支店ホーム > ふくしま人 > 僧侶 霜村真康


僧侶 霜村真康

霜村真康

社会に対する役割りを後押しする“人のために働く”僧侶の本分

 ひとつのテーブルで向かい合った人の意見や状況に耳を傾け、自分のことを話して聞いてもらい、会話に上がった要点を自由にテーブルクロスに書き込み内容を共有することで、参加者全員の意見がおおよそ分かる。そのようなワークショップに参加した霜村さんは、「自由にお互いを尊重して語り合える場がそもそもなかった」と話します。
 「“これから先こういう場所があった方がいい”と思った仲間が集まり、始めたのが『未来会議 in いわき(旧いわき未来会議)』です。2013年の1回目と2回目は、いわきで活動されている方を中心に声を掛けて集まって頂いたワークショップでした。ファシリテーターの案内する声が聞こえないくらい参加者の皆さんが本当に熱心にお話しをされていて、それだけ人に話したいことが溜まっているんだなと実感しました。3回目からオープン参加とし、いわきに住んでいる方だけでなく、たまたまいわきに居合わせた方、いろいろな活動でいわきに来ている方、もちろん県内各地からいわきに避難されている方、原発や震災復旧関係で働かれている方、あらゆる方に『ご参加ください』と案内すると120人以上の方が集まってくださいました。」
 2013年は5回の「未来会議 in いわき」が開催され、震災後のいわきの医療問題や学童保育、放射能に対する将来についての問題、また旧警戒区域からいわきに避難されている方による旧警戒区域の現状を見てもらうためのツアーなど、新たに派生した様々なプロジェクトが続けられています。
 2014年は菩提院などを会場に3回開催され、霜村さんなどが発起人となって始まった運営メンバーも10人を超えるまでになりました。阪神淡路大震災から20年目を迎えた神戸との連携も生まれ、震災後の長い経験をされた阪神地区の人達から学ぶことも多いと、2015年には「未来会議 in 神戸」も開催されます。
 「中・高校生の頃から障がい者の福祉ボランティアをしていた経験があり、大学では社会福祉を専攻し、社会で困っている人や手助けする仕事に就きたいと思っておりましたが、ご縁があって僧侶という立場になりました。もちろん僧侶の本分としては宗の教えを伝え、日々の法事や葬儀を執り行い、寺という場を管理・運営しなければなりません。それよりも何よりも僧侶とは人のために働くということ、これはとても嬉しいことです。そのような立場にあることが、いろいろな活動をする時に、自分の精神的な後押しをしてくれていると感じています。」
 「普段の生活というものが一つとても大事な仕事で、普段の仕事をいかに充実して、みんなが仲良くできる社会を作っていけるにはどうしたらよいかを考えることも僧侶としての役割」と話し、「これからも社会に対して役立てるように努力したい」と霜村さんは結びました。

取材後記

今回「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、いわき市の菩提院副住職 霜村真康(しもむらしんこう)さん。郷土芸能「じゃんがら念仏踊り」を始めたと伝えられる、名僧袋中上人開山の由緒あるお寺の副住職の仕事以外にも、震災後のいわき市を中心に誰もが参加できる地域コミュニティ「未来会議 in いわき」や、「やびな市」などのイベント会場としても寺や境内を開放するなど、積極的に社会に役立つ活動を進めています。取材でお訪ねした平日の菩提院はいつものように玄関が開放され、気軽に立寄る檀家さんの姿が度々見られ、菩提院と地域との関わり様が垣間見られました。