関東病院


救急科

扱う疾患および特色

救急医療の置かれた現状

これまで日本では経験のない超高齢化社会がやってきました。2017年の時点で、おおむね人口の1/4が高齢者になっています。現在の高齢者の中には年齢に一致しない元気な方もおられますが、複数の疾病が混在している状態で生命に危険を及ぼす急性疾患を発症する患者さんも後を絶ちません。

核家族化が進み、独居の高齢者や高齢のご夫婦での老老介護、認知症による生活の破綻など背景因子も複雑で、難しい問題を解決しながら、身体の健康を可能な範囲で取り戻すことが、実際に救急医療の現場で常に遭遇する実態です。

少子化により、お子さんの全体数が減少していますが、子供の怪我や病気も少なからず存在し、急患として病院に来られることもしばしばあります。

自転車の一般道路走行が増加し、転倒や自動車、自動二輪車との交通事故もよくおこる事象です。

救急医療は多くの内容を包含しているため、一臓器やある解剖の部分的な治療のみでは不十分になりやすく、一人の医師ができる範囲も当然限定されてきます。

研修医になる若手の医師たちが今後、どのように成長するのかはわかりませんが、これからの時代は“広い一般性”と“深い専門性”の両方の能力が問われる時代になってきていると感じます。

過去21年の経験から

筆者は21年の救急診療を行ってきました。“横幅の広い間口とある程度の深さのある一部の専門性”を獲得すべく努力はしてきました。いわゆる三次救急を担う救命救急センターでの専従期間が11年、二次救急を担う現在のような救急センターでの専従期間が7年、脳神経外科を単独で2年、一般外科を4年ほど経験しながら研修、研鑽を積んできました。数字を足すと、合わない・・・。それは一時的に“二足のわらじ”を履いていたためであり、救急診療と外科を平行していた時期があります(月〜金は外科、土日は救急)。

整形外科的な疾病や内科的な疾病に関しては、常に混在する状況から少しずつ学びました。日々患者さんを診ることで培ったものであり、体系だった教育方策もなかった時代でしたので、ずいぶん遠回りもしたものです。

ただ、救急医療が非常に辛く、面倒なものかと言えば、私はそうは感じておりません。未知に対する好奇心を様々な形でかなえてくれる機会であり、今ここに困った患者さんがいることで診療、治療に意欲がでます。本来的な医師として最も医師らしい仕事であるとも思っております。

これからの私の仕事は大きく分けて二つあります。一つは今現在行っている救急診療の継続とレベルアップをしていくこと。もう一つは私の持った“知恵と技術”を後進に伝えていくこと。人が生きている限り、救急医療がなくなることはありません。少なくともあと30年は現状の状況が続くと予想され、若い力が必要になります。人数がいて、一定の能力が備わっていれば、勤務シフトを作ることで就業時間を“人間らしく”作ることが可能になります。救急科のもっともよいところは、誰かが勤務していれば、災害時以外、その他の人はフリータイムとなることです。病院から出てしまうと呼び戻されることは非常に少ないことが、私のような人間でも長きにわたり勤務し続けられた最大のポイントです。

病院における救急医、集中治療医の役割

救急医は病院の玄関となる入口業務を担うと言えます。突然、体調を崩した方、事故や不慮の怪我をしてしまった方、もちろん、徐々に悪化していった結果搬送される方もおられますが、いずれにしてもご本人やご家族は不安であることがほとんどです。救急搬送後の診療として重要なことは入院管理を要するか要しないかという点について、適否判断を行うことが最も重要です。この判断は情報収集を短時間に行い、適切な検査、当座必要な治療を行いながら経過観察し、さらに追加で検査や処置、治療の必要性を検討するということができます。概ねこれらの判断は迅速性と的確性が求められ、広く視野をとった診療を行う必要があります。攻めるも守も自在な対応が大事だと考えています。サッカーで表現してみると、新たに表れた相手に対して、手探りしながら相手の強弱、程度を評価しつつ、適切な攻撃パターンをあてはめたり、作ったりする作業、いわゆる攻撃的MFといった感じでしょう。時にシュートも決めることができ、味方のFWに決めやすいパスを供給することもできるわけです。

では集中治療医はどうでしょうか?私の理想とする集中治療医は守備の要となる診療の提供だと考えています。救急医が攻撃の要とすれば、集中治療医は守備の要です。予定手術で大きな侵襲を加えられた患者さんの管理や、敗血症や臓器不全など呼吸や循環に異常を持つ患者さんをくまなく診察して、生命に関わる異常を迅速に正常化していくことが必要です。ABCという言葉で表現されるA:気道、B:呼吸、C循環を中心に原因検索を進めながらも、まさにA→B→Cの順に正常化を進める作業を行い、検査結果や治療によって得られた変化を“鍵”にさらに、推論を進めながら治療を続け、最終的に原因検索の結果をもとに、推論との照らし合わせを行ってバイタルサインを安定させる。崩れたバイタルサインが敵の猛攻であれば、最初の治療はこれに抗する“ディフェンス”であり、ボールを維持して攻撃の端緒を掴む・・・。まさに守備の要から攻撃への展開を行うのが集中治療医といったところかと思います。

二つの仕事は似ているようで似ておらず、似ていないようで似ている・・・。MFでも攻撃的な立場と守備的な立場で立ち位置も異なるのは当然ですが、ピンチがそこにあり、迅速な対応が求められる点は一緒なのであろうと思います。 両者に共通するのは、諦めないことと、立ち向かう勇気を持つことだと思います。とことん手を尽くしても負けることもあります。しかし、我々医師は勝利に美酒だけを味わうわけにはいきません。敗戦処理、これに続けてご家族には分かりやすい言葉で敗戦の原因説明を行わなくてはいけません。これをするのは監督的な立場の私のような者の仕事になるでしょうけれど、治療者として戦った先生がそれを行うことでご家族にも響くものがあるはずです。これも辛いことではありますが、医師として必ずやらなくてはいけない“仕事”なのです。医学生が医学部を卒業するまでの6年間、国家予算も相当額投入されており、国公立、私立の別なく一定の税金が医師養成のために使われていることも認識し、国民の健康と病気には対応する必要があります。救急医療はまさにその最前線ということが言えますし、誰かが担わなければならない“仕事”なのです。

現実的な研修に関して

実際に救急医や集中治療医を目指す若手の先生方には救急医がなんの専門性もない雑多な医師に見えるかもしれません。最近私がしばしば感じるのはいつみても患者さんは専門外であるということなのです。一部はなんとなしに対応できるようになったものもありますし、成書をひも解いて勉強したこともありますが、最も確実な知識と技術の修練とは患者を診ることであり、様々な治療を経験することがよいと思います。ですので、内科、外科、循環器、脳外科、整形外科などなどいろいろな診療科を半年程度から2年程度の期間で研修することも重要なことになります。当院は多くの診療科が揃っており、本人のやる気次第でいろいろなパターンの研修が可能になるでしょう。初期研修医は概ね1か月クールでのローテーションですが後期研修医はバリエーションが多く、外部での研修も行っています。現在、当院の後期研修医の立場で近くの3次救命救急センターへの出向3か月を行った医師もおります。地方病院とのパイプもあり今後展開していくことが非常に楽しみな部分でもあります。詳細は是非、センター長の私までご連絡いただければ、お教えします。

職員募集に関して

当科はこれから二次救急医療機関として独り立ちしていく過程の中で、新たに独立した診療科として地域医療、院内急変のバックアップ、集中治療を中心とした実地医療を進めていく予定です。これには私のような40代半ば過ぎのおじさんだけでは到底かなわぬ仕事になります。元気のよい、若手の先生方にはぜひ一緒に働いていただきたいと思います。詳細は職員募集のページをご覧ください。また、専門医をすでにもっている先生方の中で、立地の良い品川区五反田の地でしばらく働いてみたい、自分の力を他院で試してみたいという志のある方がおられれば、相応に遇します。