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食道癌・胃癌の内視鏡治療

昔の内視鏡検査は、病気の診断をするものでしたが、現在では機器の進歩改良により、診断ばかりでなく治療の分野に展開され、将来が期待される分野に成長してきています。ここでは代表的な胃癌や食道癌の内視鏡治療の実際について写真をお見せしながら説明していきます。

Q. どんな癌が治療できるのですか?

A. 一口に癌といっても大きさにより治療方法が変わってきます。 内視鏡による治療が選択できるのは早期の癌であり、進行した癌では治療の対象になりません。図1をご覧下さい、食道の壁の構造を示します。

どんな癌が治療できるのですか?

この中で表層の上皮内にとどまる癌が食道では治療対象となります。

Q. 胃ではどうでしょうか。

A. 胃の構造を図2に示します。胃では粘膜筋板をこえない癌が切除の対象です。

胃ではどうでしょうか。

Q. すると粘膜より深く潜った癌はできないのですね。では横に広がったのはどうでしょうか。

A. 内視鏡学会のガイドラインがありまして2cm以内という一応の規定があります。しかし、最近いろいろ新しい道具や工夫がなされ、2cmをこえる大きさの病変も切除できるようになりました。

Q. 潰瘍ができているのはダメですか?

A. “びらん”といって上皮がはがれた程度なら良いのですが,深い潰瘍が出来ている場合、潰瘍の部分は粘膜がないので粘膜を越えて癌が入っていることになり一般的には対象になりません。

Q. ではどうやって粘膜内であることを区別するのでしょうか?

A. 専門語では深達度診断といって大変重要なポイントです。これまで既に切除された病理標本から内視鏡所見を対比して様々の特徴が明らかにされて深達度診断が可能となりました。経験があれば通常の内視鏡で判断できます。客観的には超音波内視鏡という器械があり深達度を判定できますが、正解率は約80%です。

Q. では代表的な内視鏡でとれる癌を見せてください。

A. 写真1は食道の表在癌の例です。粘膜は平坦ですが一部に赤く色が変化している部分があります。写真は分かりやすいように多少空気を抜いて撮影されているため少しへこんで見えます。十分ふくらすと平坦になってしまいます。これをチェックするための努力と経験が必要です。 つぎにルゴール(ヨード)という色素を散布します。写真2の様に通常の粘膜は褐色に染色されます癌の部分は染色されず、横白色になります。くっきりと範囲がみえてきました。この部分を切除するわけです。

写真1 写真1

写真2 写真2

Q. 切除の実際を教えてください。

A. ルゴール染色が薄くならないうちにマーキングをします。切除範囲の決定です。つぎに食道の粘膜下に色素を混じた生理食塩水を注入し粘膜を浮き挙げます。つぎに内視鏡につけたフードで粘膜を吸引します(写真3)。フードの外側にあるスネアというワイヤーで根本を絞めます。 つぎに高周波電流をワイヤーに通電し粘膜を焼き切ります。 写真4は焼き切ったあとの状態です。見事に切除され下の筋層が露出しています。出血は全く見えません。

写真3 写真3

写真4 写真4

写真5 写真5

次に,写真5のように、切除粘膜を回収し、広げて固定、病理検査に出し、専門家により癌の部位、範囲の鑑定をうけます。綺麗に切除粘膜内に癌が収まっていれば治療は完了となります。

Q. 痛みはありませんか?

A. 検査中はありません。病棟にもどって鎮静剤がなくなる頃多少の違和感を訴える方が多少あります。食道では全周の粘膜を切除すると、狭窄といって食道が細くなり食事がつかえてしまいます。 したがって、早期に病変を発見したいわけです。

講義: 食道癌の危険因子は喫煙と飲酒の両方をされる方です。また熱いものや辛いもの、食塩の強いものを摂取することも誘引となります。普段から予防につとめましょう! ごらんになったように切除可能な食道癌は非常に平坦で自覚症状は殆どありません。レントゲンでの発見は困難で内視鏡でも難しいのです。危険因子をお持ちの方は進んで内視鏡検査をうけましょう。

Q. 胃ではどうするのですか?

A. 胃でも隆起やビラン(粘膜の一部がとれてただれている所見)が診断の鍵になります。写真6は胃の前提部(出口に近い胃の右側)にある軽い凹凸のある粘膜がみえています。この部分が癌です。
インジゴいう色素を使用するとこの隆起が,写真7のようにさらにはっきりします。

写真6 写真6

写真7 写真7

食道と同じように切除範囲を写真8のようにマークします。
つぎに粘膜下層に生理食塩水に血管収縮の作用のある薬剤をといて注入します。 写真9に示しますように,粘膜が盛り上がってきます。

写真8 写真8

写真9 写真9

この粘膜を切除するのですが、このままではとれません。特殊な内視鏡を通して鉗子をいれ粘膜を持ち上げスネアというワイヤーで絞める方法、内視鏡にフードをつけて吸引してスネアをかける方法、特殊な針型メスで切開して切除する方法などがあります。ここでは鉗子で病変を持ち上げて切除しました。

写真10 写真10

写真10は切除後の状態です。粘膜は切除され潰瘍が形成されています。
出血はこの例ではみられません。出血があれば内視鏡から止血鉗子をいれ止血します。

食道と同じように切除した病変を病理検査に出して、癌が取り切れているか判定をしてもらいます。予想より深く入っている場合は外科的切除を追加します。

講義: 昔は胃癌と診断された場合は90%が進行癌で、外科切除しか方法はありませんでした。現在は早期癌の比率が進行癌の2倍を越え、なかんずく内視鏡切除に適する粘膜内癌の発見が増加しています。これは当院での統計ですが、2001年では早期癌56例中内視鏡治療ができた症例は8例(14.2%)ですが、2002年では81例中16例(19.8%)と増加してきています。 粘膜切除ができる病変はまだまだ限られていますが、積極的な内視鏡検査によりより小さな病変のうちに発見できれば手術をせずに内視鏡治療ができることは事実です。皆様方も早期癌の発見で喜ぶことなくさらに内視鏡治療ができるうちに癌を発見してもらいましょう。そのためには無症状でも内視鏡検査をうけることです!!