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増加している大腸癌

1.増えている大腸癌

大腸癌は増加しています。胃癌は日本人癌の1位を長らく占めていましたが交代して大腸癌が上がってくる機運です。表1をごらんください。大腸癌の罹患率(病気になった方の人数)は男女とも平成では昭和の3倍になっています。またその年齢をみますと50歳以上から急激に増加していることがわかります。表2は大腸癌のうち直腸をのぞいた大腸癌(結腸癌)の人口10万人あたりの死亡率を年齢で調整した頻度をしめします。人口10万あたり1960年では大腸癌死亡は男性で4人でしたが、98年には14人に増加しています。この傾向は女性でも同じです。

年齢階級別罹患率

2.大腸癌はなせ増えたか?

この質問に正確には答えられません。大腸癌はなぜできるのかが本質は判っていないためです。遺伝子の異常がいくつか重なり大腸癌が発生するということまでわかっています。なぜ遺伝子の異常が増加したのかが問題です。でもいくつかの傍証から類推されます。食生活の変化です。米国では胃癌は少なく、大腸癌は1位です。日本人の移民集団でハワイ、米国と比較すると米国に移住したグループで最も大腸癌の頻度が高かったことから欧米風の食事が原因という疫学調査があります。わが国でも米食中心から洋食となり動物性脂肪を多く取り、線維の多い野菜を敬遠する群で大腸癌が多いことがわかっています。食事の変化は10年、20年後に疾患の変化として現れてきます。

3.大腸癌になりやすいグループ

家族性大腸ポリポーシスという遺伝的な疾患があります。日本人がその遺伝子の特定をした疾患で、大腸に100個以上ポリープができ、若年でもポリープからの発癌がしやすく、40歳代で癌になり50代では癌死するとされる病気です。大変まれで日本では人口の約0.02くらいしかありません。また遺伝性非ポリポーシス性大腸癌という遺伝因子の判っている疾患があります。これは家系に大腸ポリープや癌が多発するもので、乳癌、子宮癌なども多くでる遺伝子異常です。少なからずあるとされていますが、両者を合わせても全大腸癌の5%以下とされています。この2つの疾患からお気づきのように、ポリープが癌に関係するのではないかと推定されます。大腸癌はポリープからできるという仮説が容易に理解されます。事実大腸ポリープを切除すると小さな癌が入っていることがしばしば経験されます。しかし最近日本の研究でポリープを経ずに癌ができることも少なくないことが明らかになりました。このほか潰瘍性大腸炎やクローン病といった慢性腸炎ではポリープを経ずに癌化しますし、癌になる確率が一般より高いことが知られています。しかしポリープから癌化するルートが主でありそうです。ではなぜポリープができるか、ポリープがなぜ癌化するのか?APCという癌抑制遺伝子の異常がポリープの発生に関与すること、ポリープの悪性度の増加にrasという癌遺伝子が関与すること、癌化にp53という癌抑制遺伝子などが関係していることなどがわかってきていますが、まだまだ詳細は解明されていません。

以上まとめますとなりやすい因子としては、

  • 1.家系に大腸癌がある
  • 2.大腸ポリープがあった
  • 3.肉食が多く線維の多い野菜をとらない
  • 4.潰瘍性大腸炎やクローン病に長年かかっている。

などの方は特に注意が必要です。先ほどの表にあるように50歳以後で頻度が上がってきます。1−4にあたる方々は検診をうけましょう。

4.大腸癌検診:早期発見をするためには

大腸癌の早期発見は腹痛や血便などの症状が出る前に検診で便の潜血反応を行うことが勧められています。潜血とは目でみて赤い血便(顕血)とは異なり、出血量が少なく便に混在すると見えなくなる程度の血便をいいます。以前は肉やたまねぎを食べると反応してしまう化学的な反応を利用していましたが、現在はヒトの血液成分にのみ反応する免疫学的便潜血反応を使用していますので、より鋭敏、かつ感度のよい検査になっています。連日2日採便して提出するものです。洋式の便器でも取りやすい工夫ができていますので、ぜひ、してみてください。毎年したほうがよいでしょう。もちろん症状があって心配ならまず便潜血をおこなうのも好い手順です。
便潜血は陽性があれば検査をしましょう。2回の検査で、陽性と陰性であっても陽性と判断します。

5.大腸内視鏡検査とは

便潜血反応が陽性であれば検査となります。当院では原則、内視鏡検査をしています。大腸は便があると観察も挿入も困難ですので、排便をキチンとさせる必要があります。施設により前処置方法が異なりますが、当院ではご高齢の方でも十分できるようなるべく負担の少ない方法を行っています。具体的には前日夜にうどん、またはそば の食事にしていただき、就寝前に下剤を飲みます。次の日は水分のみ十分取っていただき腸管洗浄液を900cc飲んでもらいます。これで準備は終了です。トイレが心配な方は病院に着いてから腸管洗浄液をのみます。この液は血液の濃度とほぼ同等であるため腸から吸収されずにそのまま便と共に排出されます。水分が吸収されて腎臓や心臓に負担をかけることがありません。血液をサラサラにさせるバファリンやワーファリンなどを内服されている方は薬をとめる必要があり主治医にご相談ください。
検査では麻酔は通常使用しません。これで100人のうち98人までは可能です。ただ腹膜炎や骨盤炎などで癒着の激しい方は困難である場合があります。麻酔剤を使用しますが、それでも困難な場合があり、精度は落ちますが、レントゲン検査を併用することもあります。

6.大腸ポリープが疑われたら

当院で麻酔をしないのは検査をしながら本人に内視鏡所見をみてもらうことが重要と考えているからです。内視鏡は見える範囲しか見えません。見ようではなく観よう、診ようとしないと検査は不十分になる可能性があります。ご本人の納得がえられる検査をめさしているのです。
さて大腸癌の内視鏡診断は丁寧に観察していけば容易です。少なくとも異常は簡単にわかります。写真をご覧ください。

大腸ポリープが疑われたら 1.初めてみてもコリャまずいなと感じることができるでしょう。真ん中に潰瘍ができていて出血しています。潰瘍を囲むように隆起があり全体で進行した癌で内視鏡では切除できません。ところがポリープとなると観察も困難なことがあります。

大腸ポリープが疑われたら 2.よくみるとでこぼこがわかりますが粘膜が十分広がっていないとうっかりしそうです。この程度ですと内視鏡での治療ができるのです。次にわかりやすいポリープを示します。

大腸ポリープが疑われたら 3.これですと存在診断も容易で治療も内視鏡で十分となります。

7.ポリープの治療

ではポリープはどうやって治療するのでしょうか。代表的なポリープ切除を示します。まず切除できるポリープか、切除すべきでないポリープか肉眼診断です。切除すべきと診断したところで切除にかかります。

ポリープの治療1.ポリープの根元に生理食塩水を注入します。大腸の壁から浮き上がらせるのです。内視鏡の手元からチャンネルを通して細い管をいれて行います。ポリープの根本に生理食塩水を注入します。

ポリープの治療 2.かなり浮き上がってきました。こうすることで大腸壁への熱の影響がなくなります。

ポリープの治療 3.次に手元のチャンネルからスネアという道具を挿入し手元の操作で輪を広げます。そしてポリープの根本にかけます。

ポリープの治療4.

ポリープの治療 5.ポリープの根本が十分入ったところで輪を締めます。ポリープの頭が向こうの大腸に接触しないことが大切です。通電して高周波の熱で切除します。

ポリープの治療 6.切れたところです。出血は今はありません。

ポリープの治療7.切断面に出血予防のためのクリップを装着して終了です。

8.重要な病理診断

重要な病理診断

切除されたポリープはホルマリンで固定して顕微鏡検査にまわります。この検査が重要で、当院では専門の病理医師が厳正な診断を早期に確実にしています。病理では顕微鏡下に5段階に正常から癌までを判定し2週間以内に通知します。癌であれば切除したポリープの切除断端に癌の残存があるか、粘膜の下にもぐっているかどうかを特殊な染色で判定します。粘膜に限局した癌は粘膜内癌といいポリープの切除のみで治療が終了します。内視鏡治療のみで癌が治ってしまうわけです。
実際の病理標本の画像です。画面の左側に右側の単純な構造物より明らかに曲がりくねった構造物が密集しています。この部分が腺癌の部分です。これが取りきったポリープの中にあって体に残っている可能性がないと判断された場合治療は完了となります。

しかし深くに癌がある場合は血管やリンパ管に癌細胞が入り込み所属するリンパ節に転移をします。腸の中からの治療は不可能で手術的な治療となります。それでも早期ですので成績はよいに決まっています。

9.大腸癌の手術治療

大腸の進行癌の手術成績は胃癌よりも良好です。また検診で発見される大腸癌は一般に治療成績がよく、治療を早く受けましょう。早期癌ですと腹腔鏡を使用した縮小手術も成績は良好です。肛門近くの早期癌では腰椎麻酔下に肛門から内視鏡をいれて病変をしっかり深く切除する方法(TEM)も可能です。いずれも当院外科にて良好な成績を残しています。ともかくも検診を受けポリープの段階で内視鏡切除をめざすのが得策でしょう。検便で発見された大腸癌の治療成績は症状があって発見された群より成績がよいとの結果がでています。切除できないポリープや進行癌でも積極的な治療を早期に行える大腸癌検診は非常な意義があることを強調したいと思います。