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木口木版画家 野口和洋

野口和洋

観賞者を表現者へと導いた木口木版画に刻む心象世界の魅力

 2012年3月、須賀川市のCCGA現代グラフィックアートセンターに於いて、約3ヶ月間に渡って開催された「版で発信する作家たちAFTER 3.11」。福島県の版画普及振興を目的に、県内の作家と県中画廊が協力して2002年から続いてきた「版で発信する作家たち展」は、 複数の画廊やCCGAを会場に毎年9月に開催され、昨年は丁度10回展を区切りにフィナーレを迎える特別展として計画されていましたが、3.11の震災の混乱で開催が不可能となり、続いた原発事故によって企画の意味や問い直しが迫られ、予定を半年遅らせて、「AFTER 3.11」と改題し、版画を介した表現者として3.11に対峙した新たな作品で開催されました。
 今回「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、2003年から「版で発信する作家たち展」に参加され、木口木版画で「AFTER 3.11」へ出展された版画家の野口和洋さん。それまでのサラリーマン生活を辞めて、敢えて版画家の道を選択された経緯から、まずお話しをお聞きしました。
 「10代の頃から美術が好きで、好きな作家の画集を見たり、絵を描いていましたが、美大へ行くことはその当時考えられず、普通の大学へ進んで美術への思いは持ち続けていました。 たまたま美術誌の広告に載っていた、見たことのない絵に惹かれ、後で柄澤齊(からさわひとし)という版画家だと知り、こんな表現が版画で出来るのかと驚いて、年齢も近い作家だったこともあって、是非、本物の作品を観たいと思っていました。20年程前、偶然家内の友人が柄澤さんと仕事をされたと聞き、ぜひ親交を結びたいと思い、紹介して頂いて直接お会いすることが出来ました。お会いすると人としての魅力にも惹かれ、当時、柄澤さんが出されていた作品集を譲り受けて、毎日のように見入っていました。」
 大学を卒業後、野口さんは郷里郡山へ戻り、サラリーマンとして働いていた1994年(平成6年)、郡山市立美術館が開館したオープニング記念として幾つかのワークショップが開かれ、そのひとつが偶然柄澤氏の木口木版画講座で、柄澤氏との再会もあって講座へ参加し、そこで木口木版画の魅力を改めて認識させられたと話します。
 「4回の講座へ参加し、そこで作った版画を柄澤さんに褒めて頂いたこともあり、それを機に作った版画を柄澤さんに送って見て頂くようになりました。まだメールがない頃で、その都度丁寧な批評をお手紙で送って頂きました。その後、銀座のガレリアグラフィカなどで開かれたグループ展に参加させて頂くようになり、緻密で小さな木口木版画という世界ながら、その小ささの中に思いを込める木口木版画の魅力に益々没頭していきました。」
 その後も作品を柄澤氏に送って批評を受けながら、木口木版画の技巧を習得する期間が10年程過ぎ、ビュランを使って細かな線を版木へ刻む感覚が、それまでの野口さんの生き方や性格に共鳴するものを感じるようになり、改めて木口木版画を極めようと、それまでのサラリーマン職を敢えて辞め、版画家としての道を選ぶことになります。