関東病院


関東病院ホーム > 受診案内 > 診療科案内 > ペインクリニック科 > 帯状疱疹(ヘルペス)の治療

帯状疱疹(ヘルペス)の治療

ペインクリニック科には、平成19年12月末までに、帯状疱疹の患者さんが5,637例来院されて、治療を行っています。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹は神経に沿って、帯状に疱疹(ブツブツ)ができ,その場所に強い痛みが起る病気で、口のまわりに疱疹ができる単純疱疹とは異なる病気です。この病気の原因は、水痘・帯状疱疹ウィルスで、通常の場合、健康な人でも体内にあり、過労、睡眠不足、感冒などで体力が弱った場合にこのウィルスが活性化されて発病すると考えられています。またこの疱疹に触れたからといって他の人に伝染することはまれです。身体中どこでも起こりますが、特に第2〜4胸髄(上胸背部)、三叉神経第1枝(ひたい)などに好発します。

帯状疱疹、神経の分布に従っていたるところの皮膚にブツブツを生じます。 帯状疱疹、神経の分布に従っていたるところの皮膚にブツブツを生じます。

原因は?

帯状疱疹は、脊髄から出ている神経の根元に潜んでいた水疱瘡ウイルスが、過労やストレスなどで免疫が低下したときに暴れだし、赤い発疹と激しい痛みが2、3週間続きます。発病年齢が高いほど発疹が治っても、ウイルスによる神経の破壊が進み、後遺症として帯状疱疹後神経痛に悩まされることがあります。

子供のころなどに、水疱瘡に感染すると、体中に発疹がでてかゆみを感じます。その発疹がたまたま末梢神経の先端と接触しウイルスが入り込むと、脊髄の神経の根元や三叉神経節などにウイルスが潜んでしまうことがあります。その後、水疱瘡の抗体が弱まってきたタイミングと、過労やストレスなどで免疫が低下する時期が重なると帯状疱疹を発病します。症状としては、身体の片側だけに、赤い発疹や水疱がでて、同時に激しい痛みを感じます。中には発疹が出る前に、胸の辺りに痛みを感じ、心臓病と間違えられることもあります。

症状は?

症状は、時に熱がでたり、リンパ腺が腫れたりします。疱疹が出現した部位に一致して、皮膚の知覚異常がおこる場合もあります。疱疹の部位が頚部、胸部の場合には腕の力が弱くなったり、腰部の場合には足の力が弱くなったり、また腰仙部であれば尿の出が悪くなったりすることもあります。顔面、とくに前額部(ひたい)におこった場合は皮膚の知覚が低下することはむろんのこと、角膜炎がおこって視力がおちたり、ときには眼球が動かなくなったり、また全身性の多彩な脳脊髄膜炎の症状をおこすこともあります。また疱疹が耳介内側に生じたときには、顔がまがる(顔面神経麻痺)、耳が聞えない、耳鳴りがする(内耳神経障害)などの障害がおこり、これは帯状疱疹のなかでもラムゼーハント症候群とよばれています。症状のうちでもっとも悩まされるものは痛みです。通常、発病2週間後にもっとも強く、夜も眠れないこともあります。また、他の症状が消えても痛みだけが残ることもあります。1度消えた痛みが数カ月〜数年後にまた出現することもあります。この痛みを帯状疱疹後神経痛と呼び、ペインクリニック領域でも治療に難渋する疾患の1つにあげられます。神経ブロックはその防止にもなり、発病後に薬と併用しながら、できるかぎり早く始めることが大切です。

お岩さんは、三叉神経の帯状疱疹? お岩さんは、三叉神経の帯状疱疹?

診断

特徴的な皮膚の疱疹と神経痛を認めれば帯状疱疹の診断は容易につきますが確定診断のため血液の抗体の測定などが行なわれます。まれに髄膜炎を併発することがあり、その可能性があるときは髄液の検査を行うことがあります。皮膚症状が潰瘍になったり、ぶつぶつがつぶれて皮膚の症状が強いときは皮膚科を受けていただきます。

治療法(神経ブロック)について

皮膚の疱疹の治癒を早め、帯状疱疹後神経痛を防止し、運動障害、排尿障害、脳脊髄症状などの合併症を起さないために、薬物療法を行いながら神経ブロックが行われます。顔面・上肢をふくむ上胸部までのものには、星状神経節ブロックを行います。三叉神経領域の帯状疱疹で痛みが強い場合は、ガッセル神経節ブロックを行うことがあります。それ以外のものには肋間神経ブロック・硬膜外ブロック・神経根ブロックを行います。神経ブロックとは、局所麻酔薬を使用し一時的に神経の興奮伝導を遮断することです。

神経は動脈や静脈などと一緒に管のようなものの中に入っており、交感神経が興奮すると血管が収縮して、その情報が脳に伝わり痛みの物質がでて痛みを感じます。交感神経を遮断することで、血管をひろげて痛みの物質を、血液で流すことで痛みを和らげるとともに、炎症をおさえ、神経の修復を図るというものです。一時的な効果しかないと思うのは誤りです。一言で言えば神経ブロックは痛みの悪循環の遮断を行います。ウィルスに侵されてあつまった痛み物質を、交感神経の遮断で血管の拡張をはかることにより豊富な血液の流れにより運び去ります。また、この痛み物質を除くことで、痛みをやわらげることのほかに、炎症をおさえ、傷のなおりを早め帯状疱疹後神経痛の防止にもなるわけです。治療は痛みの軽減を見ながら、急性期の場合は、1週間に2から5回程度実施します。痛みが強い場合や帯状疱疹後神経痛になってしまったときはブロック以外に、胸部・腰部交感神経節ブロック、神経根高周波法(パルス療法、熱凝固法)などが行われます.これらは,レントゲンで針先の位置を見ながら治療を行います。帯状疱疹後神経痛を完全に治癒させることはできませんが、これらの高度な治療の組合せで大部分の患者さんの痛みを軽くすることができます。 しかし、痛みが残ってもあきらめずに治療を継続することが大切と考えています。

薬物療法

帯状疱疹の患者さんには、抗ウィルス薬、鎮痛薬、抗不安薬などを併用しながら神経ブロックを行います。また、帯状疱疹後神経痛の患者さんには、いままでのべた神経ブロックのほかに内服薬・軟膏(カプサイシン軟膏など)が併用されます。それらの薬は一般の鎮痛薬とは異なり、痛みを伝える神経の感じ方を変化させて神経痛の痛みを軽くするのではないかと考えられています。この薬は内服を始めた時にはふらつきや吐き気がでることがありますが、1週間ほどでこれらの症状は消えます。また、この薬の痛みをやわらげる効果は、服用1週間位からでてきます。いま痛いからといって一時的に服用してもすぐ効果はありませんので継続して毎日内服してください。しかし、副作用の強い場合は中止します。この神経痛に対して、一般の鎮痛薬はほとんど効果がありません。

患者さんによってカプサイシン軟膏やリドカイン軟膏が一時的に効果のあることがます。主治医とよくご相談して使用してください。

経皮的脊髄電気刺激療法
痛みが強い方で、従来の痛みの治療で効果のない方に行います。まず、トライアルといって、試験刺激を行って、効果のあった方に、疼痛除去用の脊髄電気刺激装置を植え込みます。

帯状疱疹後神経痛について

帯状疱疹になって、早くから神経ブロックをすれば、帯状疱疹後神経痛も防げます。帯状疱疹の痛みがなくなったあとでも、少なくとも1週間は治療を続けるべきです。また高齢になると帯状疱疹後神経痛になる可能性も増えるので集中的な治療が必要な場合もあり、そのような場合は入院して治療を行うこともあります。1度帯状疱疹後神経痛になってしまうと、いかなる治療を行っても完全に痛みが消えることは難しくなります。

平成1年12月31日までに我々の外来を訪れた帯状疱疹の患者さんは4,700人です。この内約半数の1,203人が発症後2週間以内に神経ブロックを開始し殆ど痛みがなくなっていますが、 3週間後 1カ月以内では約60% 、2カ月以上 6カ月以内に神経ブロックを開始した患者さんでは約80% の人が、皮膚のブツブツがなくなったあとでも、痛みを訴えています。帯状疱疹発症後、早期(2週間以内)、遅くとも1か月以内に神経ブロックを開始することで、帯状疱疹後神経痛を防ぐことができると考えています。