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痛みのメカニズムとは

体の防衛機能のひとつとされる「痛み」は、どういうメカニズムで起こるのでしょうか。また痛みが続くことでどんな弊害が生じるのでしょうか。痛みについての基礎的な知識を、ここで確認しましょう。

痛みは人間ならではのものです。そう言ったらビックリする人も多いでしょう。国際疼痛研究学会(IASP)では、『痛みは実際の、または潜在的な組織損傷を伴う不快な感覚的、精神的な経験』と定義しています。つまり、痛みは体が何らかの障害を受けたときに生じる単なる刺激ではなく、心や感覚が伴った苦しみ、これが私たちの感じる「痛みの本質」であります。

末梢神経のAδ線維とC線維とは何でしょうか?

2種類の神経が痛みを伝えます。

痛みを伝えるのは体の中を縦横する神経です。神経は大きく中枢神経系(脳や脊髄など)と自律神経系(交感神経と副交感神経)、末梢神経系の3つに分類されます。

痛みの刺激が起きてから、「痛い!」と感じるまでの流れは次のようになります。

何かにぶつかった、あるいは皮膚を切った、火傷をした、そんなとき、最初に痛みの刺激を感じ取るのは、末梢神経の先にある<センサー>、即ち侵害受容器です。そこが興奮することで末梢神経に痛みの刺激が伝わります。

末梢神経は太さによって、いくつかに分類され、それぞれ伝える刺激が違います。痛みの刺激を受け持つのは、少し太めのAδ線維と細いC線維です。Aδ線維は痛みを一瞬で感じ取り、素早く中枢神経に伝え、C線維はやや遅れて痛みの刺激を送ります。ケガをした時、「イタッ!」と反射的に痛みが走り、しばらくしてからジーンと焼けるような痛みが湧いてくるのは、そのためです。

痛みにもいろいろな種類があります

ほとんどは「侵害受容性疼痛」の痛みです

痛みにもその性質から、いろいろな種類に分けることができます。

痛みを患っている時間の長さで分けると、基本的に急激に起こる痛みが「急性痛(ケガなど)」、急性痛に引き続いて0.5〜2か月持続する痛みを「亜急性痛」、3〜6カ月以上痛みが続くものを「慢性痛(関節リウマチや三叉神経痛など)」と言います。病気の種類によって2〜3週間でも慢性痛という場合もあります。急性痛をもたらす病気を治療しても痛みが残れば、それは慢性痛です。

痛みを感じる場所で分けると、体の表面が痛む「体性痛」と内側が痛む「内臓痛」があります。体性痛はさらに皮膚や粘膜の障害で起こる「体表痛(火傷や打撲など)」と、筋肉や骨の「深部痛(骨折など)」があります。

痛みの原因で分けると、「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」「中枢性疼痛」があります。侵害受容性疼痛は器官や臓器が傷害されたときに、そこにある末梢神経から痛みが発せられるものです。ほとんどの痛みはここに含まれます。神経障害性疼痛は痛みを伝える神経そのものに問題が生じて起こる痛みです。「心因性疼痛」は神経や体には問題があまりないのに発生する痛みであり、「中枢性疼痛」は神経の中心にある中枢神経そのものがやられてしまうことで起こる痛みです。

(1)痛みは記憶されるでしょうか

大人になると、子どもの時のように階段を1段抜かししたり、柵を跳び越えたりするなど、ちょっとした冒険ができなくなります。「ケガをしたときに感じた痛み」が思い起こされて、腰が引けてしまうからです。

さらに、痛みの記憶によって、非常に面倒なことに合うこともあります。

ケガや病気、あるいは手術などで痛みを感じると、この痛みの刺激は中枢神経に記憶されます。これは一種の「痛みの中枢への感作」と言います。この中枢への感作によって、常に脳や脊髄が刺激されると、痛みの原因になる刺激がなくても、脳はいつも痛みを感じ続けてしまうことがあります。ケガや病気が治っても、その部分がまるでそのケガや病気が起きているかのように、痛み続けてしまうわけであります。単なる慢性痛と違うのは、末梢神経がこの痛みの記憶の影響で、過敏になっているため、風が吹いただけ、ちょっと触っただけでも、強い痛みを感じる点です。

「幻肢痛」も痛みの記憶の一つと考えられています。よく聞くのは、実際にはない切断した足に痛みが走るという現象です。足に限らず、乳房や陰茎、内臓でも起こります。途切れた末梢神経が異常な信号を発するためとか、脊髄、脳のネットワークの異常とか言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。

(2)痛みで「うつ」になりますか

若い頃、学校に行きたくない時、おなかや頭が痛くなった――。そんな経験を持つ人も多いのではないでしょうか。痛みの原因となる病気がほとんどないのにもかかわらず、痛みが出ることを「心因性疼痛」と言います。一般的に社会的、精神的なストレスがきっかけで起こるとされています。慢性頭痛、慢性腰痛、顔面痛(広く、痛み方に規則性がなくはっきりした原因のわからないのが特徴)などが代表的なものです。

また、うつ病を患っている人が、その症状の一つとして、慢性疼痛を訴える症例も多いのです。痛みの治療として抗うつ薬が有効であることは、多くの臨床研究からすでに実証されています。

一方、痛みが慢性的に続くと、気分が落ち込んできて、何も手に付かなくなることがあり、痛みがうつ症状をもたらすことは、想像がつきます。また、本当のうつ病になってしまう可能性もあります。

うつ病は脳の神経間で、情報のやり取りがうまくいかなくなることで、うつ症状をもたらす状態ですが、痛みに関しての感受性が高まり、痛みの感じ方がいっそう強くなる傾向があります。

(3)痛みは痛みを招きますか

「肩こりを我慢していたら、首や背中にまで痛みが広がり、吐き気がしてきた」という症例がよくあります。痛みを我慢するとさらに痛みが広がるという悪循環を招くためです。

この痛みの悪循環とは何でしょうか。

肩や腰などある部分に痛みが起こると、そこだけ交感神経が緊張します。その結果、筋肉の緊張が強まったり、血管が収縮したりします。これにより血液循環が悪くなるため、その部分に新鮮な酸素や栄養がとどこおります。実は血液循環の低下、酸素不足は、痛みをもたらす「発痛物質」を産生させます。そのため痛みがさらに強まります。痛みが痛みを招く「悪循環」をもたらしてしまうのです。軽い痛みだからといって放っておくと、気がついたら我慢できないほどになったりします……。こうならないためにも、痛みは早めに対処したほうがよいだろうと考えています。