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心臓血管外科:心臓手術、血管手術を受ける患者さまへ

大動脈瘤手術

解離性大動脈瘤

大動脈の壁に突然亀裂が入り、激痛とともに大動脈の壁が裂けてしまう病気です。

(1)手術の適応

生命を脅かす状態は、破裂、血液のしみだしによる心臓の圧迫、大事な臓器への血流の途絶、大動脈の入り口にある大動脈弁の変形が強い場合です。この危険が高い場合すぐに手術が必要です。心臓の出口に近い部位から解離起こった場合(ドゥべーキーI型、II型、またはスタンフォードA型)は内科的に治療を行っても48時間の死亡率が50%と高いため、緊急手術が必要です。一方、左手に行く血管より末梢側に解離が限局している場合(ドゥべーキーIII型、またはスタンフォードB型)は、血圧コントロールによる内科的治療となる場合が一般的です。

(2)手術

手術は血管の裂け目(エントリー)をなくすように人工血管で置換する手術を行います。エントリーの位置によっては大動脈から頭に行く血管が分岐する部分を全て人工血管に変えなければならないこともあります(大動脈弓部人工血管全置換手術)。この場合には通常の体外循環とともに脳分離循環や全身の血流を一時的に止めて(低体温循環停止)行うこともあります。

(3)成績

現体制になった最近の3年で44名に対し手術を行いました。3名を除き解離発生後すぐに行った緊急手術でした。3名が亡くなられましたが、他の方は無事退院されました(病院死亡率6.8%)。

解離性大動脈瘤のCT写真。大動脈がニ層に分かれている。解離性大動脈瘤のCT写真。大動脈がニ層に分かれている。

胸部動脈瘤ならびに胸腹部大動脈瘤

胸部の大動脈が風船のように膨れて大きくなった状態です。体外循環などの補助手段を必要としますが、動脈瘤のある位置により手術の方法は異なります。

(1)手術の適応

血管径が太くなるほど破裂の危険性が高くなります。胸部大動脈(上行〜弓部〜胸部下行大動脈)では6cmぐらいが手術適応の目安となります。大きさだけでなく形体や太くなる速度によっても手術適応が決められます。動脈瘤の場合、破裂するまではほとんどの場合、無症状ですので、手術は破裂を予防するために行われます。手術を受ける方の年齢や全身状態次第では手術の危険性や合併症を併発する可能性も他の心臓手術と比べて高いので、手術の危険性よりも破裂する危険性が高いと判断された場合が手術の適応と考えてよいと思います。すでに破裂して来院される場合もあり、この場合には緊急手術となりますが、救命できない場合も少なくありません。

(2)手術

手術は拡張した大動脈部分を人工血管に置換します。動脈瘤の位置や範囲により人工血管に変えるための手段が異なり、通常の体外循環とともに脳分離循環や全身の全身の血流を一時的に止めて(低体温循環停止)行うこともあります。

(3)血管内治療(ステントグラフト)

手術件数は43件で、そのうち8件が破裂された方でした。病院死亡は2名(4.5%)でした。

(4)成績

手術件数は29件で、そのうち3件が破裂された方でした。病院死亡は1名(3.4%)でした。

(5)術後在院日数

解離性大動脈瘤、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤の年齢別分布図と術後在院日数の平均のグラフです。このグループは手術の侵襲が大きく、術後も回復に時間がかかります。待機手術の患者さんは2週間ぐらいで退院できる方もいらっしゃいますが、緊急手術が多く順調に経過しても3週間から1月在院される場合が普通です。特にご高齢の方で緊急手術を行なった場合は長期入院になる可能性が高くなります。

解離性・胸部胸腹部大動脈瘤

動脈瘤(胸部・胸腹部・解離性)

腹部大動脈瘤

腎動脈より末梢に動脈瘤ができる場合が多く、人工心肺などの補助手段を必要とせず手術ができます。

(1)手術の適応

多くの場合、破裂あるいは切迫破裂の状態になるまで無症状です。大きくなるほど破裂の危険性が高く、4.5cm前後になったところで手術を行うべきかの検討の対象となります。5cmを超えると手術適応といってよいと思います。

(2)手術

お腹を切って、切り開いた動脈瘤の上下に人工血管を縫い付けて動脈瘤を人工血管に置換します。胸部大動脈瘤と異なり、人工心肺などの補助手段を必要とせず手術ができるので、身体の負担は他の大動脈瘤手術より少なくて済みます。

(3)血管内治療(ステントグラフト)

人工血管に金属の骨組みを装着したものをカテーテルを使って血管内から動脈瘤の部位に置いてくる新しい治療方法です。手術の場合は動脈瘤を切り開いて、その上下に人工血管を縫い付けてくるのですが、この治療では動脈瘤は残したままで動脈瘤の内側から人工血管で蓋をすると思っていただければよいと思います。しっかり蓋が被されば、動脈瘤に血圧がかからなくなるので、破裂は予防されます。治療可能な動脈瘤の位置や範囲に制約がありますが、透視下にカテーテルを使用して行われるため、手術より侵襲が少なく、手術の危険性が高い患者さんには適した手段です。

(4)血管内治療(ステントグラフト)

当院ではこれまでは開腹手術による人工血管置換手術を専門に行ってきましたが、今後は適応のある患者さんにはステントグラフト治療も行います。現体制になった2007年からの3年で100名の方に手術を行い、そのうち16名が破裂による緊急手術でした。待機手術71名での死亡はなく(0%)全員元気に退院されました。破裂して出血性ショックとなった6名が亡くなられました。

(5)術後在院日数

人工心肺を使用しない手術なので比較的侵襲が少なく、大体2週間で退院できます。

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤の三次元CT。腎動脈より末梢の大動脈が紡錘状に膨れている。 腹部大動脈瘤の三次元CT。腎動脈より末梢の大動脈が紡錘状に膨れている。

動脈瘤の手術に使用する人工血管。人工血管により瘤の部分を置換する。 動脈瘤の手術に使用する人工血管。人工血管により瘤の部分を置換する。