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肝臓癌に対するラジオ波焼灼術

1.はじめに

肝細胞癌の約85%はB型およびC型肝炎ウイルス感染による肝硬変を背景とし、肝機能の低下を伴っているため、癌だけでなく肝機能も予後を決めるものとなります。そのため癌の大きさや個数だけではなく、肝機能を考慮した治療法の選択が必要となります。さらに肝細胞癌は、治療後も異時性、同時性に再発する頻度が高く、肝切除後の5年再発率は64〜72%といわれております。このため再発時の治療も念頭に置き、肝機能を温存することも考慮しなくてはならず、他の癌以上に体への負担が少ない治療が重要とされます。

肝臓以外に発生した癌が肝臓へ転移したものを転移性肝癌といいます。癌であれば原発臓器に関係なく肝臓へ転移する可能性があり、各癌の発生頻度や死亡率から推測すると、転移性肝癌は、肝細胞癌の約20〜30倍の発生率とされております。転移性肝癌は予後を決めるものとなり得るため、転移性肝癌に対する積極的な治療も必要となります。今後、各種癌の増加とともに、転移性肝癌に対する体への負担が少ない治療も重要となってきます。

はじめに

2.RFAとは

肝臓癌(肝細胞癌、転移性肝癌)の体への負担が少ない治療としては、経皮的局所療法、経カテーテル動脈塞栓術(TAE)や化学療法、放射線療法等があります。このなかで、安全性と効果、肝機能への影響、再治療の容易さ等の点から総合して考えると、経皮的局所療法が勧められます。この経皮的局所療法としては経皮的エタノール注入療法(PEIT)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)などが行われていましたが、最近では経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation ; RFA)が主流となってきています。

RFAは1990年代の初めから臨床応用され、本邦では1999年頃から本格的に導入され、2004年4月から保険適応となりました。腫瘍の中に直径1.5mmの電極針を挿入し、電極周囲を450kHzの高周波(ラジオ派)により誘電加熱し、癌を凝固壊死させる治療法です。RFAでは、1回の焼灼で径約2〜3cmまでの範囲を予想どおりに壊死させることができます。RFAの機器としては、本邦では現在、RITA社、Boston Scientific社、Radionics社の3社の製品が市販されていますが、前2者では展開型の電極針を使用するのに対して、Radionics社の通常の電極は針状であるところに特徴があります。当科では主にRadionics社製の電極を使用しております。

ラジオ波電極針

ラジオ波電極針

ラジオ波発生装置

ラジオ波発生装置

Cool-tip system

Cool-tip system

肝細胞癌のRFA治療

【治療前のCT画像:左が動脈優位相、真ん中は門脈優位相】【治療前のCT画像:左が動脈優位相、真ん中は門脈優位相】

【RFA後のCT画像】 【RFA後のCT画像】

3.当科でのRFAの適応

RFAの一般的適応としては以下の通りです。

  • 病変が切除不能または患者様が切除を希望しない
  • 病変が3cm3個以内あるいは5cm以内単発(注)
  • 血小板5万/mm3以上
  • プロトロンビン時間50%以上
  • 総ビリルビン3.0mg/dl以下

注)各々の症例において臨機応変に適応拡大を行っており、当科では現実的には大きさや個数に制限は設けておりません。大きいものや個数の多いものに関しては、TAEなどを先行させるなど、治療の工夫を行っています。
また、体位変換や人工胸水、人工腹水を作成することにより、存在する場所の制限も設けておりません。
肝機能に対しても、RFAしか有効な治療法がないと判断した場合には適宜補充することにより、適応拡大を行っております。

除外基準は以下の通りです。

  • 肝外病変がある(肝細胞癌症例において)
  • 門脈や胆管に浸潤している
  • 総胆管の手術歴がある

但し、RFAしか有効な治療方法がないと判断した場合には十分な説明を行ったうえで、適応拡大を行っております。

4.当科でのRFAの方法

当科でのRFAは局所麻酔下で経皮的に超音波誘導下に行います。
緊急時の対応や安静時の介助のため、治療日当日は御家族の付き添いをお願いいたします。
患者様ケアの質的向上と効率化を追及するためクリニカルパスを導入しております。

治療前日まで
  • 出血の危険を増す薬剤を内服している場合は治療前に休薬する必要があります、念のために内服中の薬は全て提出してください。
  • 適応・除外基準(上述)を再確認し、血小板が低い場合、事前に経口血小板産生促進剤(ルストロンボパグ錠)による投薬で血小板を増加させます。必要であれば輸血(血小板、新鮮凍結血漿)の準備をいたします。
治療当日
  • 午前治療の場合は朝食、午後治療の場合は昼食止めになります、大まかな治療開始時間は前日の夜に決定します。
  • 治療開始前に点滴を開始し、治療直前より鎮痛薬などを点滴から注入します。なお全身麻酔と異なり、治療中の意識は保たれます。
  • 治療中は血圧・脈拍・酸素飽和度を定時的に測定します。
  • 穿刺部位付近の消毒と、両側の大腿部に対極版を貼り付けます。
  • 超音波で病変の位置を確認します。このとき、必要に応じて体位変換や人工胸水、人工腹水を作成します。
  • 局所麻酔を行い、超音波誘導下に電極を病変に挿入します。
  • いよいよ治療の開始です。1ヶ所の焼灼にかかる時間は約6〜12分で、径約2〜3cmまでの範囲が壊死します。このとき、みぞおちの部分や右の肩に痛みを感じることがあります、痛みの程度によっては鎮痛薬の注射を追加します。
  • 腫瘍の大きさや個数によっては電極を何回かに分けて挿入します。
  • 治療にかかる時間は症例によりますが、通常1〜2時間程度です。
治療終了後
  • 原則として、術後4時間は絶対安静、禁食です。
  • 術後4時間後も翌朝までは、出血を防ぐため、床上安静です。室内トイレへの歩行以外は控えてください。
  • 約半数の患者様に、術後38度以上の発熱がみられます。

RFAにて肝臓癌が安全に効果的に治療されたかどうかは、治療翌日以降に施行する腹部造影CTで評価します。追加治療が必要と判断した場合には、全身状態が改善次第、再度RFAを追加いたします。肝臓癌の大きさや個数、存在する場所によっては複数回の治療が必要となる場合があります。
また、後述する偶発症により入院期間が延長する場合もあります。 退院は最短でも治療後3日目となります、退院後も術後2週間は旅行や激しい運動などは避けてください。
(詳しくはこちらをご覧ください)
サンプルスケジュール (194KB)

5.RFAの偶発症

RFAは肝臓癌に対する体への負担が少ない治療とされており、当科でも安全で効果的なRFAを日々目指しておりますが、癌に対する治療である性格上、偶発症は避けられません。ひとたび偶発症を引き起こすと、命を落としたり、深刻な後遺症を残したりする危険があります。また、偶発症の治療のために特別な処置や手術が必要となり、入院期間の延長や医療費の負担が増えることが余儀なくされる場合もあります。主な偶発症には以下のものが上げられます。

  • 出血:腹腔内の出血、胸腔内の出血、胆道からの出血、皮下の血腫
  • 肝膿瘍:癌ではないところの壊死部に胆管からの細菌感染が起こる
  • 消化管穿孔・穿通:消化管への直接穿刺、消化管への通電・熱伝導により発生する
  • 播種:針を挿入した経路や腹膜に癌細胞が付着し、新たに癌が発生する

当科では各々の偶発症に対して発生メカニズムを知り、その上で予防策を講じ、早期に診断・治療することにより偶発症の予防・軽症化を心がけております。
なお、他施設のRFAに伴う偶発症頻度の報告としては以下の通りです。

  • Mulierらの論文: 3670例中、0.5%の死亡、8.9%の偶発症
  • Livraghiらの論文: 2320例中、0.26%の死亡、2.15%の偶発症
  • 関西地区からの報告: 2614例中、0.5%の死亡、7.9%の偶発症

6.人工胸水、人工腹水の作成

人工胸水法は、胸腔内に人工的に水(5%ブドウ糖液)を注入する方法で、横隔膜直下に病変が存在し、肺により超音波による描出が妨げられる場合におもに用います。また、病変が描出できるが、穿刺経路に肺が介在し、そのまま穿刺すると気胸等の偶発症の危険がある場合にも用います。

人工腹水法は、腹腔内に人工的に水(5%ブドウ糖液)を注入する方法で、目的は3種類ありあります。 (1)病変と消化管や隣接他臓器を分離し、熱損傷による偶発症を防ぐため (2)肝表の病変と腹膜を分離し、超音波の描出を改善したり、焼灼に伴う疼痛を緩和するため (3)病変と横隔膜を分離し、超音波の描出を改善したり、疼痛を緩和するためです。

人工胸水、人工腹水作成自体に伴う合併症はこれまで経験ありません。

7.当科でのRFAの特徴

  • 当科では安全で効果的はRFAを日々目指しております。
  • 患者様ケアの質的向上と効率化を追及するためクリニカルパスを導入しております。
  • 原則として治療前日の入院です。入院期間は2回のRFAを施行する場合は約10日間となります。
  • 治療日は火曜日と金曜日です。場所は当院消化器内科病棟の処置室で行います。
  • 当科では大きさや個数に制限は設けておりません。
  • 当科では体位変換や人工胸水、人工腹水を作成することにより、存在する場所の制限も設けておりません。
  • RFAしか有効な治療法がないと判断した場合には適応拡大を行っております。
  • 肝細胞癌だけではなく、転移性肝癌も積極的に受け入れております。
  • RFA適応以外の肝臓癌の患者様も積極的に受け入れております。
  • 腫瘍播種を予防するため、他施設と共同し、新型電極を開発しております。
  • 治療担当医は消化器内科、小山 裕司、金崎 峰雄、大西 俊彦、寺谷卓馬です。

8.当科でのRFAの成績

NTT東日本関東病院 経皮的局所療法

【当科での経皮的ラジオ波焼灼療法】
2006/4-2016/12

のべ患者数 2881例 肝細胞癌 2780例
肝内胆管癌 48例
転移性肝癌 843例
その他 9例

【合併症】
2006/4-2016/12

合併症 118/3680例 3.2%
胸腔内出血 23例
腹腔内出血 23例
肝膿瘍 13例
肝梗塞 11例
胆道出血 5例
気胸 4例
胸水貯留 3例
消化管穿孔 2例
その他 24例
術死 10例

※(ラジオ波焼灼療法後30日以内の死亡=術死例について、術中に急性大動脈解離が生じた1例、腫瘍随伴症状によると思われる高カルシウム血症が死因と思われる1例、左胸膜転移からの血胸に対して止血目的に施行したラジオ波焼灼療法でその後再出血による血胸が死因となった1例、膵癌肝転移巣に対してラジオ波焼灼療法を施行したが、その後膵癌が心膜・肺へ浸潤して呼吸不全にて死亡した1例、肝細胞癌の前頭骨転移に対するラジオ波焼灼療法を施行したが14日後後頭葉転移破裂によって死亡した1例、退院後消化管出血にて他院にて死亡した1例を含む)

【転移性肝癌 原発巣】
2006/4-2016/12

大腸癌 605例
胃癌 63例
乳癌 49例
膵癌 38例
肺癌 14例
腎癌 12例
卵巣癌 11例
咽喉頭癌 6例
十二指腸 5例
子宮癌 5例
食道癌 5例
その他 30例
合計 843例

【新規患者数】
2015/1-2016/12

肝細胞癌 139例
肝内胆管癌 3例
転移性肝癌 36例

9.RFAを希望される患者様へ

  • 当院消化器内科外来にお越しください。予約外の診察となりますのでお待たせすることがあります、ご了承ください。
  • 紹介状・画像をお持ちの方は、必ず持参してください。
  • 電話や電子メール等では問い合わせを行っておりません。
  • 治療担当医による超音波検査を毎週火曜日・金曜日の午前に行っております。初診時に予約をお済ませください。
  • 超音波検査後に治療方法の説明と入院日をお知らせいたします。
  • RFA適応以外の肝臓癌の患者様の御相談も受け付けております。