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心臓血管外科:心臓手術、血管手術を受ける患者さまへ

弁膜症手術

弁膜症手術には弁形成手術と弁置換手術が有ります。

弁形成手術

弁形成手術とは壊れた自分の弁を修復して元にもどす手術です。

(1)弁形成手術の利点

人工弁(機戒弁)置換術では人工弁に血栓ができるのを予防するために、ワーファリンという血を固まりにくくする薬を一生飲みつづけなくてはなりませんが、自分の弁が修復できればその必要がありません。また、自分の弁を支えている腱索という支持組織を切り離す必要がないため心臓の動く機能も弁置換に比べ温存されます。このため術後のクオリティー オブ ライフは弁置換に比べ良好です。

(2)どのぐらい可能か

僧帽弁閉鎖不全症の90%以上に可能です。ただし、簡単な病変と複雑な病変があり、高齢者や心臓以外に重篤な病気を持っている方の複雑病変で手術時間を短くしたい場合には弁形成が可能でも弁置換をする場合があります。

一方、大動脈弁では形成手術の長期成績が十分でないため適応は著しく限定されます。唯一、大動脈弁輪拡張症による大動脈弁閉鎖不全に関しては自己弁温存大動脈弁基部置換術(Reimplantation手術またはDavid手術)によって逆流をとめることが可能であるため、50歳代ぐらいまでの方を対象に行っております。

(3)心エコ−

弁形成手術を確実にするためには手術中だけでなく、術前に心臓超音波検査(心エコー検査)で弁の形体と逆流の起こり方をよく観察しておく必要があります。また、手術中にも経食道エコーで手術の結果を評価します。このために、心臓エコーに熟達した循環器内科医、麻酔科医あるいは生理機能検査技師との連携が重要です。

(4)手術

僧帽弁は二枚の弁からできていて、二枚の間に高さのずれが生じると逆流が起こります。まずこの高さを合わせる必要があります。これには、悪い部分を切除したり、人工腱索を作成したりします。次に十分に二枚の弁が合わさるように弁輪形成を行います。

大動脈弁は三枚のお椀の形をした膜が合わさるようになっており、僧帽弁に比べると非常にデリケイトなつくりになっています。この弁膜自体が傷んでしまうと形成手術は非常にむつかしくなりますが、弁膜自体の損傷がほとんどなく、弁膜の付け根(大動脈弁輪)が拡張したことでおきた逆流であれば、拡張した部分を適切な太さの人工血管で置き換えてしまえば逆流をとめることが可能です。

(5)当院の成績

現体制になった最近の3年で僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成手術が31例、三尖弁閉鎖不全症に対する弁輪形成手術が16例、大動脈弁輪拡大に対する自己弁温存大動脈弁基部置換術を5例行っており、皆さん元気に退院されております。

(6)術後在院日数

年齢別のグラフです。どの方もだいたい2週間で退院しています。

僧帽弁形成

僧帽弁形成術の基本手技

ゴアテックス人工腱索による弁修復後リング(人工弁輪)による弁輪縫縮を行った例ゴアテックス人工腱索による弁修復後リング(人工弁輪)による弁輪縫縮を行った例

弁置換手術

傷んだ自己の弁を切除して、人工弁を移植する手術です。

(1)手術適応

弁膜症は病状が徐々に進行するため症状がでにくいことが特徴です。症状が出てからは一気に悪くなることも多いため、手術を最も適した時期に行うことが大切です。

(2)人工弁の選択

人工弁には、機械弁と生体弁が有り、それぞれに長所、短所があり、どちらを選択するかは術後の患者さんのライフスタイルが大きくかわるので、医師から患者さんとご家族に正しい情報を伝えることで、最終的には医師の考えだけでなく、ご自身の意思で決定することが重要です。 現体制になった2007年からの3年で116個の人工弁を使用致しました。大動脈弁置換で機械弁を28名、生体弁を61名に、僧帽弁置換では機械弁を18名、生体弁を8名に、三尖弁置換では機械弁を1名に使用いたしました。生体弁は主に大動脈弁置換術では65歳以上、僧帽弁では70歳以上の高齢者に使用しております。 機械弁と生体弁の特徴と当院での弁選択に対する考え方を示しますので、ご覧になりたい方は人工弁の選択をご覧ください。

(3)成績

 MRSA菌による感染性心内膜炎でショックになった状態で緊急手術を行った患者さん1名を含む2名の患者さんが残念ながら亡くなられましたが、他の患者さんは退院されています(病院死亡1.7%)。

(4)術後在院日数

弁膜症全体の年齢別の分布図と、大動脈弁置換、僧帽弁置換、ニ弁置換の平均術後在院日数のグラフです。全体として平均16.9±8.2日でした。このなかで、在院日数の長い患者さんは術前状態の悪い重症の方、感染性心内膜炎で抗生剤の点滴を術後も3週間以上必要とした方などです。

弁膜症

弁膜症

(5)特殊な人工弁手術

近年増加傾向にある大動脈弁狭窄症の患者さんの中には大動脈の石灰化や全身状態が不良のために通常の人工弁置換術が困難な場合があります。欧米ではカテーテルで人工弁を留置する治療法が行われておりますが、本邦では、まだ治験が始まったところで、一般的治療となるのは数年先になる見通しです。 当院ではそのような患者さんに心尖−大動脈バイパス術(左室心尖部から下行大動脈に人工弁付きの人工血管でのバイパス)を行うことで予後の改善を図っております。

全身のCT画像 全身のCT画像
上行大動脈に著明な石灰化を認める

全身のCT画像 全身のCT画像
上行大動脈に著明な石灰化を認める

術後のCT画像 術後のCT画像
左室心尖部から人工弁付きの人工血管で下行大動脈にバイパスされている。