NTT東日本

企業情報


ホーム > 企業情報 > CSR活動 > CSR/環境マネジメント > ステークホルダーダイアログ


ステークホルダーダイアログ

ICTの利活用を通じた地域の課題解決と、
農業と未来をつなぐ革新的な技術

NTT東日本は、果樹の防霜対策を目的に果樹園の温度や湿度、照度といったデータを自動収集し、圃場環境を「見える化」する「圃場センシングソリューション」を開発し、福島県内において2017年4月より運用を開始しました。

ソリューションの導入や運用に携わったふくしま未来農業協同組合の皆さまと対話会を開催し、導入に至った経緯や地域の農業の活性化への貢献、今後の展望等についてお話しをお伺いしました。

【ダイアログ参加者】

菅野 孝志 さま
ふくしま未来農業協同組合
代表理事組合長

今野 文治 さま
ふくしま未来農業協同組合
福島地区本部農業振興課長

山口 圭介
NTT東日本
福島支店長

大張 高己
NTT東日本
福島支店
第一ビジネスイノベーション部長

福島県におけるICT利活用の状況とこれまでの取り組み

○山口支店長NTT東日本では、地域におけるさまざまな課題解決に貢献するための取り組みを推進しています。福島県内においても、クラウドサービスやAI、ビッグデータ、IoT等、最先端の技術を駆使したソリューションを提供しています。たとえば、楢葉町ではICTを利活用して最先端の教育環境を整え、地域の活性化を図る取り組みを進めています。また、広野町では被災時に必要な情報を瞬時に発信するため、町役場の上に大きなデジタルサイネージを設置しています。

私たちは地域の皆さまと連携を図りながら、ICTを利活用した課題解決に貢献しています。

○大張部長今回のテーマである農業の分野においては、JAグループさまとともに連携を深めながら成長してきました。ネットワーク基盤を提供し、金融系のデータ等の秘匿性が高いシステムの構築を協力して推進するとともに、最近では、農産物の直売所にWi-Fiをベースにして、デジタルサイネージや会計処理をその場で行うようなシステムもご活用いただいています。

○菅野組合長農業分野でも積極的にICTを利活用し、生産性を高める、安全を確保していく、そして、皆さまにおいしさを届けるための手段にしてい きたいと思っています。また、福島県では放射性物質の問題等が関心を集めています。土壌そのものの実態を知り、科学的なデータを蓄積しておく必要があると感じています。

○山口支店長2020年の東京オリンピック・パラリンピックを1つのきっかけとして、信頼がおける日本の農産物を消費者の方に口にしていただくため、GAP*1というしくみができています。土の段階から、機械や農薬の使用方法、流通等の細かい工程管理を見える化していくことが大きな課題と考えています。私たちもどのようにお手伝いできるかということを検討しています。

○今野課長私たちには、農家の皆さんと密接に関わり、重要な情報を提供していくという役割があります。ICTによるデータの見える化は、農家の皆さんに助言する際に非常に有効で、今後の農業を考えるうえであらゆるヒントが隠れていると思います。

○山口支店長私たちが持っている通信インフラやシステムをビジネスパートナーにお使いいただき、最終的に多様な形でお客さまにお届けするというB to B to Xビジネスを展開しており、JAグループさまとは良きパートナーとして協業させていただいています。

選果場の様子

○今野課長農家の皆さんが果物等を持ち込む選果場というところでは、品種ごとに大きさや糖度、色の付き具合等によって等級や階級をつけており、膨大なデータの管理にICTを利活用しています。また、農薬の使用状況等の情報を選果場や直売所と共有し、あわせて放射性物質モニタリングとも連携しており、生産基準を満たしていない農作物は一切流通させないというしくみを構築しています。これらは、ICTを利活用しているからこそできる取り組みといえるでしょう。

「圃場センシングソリューション」について

○大張部長ICTを利活用した生産管理の取り組みとして今回開発したのが「圃場センシングソリューション」です。圃場でセンサーを使って温度、湿度、照度等のデータを自動的に観測し、無線で送信したデータをオンラインストレージ上に蓄積するしくみです。この無線には、省電力でkm単位の距離で通信できるLPWA*2方式を採用しているため、モバイル回線の費用が不要で、その電力には小型の太陽光パネルを用いるエネルギーハーベスティング*3という技術を導入しており、大がかりな電源工事が不要という特長があります。

システム概要図

○今野課長福島では4月に入ると遅おそじも霜が発生し、果実に大きな被害を与えます。果物の種類ごとに、それぞれの生育段階で、「危険温度に30分以上さらされると何らかの障害が起きる」という温度が決まっています。危険温度が近づいてくると、火を焚いて圃場温度が下がらないようにします。燃焼材を10アールあたり20〜30個点火することになり、一晩で数十万円という金額がかかり、燃焼させるかどうかで農家の皆さんの作業負担と所得が変わってきます。このことから温度計の精度にこだわり、今回のシステムでは高性能の測定を実現していることが、ソリューション導入の決め手のひとつになりました。

これまでは56カ所の観測所で、JAの職員や農家の皆さんが一晩60名体制で観測していましたが、センサーの正確なデータを15分間隔で自動的に収集できるようになったことで、観測にあたる人員を大幅に削減することができました。そして、タイムラグがなくデータを配信できたことも大きいメリットと思います。

○菅野組合長これまでは火を焚いた後の温度の測定をしていませんでした。今は火を焚くことの効果がデータとして蓄積されていきます。こうしたデータを基に情報交換ができるようになると、JAと生産者の方々との関係強化にもつながっていきます。私たちが考えている以上に、農家の皆さんのICTへの期待は大きいのです。

○大張部長設備を配置するにあたって、数多く置けば細かいデータが取れますが、コストがかかってしまいます。間隔を空けると今度はあまりデータの意味がなくなってしまいます。観測拠点によって設置できる条件も違うため、最適に配置するための設計構築の部分が重要となりますが、職員や農家の皆さまには多大なご協力をいただきました。

○山口支店長ふくしま未来農業協同組合さまは果樹の防霜対策でご導入いただきましたが、他県域のJAさまでもこの実績に関心を持たれて、サクランボ農園での導入を検討されています。またデータを育苗のために使う等、さまざまな利活用を検討されているJAさまもいらっしゃいます。

○菅野組合長農作物は、温度や湿度も含めて、条件によって適正な収穫期が変わります。今までは経験の積み重ねからくる勘に頼る部分もありましたが、これからは科学的なデータに基づいて、より品質の高い農産物を皆さまに提供できるようになります。それを付加価値として価格に転嫁するくらいの枠組みをつくるということも、可能性としては十分あるのではないかと思います。

○山口支店長農業の分野での暗黙知ですね。膨大なデータの中から、AI等も利活用して最適な解を導き出していく。さまざまなデータを分析して見やすい形でお届けするというのが私たちの課題といえます。たとえば、トレーサビリティで温度と湿度を管理しながら、一番おいしいタイミングをみて消費者にお届けすることができれば、新たな付加価値を生み出すことができると思います。

○大張部長低コストでトレースする方法として、カメラの利活用も考えられます。農家の皆さまが画像を見て、「この状態に近いものを選別してほしい」といったケース等、ICTと農業のシナジー効果の出るところだと思います。

農業ICTのさらなる利活用による今後の展望

○今野課長環境制御にもICTを利活用しています。実は、ビニールハウス内のCO2濃度が収穫量に影響を与えることがわかってきました。換気のためにビニールを開ける時間もセンサーで管理し、最適な濃度にするための必要な情報を収集し、分析して決定します。現在は、このデータはビニールハウスに行ってパソコンを見ないとわからないため、どうしてもタイムラグが起きます。

○菅野組合長種類によっては収穫量が1.5倍くらい違うのです。上手く管理してタイムラグもなくすべて対応できるようになれば、より効率性を高めることができるでしょう。このようなデータを生産者にとってわかりやすく加工していくことも重要です。

今、若い人にも農業に魅力を感じている人たちがいます。農業は難しいというイメージや技術的な問題等をICTによって解決できるかもしれません。本人の努力も必要ですが、匠の領域に入るまでに今まで5年かかったのを2〜3年以内にできれば、経営も安定してきます。それにより農業に対する魅力が高まり、若い人たちが飛び込んでくる可能性が高まってきます。

○大張部長今ある技術だけでなく、まもなく実用化されるサービスもあります。皆さまが遠いと思われているものが、実はすぐ近くにあるのかもしれません。上手くマッチングさせることで新しいものを生み出せるのではと思って、わくわくしています。

○菅野組合長NTTブランドの農作物をつくってみたらいいのではないでしょうか。JAや地域のブランドとNTT東日本のブランドを組み合せてみたら面白いことになると思います。

○今野課長川俣町の山木屋地区は避難指示が解除され最近になって営農が再開しました。生産者の皆さまに、今まで地域になかった作物を展開しませんかという呼び掛けをしています。NTT東日本とJAがコラボレーションした、避難指示解除区域での営農再開に向けたブランド形成のようなものがあり得るのかもしれません。圃場センシングソリューションで培ったデータ集約のしくみや、監視のプロセスの中でトレーサビリティも確保しているということになれば、信頼性も高まると思います。

○大張部長IoTでサポートされた農作物という販売の仕方は、まだ世の中に存在しないのではないでしょうか。

○菅野組合長そこからおいしいものが数多く生まれてくるといいですね。

○山口支店長今日のダイアログでも多くの気づきをいただくことができました。私たちのサービスがきっかけで農業の分野で働く方が増える等、お互いにWin-Winの関係でパートナーシップを発揮させていただけたらと考えています。私たちは地域に根付いた企業として、これからも農業と地域の発展に貢献していきたいと考えています。

ダイアログ風景

  • *1. GAP:Good Agricultural Practiceの略。農業における食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組み。
  • *2. LPWA:省電力でkm単位の距離で通信できる無線通信技術の総称。
  • *3. エネルギーハーベスティング:太陽光、機械の発する振動、熱等のエネルギーを採取し電力を得る環境発電技術。

利用者の声

国井梨園
国井 喜四三さま

負担軽減と品質の安定化につながっています

福島県内で梨園を営み、15種の梨を育てています。4月中旬から5月上旬にかけて、霜注意報が発令されると、夜の8時から夜中3時くらいまで1時間おきに、地区の観測所に設置された温度計を歩いて見に行っていました。日中の農作業に加えて、夜間の観測作業が大きな負担となっていましたが、センサーが自動的に正確な情報を集めてくれるようになり、心身ともに負担が大きく軽減しました。

また、これまでは降こうそう霜被害防止資材を使うタイミングや量を経験からくる勘に頼っていましたが、観測データに基づくことで適切な時期に適量を投入できるようになり、コスト削減と品質の安定化につながっています。今後も観測データを蓄積していくことで、気象災害において精度の高い予測と、品質と収量の安定につながっていくことを期待しています。

皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。