても激痛発作が誘発されます。その痛みはイナヅマが走るような、えぐられるような、針で刺されるような強烈な痛みです。この1回の発作は、5〜20秒位長くとも2分以内でおさまります。発作が終れば、痛みはなく普通の状態にもどります。痛い部分が腫れたり、赤く熱を持ったり、しびれたりしないため、時には仮病ではないかと周囲から疑いのまなざしでみられることがあり、これが多くの患者さんにとって大きな苦しみとなっています。この痛みは風呂に入ったときに軽くなったり、なくなったりすることが多いようです。また夜眠っているときも、痛みで目がさめることはほとんどありません。

季節の変り目に発作が起る

刺激が加わればいつでも激痛発作が誘発される人もありますが、一般的には決った季節に多く痛むようです。それは春先と秋口です。神経痛だから冬がつらいように思われますが、そうではないようです。食事や会話で痛みが誘発されます。夜間には通常痛み発作が生じません。これに対し舌咽神経痛は夜間の激痛が特徴です。

50歳代に発病することが多い

私達のペインクリニックでは平成15年12月末までに4,476例の三叉神経痛を診察しました。女性は男性のほぼ2倍であり、平均55歳で発病しています。年配によりに多い病気で40歳以上が85%を占めています。この病気はあまりにも痛みが激しいので、頭の中に何かできていて生命の危険があるのではないかと心配されるかもしれませんが、そのようなことはほとんどありません。むしろ患者さんは他の病気を知らず長寿のことが多いのです。

原因は血管による圧迫との説が有力

三叉神経痛の原因は今まで不明とされてきましたが、最近は脳幹から出た三叉神経が周囲の血管に圧迫されるために痛みが起るとする考え方が有力となってきました。そのために後にも述べますが、頭を開けて頭蓋の小脳橋角部というところで、この圧迫している血管を神経から離す手術法が、脳外科で行われています。しかしこの手術は再発の可能性もあります。

また圧迫血管がはっきりしない症例も見られます。

主な治療法は4つ
三叉神経の治療には、「薬物療法」「神経ブロック」「手術療法」「定位放射線治療(γ―ナイフ)」があります。

薬物療法にも限界がある

一般の鎮痛薬はもちろん麻薬も効きません。現在広く用いられているのは抗けいれん薬であるテグレトールです。使用法は朝夕食前30分以内に半錠(100mg)から始めて、不十分なら痛いときにも半錠服用します。1日3錠以上を服用すると、ねむけ、ふらつき、はきけ、便秘などの副作用がおきやすくなりますので、必ず医師の指示に従って服用してください。しかし、多量に服用しても無効のこともありますし、有効な場合でも発熱や皮膚発疹などの副作用(発疹など)が現れたりすることがあります。また長期間連用によって重篤な血液疾患(白血球減少など)をひきおこすこともあります。これらの副作用が生じた場合は、以後テグレトールの服用を中止することになります。したがって、次の治療までのつなぎや旅行先でおこったときの短期間の服用に限るべきでしょう。長期連用している患者さんでは、必ず血液検査をする必要があります。外来に通院されている場合は3〜6ヶ月毎に血液検査を行います。

効果的な神経ブロック療法

このブロックという言葉は、遮断を意味し神経での痛みの伝導を押えて痛みを感じなくさせてしまう方法で、ブロックや高周波熱凝固するとすぐに効果がみられます。神経あるいは神経節に直接ブロックする針をあてて薬液を注入したり、高周波熱凝固するので、高度の技術を要しますが、診断が正しくこの治療が確実に行われれば必ず痛みが止ります。痛みの部位によって治療する神経を決めます。眼窩上神経ブロック、眼窩下神経ブロック、上顎神経ブロック、おとがい神経ブロック、下顎神経ブロック、ガッセル神経節ブロックの6種類(合計23,**件)があります。有効期間はブロック部位で異なりますが、1回のブロックで平均15カ月以上の鎮痛が得られます。ガッセル神経節高周波熱凝固法は数年〜5年以上期待できますが、技術的に最も難しいブロック一つであるため入院が必要となります。他のブロックは外来通院で可能です。難しいブロックはレントゲンテレビを見ながらおこないます。

神経ブロックを行うと、顔の一部が痺れます。その痺れを軽減するために、高周波熱凝固の温度を調節、即ち55度、65度、75度、85度と設定でき、温度によって痺れ方が違い、温度が低いほど痺れは少なくなります。また、痺れがない方法で42℃の温度設定で行うパルス高周波法という方法もあります。しかし、痺れの少ないほど効果は弱くなり、効かない場合や効果期間が短いなどが予想されます。

神経ブロック後は

ブロックをおこないますと、かならずある一定の部位の知覚が消失したりシビレたりしますが、設定温度によって痺れの程度は違います。これは長いあいだ続きますが、痛みをなくすために感覚を少なくするようにしたのですから心配ありません。熱い物を食べるときやけどをしないように、また口唇など噛んで傷つけないようにゆっくりかんだりするなどの注意が必要です。ブロック直後から痛みが消失する場合と、1週間から10日位ブロック前と同じ痛みが続く場合とがありますが、痛みが残っているからといってすぐ再ブロックする必要はありません。10日〜2週間位待てば必ず痛みが消えてきます。そのあいだ痛みがつらい場合はテグレトールを1日半〜1錠位服用するのもよいでしょう。ブロックをした部位がときに腫れたり、内出血することもありますが、10日位で治ります。特別な処置は必要ありませんが、直後に冷やすと晴れが少ない場合があります。ブロック治療を受けた方は1〜2週間後に再び外来診察にいらしてください。遠方の方は電話での再診も行いますので主治医に相談して決めてください。

手術療法

最近三叉神経痛は脳幹部から出てきた三叉神経が、周囲の血管に圧迫されるためにおこるとの説が有力となり、血管の圧迫を取り除く手術が行なわれるようになりました。三叉神経痛を根本的に治す可能性があります。若い年齢でおこった三叉神経痛の方やブロック効果期間の短い患者さんは、手術を考慮されてもよいでしょう。しかし手術後10以上年を経た成績では20-30%の方が再発していると報告されています。手術を待つ間に、痛みが強くて耐えられない方は三叉神経ブロックで痛みを治して待つ方もいらっしゃいます。手術後に三叉神経痛が再発された方は、三叉神経ブロックが有用です。

γナイフ療法

三叉神経起始部に放射線照射を行う方法で減圧術ができない患者さんに行われることが多いです。再発もあります。また高齢の方でこの治療法以外で効果や適応のない方は、この治療も選択肢になります。この治療法後に再発された方も神経ブロックで効果を示します。

注意

以上のように、完璧に治る治療はないと考えています。三叉神経痛の方は,よく考えて治療法を選択していただくことが希望します。 患者さんの日常生活における注意として大事なことは,腹をたてないことです。いらいらや心配事がよくないのです。まわりの人たちはこの病気をよく理解しストレスを与えないようにいたわってあげてください。特に、季節の変わり目や気圧の変化で痛くなることがあります。このときはあわてず、テグレトールを服用して、少し経過を見るのも良いと考えます。それでも痛みが続くときは、来院してください。

・・・三叉神経痛が再発して外来に来られる前に・・・

痛みが再発してブロックを必要とされる場合は一度外来(月〜金)に電話連絡(03―448―6031)をおこなってください。