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末梢血幹細胞移植

1.自家末梢血幹細胞移植

血液は白血球、赤血球、血小板という血液細胞と液体成分である血漿から成り立っています。白血球、赤血球、血小板という血液の細胞の全てを作り出す源の細胞を造血幹細胞といいます。造血幹細胞は自分自身が増殖しながら数を保つと共に、一部は白血球や赤血球や血小板に姿を変えて、体の血液細胞を保っています。造血幹細胞は骨髄の中に多く含まれています。また、末梢血にもわずかに存在し、抗癌剤療法の後や造血因子(血液を作るシステムを促進するホルモン)を使った後の末梢血には多数出現します。

白血病、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫は抗癌剤や放射線が有効な悪性腫瘍(ガン)です。これらの疾患では、抗癌剤や放射線を通常の量よりも増やせばさらに悪性腫瘍には効果がある一方で副作用が強くなります。悪性腫瘍を根絶するために超大量の抗癌剤投与や放射線照射を行うと、悪性腫瘍にはとても効果がありますが、副作用で血液を作り出す力がなくなって患者さんは亡くなってしまいます。それをあらかじめ採って置いた自分の末梢血の造血幹細胞を移植することで救うというのが自家末梢血幹細胞移植の原理です。

具体的には、まず、自家末梢血幹細胞を採取します。末梢血の造血幹細胞は抗癌剤療法の後のある短い期間(数日)の間、増えます。そのタイミングに自家末梢血幹細胞を採取します。患者さんの末梢静脈にカテーテルを挿入して、それを血液分離装置につなぎます。患者さんの末梢血がカテーテルから血球分離装置に流れ、その装置で必要な細胞を分離して、その他の血液は患者さんの体に戻ります。この操作は1日に約2〜3時間かかります。これを末梢血の造血幹細胞が増えている数日のあいだ続けて必要な量の自家末梢血幹細胞を採取します。採取した自家末梢血幹細胞は処理して凍結保存します。

次に、超大量の抗癌剤投与や放射線照射+自家末梢血幹細胞移植です。原理的にはうまくいく筈ですが、危険をともなうものですので、実際に移植療法をおこなう前に、移植療法中に重篤な感染の原因となりうるものがないか、1週間程度かけて全身をよく検査します。そして約1週間程度の超大量の抗癌剤投与や放射線照射をおこない、その後、凍結保存しておいた自家末梢血幹細胞を移植します。造血幹細胞は血液の一種ですので、移植といっても肝臓移植や腎臓移植などとは異なり、移植自体は輸血と外見は変わりません。

移植後はしばらくの間、白血球と血小板がとても少ない時期が続きます。この間には、感染症や出血の危険性があります。また、さまざまな内臓の障害がおこる可能性があります。移植後、2週間足らずで通常、白血球数は回復してきます。白血球や血小板の数がある程度、回復して、全身状態も回復すると退院となります。

先に書きましたように、造血幹細胞は末梢血以外に骨髄にもあります。そこで、自家末梢血幹細胞移植以外に自家骨髄移植という方法もあります。自家骨髄移植ではまず、患者さん自身の骨髄を採取する必要があります。骨髄採取における合併症の多くは麻酔に伴う合併症です。これまでに世界で4例の死亡事故が報告されており、いずれも麻酔に伴うものと考えられています。また、麻酔薬によって肝障害を起こすことや、一部の特殊な体質の人で筋肉が融解するという合併症も知られています。骨髄の採取量は数百ccに達しますので、大量出血とおなじような負担が体にかかるため、輸血も必要になります。また、骨盤の数十カ所以上に針を刺しますので、麻酔が覚めた後に痛みが続くことがあり、長い場合には2週間以上も腰の鈍痛が続くことがあります。また、発熱や骨髄穿刺部からの出血もしばしばおこります。骨髄移植に対して、自家末梢血幹細胞移植の大きな長所は全身麻酔を必要としないことです。また、骨髄移植よりも末梢血幹細胞の方が移植後の造血の回復が早いことが知られています。そのため、感染症の減少、輸血量の減少、入院期間の短縮が期待できます。そこで、自家骨髄移植よりも自家末梢血幹細胞移植が一般に広く用いられています。

2. 同種末梢血幹細胞移植

自家末梢血幹細胞移植では自分の末梢血の造血幹細胞を移植しますが、その代わりに自分以外の人(ドナー)の末梢血の造血幹細胞を移植する方法を同種末梢血幹細胞移植といいます。自分以外の誰のものでもよいわけではなく、輸血では血液型が合わなければいけないように、造血幹細胞移植では白血球の型(Human Leukocyte Antigen: HLA)が合わなければ出来ません。同種末梢血幹細胞移植は自家末梢血幹細胞移植が有効な白血病、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫などの悪性腫瘍のほかに再生不良性貧血にも有効な治療です。再生不良性貧血では、患者さんの弱った造血幹細胞をドナーの強い造血幹細胞と入れ替えることによって治すことができます。

同種末梢血幹細胞移植の合併症には、自家末梢血幹細胞と同様な合併症がある上に、移植片対宿主病(graft-versus-host disease; GVHD)と呼ばれるものがあります。これはドナーのリンパ球が患者さんの内臓を異物と判断して攻撃する反応によるものであり、重大な合併症の一つです。その反面、ドナーのリンパ球が体の中に残っている腫瘍細胞を攻撃してくれる効果(graft-versus-leukemia;GVL /graft-versus-tumor;GVT効果)があります。

同種末梢血幹細胞では、ドナーから末梢血幹細胞を採取する必要があります。ドナーに5-6日間ほど入院して頂きます。その間にG-CSFという白血球を増やす薬を注射します。そうすると末梢血中の造血幹細胞が増えて採取可能となりますので、ドナーの末梢静脈にカテーテルを挿入して、それを血液分離装置につなぎます。ドナーの末梢血がカテーテルから血球分離装置に流れ、その装置で必要な細胞を分離して、その他の血液はドナーの体に戻ります。この操作は1日に約2〜3時間かかります。これを末梢血の造血幹細胞が増えている2-3日のあいだ続けて必要な量の末梢血幹細胞を採取します。

3.臍帯血移植

臍帯血とは臍の緒と胎盤のなかの血液のことです。臍帯血の中には造血幹細胞が豊富に存在します。同種末梢血幹細胞移植ではドナーの末梢血の造血幹細胞を移植しますが、その代わりに臍帯血を移植する方法を臍帯血移植といいます。

臍帯血はあらかじめ同意を得た妊婦さんから出産の時の胎盤を提供してもらい、胎盤から出ている臍帯の血管から臍帯血を採取して凍結し、臍帯血バンクで保存されています。

臍帯血移植の特長は、臍帯血がすでに保存されているので移植までに時間がかからないことです。また、臍帯血にふくまれているリンパ球などの免疫細胞が未熟なので白血球の型(Human Leukocyte Antigen: HLA)が一致しなくても有害な移植片対宿主病(graft-versus-host disease; GVHD)がおこりにくい特徴があります。

4.ミニ移植

同種末梢血幹細胞移植や臍帯血移植は、移植に伴う合併症のために、55歳以下の若い人で、しかも内臓の障害のない患者さんだけに限られていました。ミニ移植は移植前の抗癌剤の強度を弱め、副作用を軽くすることにより、同種末梢血幹細胞移植をより多くの患者さんに行えるようになった治療法です。ミニ移植では、通常の同種末梢血幹細胞移植や臍帯血移植における悪性腫瘍を根絶するための超大量の抗癌剤投与や放射線照射をおこなわないので、その分の悪性腫瘍に対する効果はありません。そのかわりに、通常の同種末梢血幹細胞移植や臍帯血移植でみられるGVL/GVT効果によって悪性腫瘍を治療しようとするものです。ですので、通常の同種末梢血幹細胞移植や臍帯血移植にくらべて、超大量の抗癌剤投与や放射線照射による感染症や出血の危険性は軽減されますが、同じようにGVHDや免疫不全による感染症のリスクは変わりません。