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会津木綿織元 原山公助

原山公助

創意を経に伝統を緯に織り成す会津「ものづくり」の心と技

 原山織物工場は、敷地中央に位置する中庭を囲むように、右から母屋、染め場、整経場、織り場、帳場の順に建屋が並び、戦前からの貴重な産業近代建築物が、そのままの形で一部使用されて残されています。特に染め場は戦前から続く建屋で、今も当時と変わらない藍甕(あいがめ)と化学染料を使った釜かけで綿糸が染められ、そのひとつひとつの佇(たたず)まいからは、濃密な時間の積み重ねと圧倒的な存在感が放たれています。
 「弊社は織り上がった生地を染める方法ではなく、“先染め”と呼ばれる糸の染色から始めます。徳島産天然染料の藍を使った“藍染め”、化学染料を使って約80℃のお湯で染める“釜かけ”、また同じ科学染料を使った“機械染め”。“藍染め”は藍甕(あいがめ)に?(すくも)を入れると醗酵が始まり、腐敗の防止や発酵を絶やさないように毎日攪拌(かくはん)する必要があります。綿糸の質や時季にもよりますが、一週間程かけて10回以上染めを繰り返します。」
 原山さんは、“藍染め”には“釜かけ”や“機械染め”では出せない色があり、また“釜かけ”でしか出せない色、そして新しい会津木綿の柄を作る“機械染め”にしか出せない色があると話し、染め上がった綿糸は水洗いして脱水し、小麦粉澱粉と小麦粉で作った液で糊付けした後、より丈夫でしなやかになるよう2〜7日天日に晒して乾燥させます。
 会津木綿の特長である縞柄は、小幅(こはば・約37センチ)の生地に必要な本数の経糸(たていと)を、同じ長さに揃えてビーム(※1)に巻き付ける“整経(せいけい)”の工程で作られ、色の異なる複数の経糸が巻かれたボビン(※2)を縞柄の模様に合わせて並べ、1本1本の経糸を小さな穴を通してビームに巻き付けます。
 「創業当時の古くから続く縞柄や戦後に作られた縞柄など、100種類以上の柄がありますが、毎年、ビビッドな色彩の新しい感覚の縞柄を作り、東京や大阪で活躍する若いデザイナーの方々に使ってもらい、オシャレな店舗に新しい感覚の会津木綿商品を並べて頂いています。会津木綿のお客様は高い年齢層の方が多いのですが、若い世代の方にも受け入れられる、新しい感覚の縞柄を積極的に作っていきたいと思います。」
 経糸を機織の操口に掛けて、経糸に緯糸を織り込む機織の現場では、80年以上も前に製造された28台の豊田織機が並び、今も力強く稼働しながら様々な色合いの縞柄を織り上げています。
 1960年以降、生活スタイルの変化と共に会津木綿の需要が減少した後も、400年の「ものづくり」の技と心は、常に新しさを取り入れる意欲によって伝承され、伝統を活かしながらも、時代が求める趣向やクオリティに応えていくことで、会津ならではの確かな品質がさらに輝きを放ちます。

※1:縦糸を巻き取る整経機。
※2ボビン:糸を巻くための筒状の道具。

取材後記

今回、「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、400年の会津木綿の伝統を継承する、株式会社原山織物工場6代目、原山公助さん。会津地方に2軒残るだけの1899年(明治32年)創業の貴重な会津木綿の織元。博物館にあっても不思議ではない織機が稼働する、その工場の佇まいは、レトロの一言ではとても言い尽くせない、濃密な時間と伝統の重みを否応なく感じさせます。
株式会社原山織物工場「かねろく」:http://harayamamomen.com/