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ステークホルダーダイアログ

ICTの利活用による地域医療の課題解決と、
次世代に命をつなぐ確かな技術

NTT東日本は、既存のテレビ会議システムを利活用して電子カルテ情報や高精細なエコー画像をやりとりできる「周産期超音波画像伝送システム」を開発しました。
システムの開発から導入・運用に携わっている岩手医科大学や岩手県保健福祉部の皆さまと対話会を開催し、導入に至った経緯や地域医療の課題解決への貢献、産科・小児科医療に与える影響度、今後の展望等について語っていただきました。

【ステークホルダーダイアログ参加者】

小山 耕太郎 さま
岩手医科大学
小児科学講座
教授

松本 敦 さま
岩手医科大学
小児科学講座
助教

羽場 厳 さま
岩手医科大学
産婦人科学講座
産科病棟医長

高橋 幸代 さま
岩手県 保健福祉部
医療政策室
地域医療推進課長

及川 誠
岩手県 保健福祉部
医療政策室
主任

栗田 均
NTT東日本
岩手支店長

中尾 功二郎
NTT東日本
B&O営業推進本部
岩手法人営業部長

地方創生に向けた、地域におけるICT利活用の状況

○栗田支店長NTT東日本では、地域が抱える各種課題解決への取り組みを積極的に行い、地域経済・社会の活性化、ひいては地方創生に貢献すべくさまざまな活動を推進しています。

今回のテーマである医療分野に関しては、地方における高齢化・少子化、医療資源の偏在・不足、災害時の医療行為継続という課題に真剣に向き合う必要性を強く感じており、これらの解決を図っていくうえで、ここにお集まりの病院や自治体の皆さまと連携してICTを利活用した取り組みを実現できたことは非常に意義があることだと考えています。

地域におけるICT利活用はまだまだ緒に就いたばかりです。今回のように都心部ではなく地方で検証を行ったからこそ把握できた課題もあることから、観光・農業・教育等のさまざまな分野においても関係する皆さまと一層連携させていただくことによって、ICTを利活用した地域ならではのサービスを創出する等、地域のために貢献していけるよう取り組んでいます。

○中尾部長岩手県は北海道に次いで日本で2番目に面積が大きく、山間部も多いということもありましたが、ブロードバンドの普及につきましては、現在のエリアカバー率は約95%となっています。

2000年からは、公共機関をセキュアで高速なネットワークで接続する「いわて情報ハイウェイ※1」を構築しています。岩手県庁や各自治体、県立高校や病院等、県内270拠点をつなぎ、医療、防災、教育等の6分野で利活用いただいています。特に医療分野においては、県の保健福祉部さまや岩手医科大学さまの抱えている課題に対し、NTT東日本としてICTを利活用して少しでも解決に貢献したいと考え、取り組みを進めています。

地域医療の課題と岩手県の現状

○高橋課長岩手県は、20の県立病院を設置して全域の医療をカバーしているものの、盛岡市以外ではすべての診療科で医師が不足するという医師の偏在が大きな課題となっています。

県内の年間の出生数は約9,300人で、この20年で4,000人近く減少した一方で、2,500g未満の低出生体重児等のハイリスク出産が増えています。また、医師の高齢化等によって地域で分娩を取り扱う診療所が年々減少しています。限られた医療資源の中で医師の負担を軽減しながら、県民に等しく良質な医療を提供していくために、「いわて情報ハイウェイ」を利活用した岩手県周産期医療情報ネットワークシステム※2や、ICTを利活用した遠隔診断支援体制を推進し、分娩リスクに応じた適切な医療供給体制の確保を図っています。

○松本助教岩手県は大学でしっかりとトレーニングされた医師が地域に出ていきますので、初期対応はできるのですが、重篤な病気を抱えた子どもに接する頻度が少ないため、専門医のような対応まではなかなかできません。そこで、ICTを利活用して画像等をやりとりすることで、遠隔地にいても熟練の医師の指示の下で緊急対応ができるシステムの重要性が高まっており、これは出産に関わる医療においても同様です。

○羽場医長妊娠から出産、新生児早期までの時期を一括して周産期と呼びます。この時期は母子ともに異常を生じやすく、突発的な緊急事態に備えて、産科と小児科の一貫した総合的な医療体制が必要なのです。医療の現場に関わる者として、ICTの利活用は今後の岩手の周産期医療をより良くするためにも絶対に必要なものだと感じています。

「周産期超音波画像伝送システム」について

地域の課題を周産期超音波画像伝送システムにより解決

山間部が多く、移動に時間がかかること、また医師の偏在が大きな課題となっている

岩手医科大学が位置する盛岡市から片道120km地点にある久慈市と130km地点にある大船渡市、岩手県内の病院で、システムを導入している15カ所を示した岩手県の地図

「いわて情報ハイウェイ」をベースに地理的に離れた医療機関をつなぐ

「いわて情報ハイウェイ」をベースに地理的に離れた医療機関を通信でつなぐ仕組みを説明したイメージ図です。岩手医科大学、各病院と 「いわて情報ハイウェイ」を経由してつながることで、100Mbの動画データをリアルタイムにやり取りすることが可能になります。3つの病院は、「いわて情報ハイウェイ」と1Gbのデータ通信が可能な岩手県庁除法センターとつながっており、「いわて情報ハイウェイ」と直接つなっがっている病院と同様のやり取りをすることができます。

距離のある病院間で情報を共有、遠隔診断等を行い、迅速な処置を実現

超音波検査を受けている病院から、周産期超音波画像伝送システムを利活用して、距離のある病院へ超音波動画を転送し、リアルタイムで遠隔診断を行い、迅速な処置を実現することを説明したイメージ図

○中尾部長このような課題を解決するため、開発を進めたのが「周産期超音波画像伝送システム」です。

当初はいわて情報ハイウェイを利活用し、県内の11の中核病院で手術前のカンファレンス等でご利用いただくため、2003年に小児科専用のテレビ会議システムを導入していただきました。先生方のご要望を受けて改善を重ねていく中で、患者の容態やエコーの動画、カルテの情報等をリアルタイムでやりとりしたいという要望をいただきました。特に、緊急性が高く、正確な初期診断と迅速な治療が欠かせない出生時の心臓病の治療に対応するため、新生児の心臓の高精細なエコー動画を遠隔地へいかに効率的に転送するかということが課題となりました。

その解決のため、小山先生が中心となって、総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)※3の選定を受けて実証実験を進めることとなり、NTT東日本グループの総力をあげてお手伝いをさせていただきました。

○小山教授私たちにとって、心臓病の赤ちゃんを助けることが重要な使命の1つです。病状が急激に悪化するので、遠隔地の子どもの画像を一刻も早くリアルタイムで見なければなりませんが、岩手では移動の距離と時間が不利な状況にあります。

そういう問題意識の下で実証実験を進め、専門医の診断にも十分に耐えうる画像を送るためのカギとなったのが、NTTグループの持つ世界初の動画圧縮技術でした。ネットワークの構築だけではなくて、ソフトウェアや実際の運用等の高度な技術提供をNTT東日本がやってくれたことで、「周産期超音波画像伝送システム」は、県民にとって非常に恩恵のあるシステムになったと考えています。

○松本助教胎児の心臓はわずか数センチメートルの大きさで、しかも大人と比べて心拍数は3倍近く早いため、画像の動きが途切れることなく、診察に耐えうるレベルの画質であることが非常に重要です。現在、「周産期超音波画像伝送システム」で運用されている画像を見ると、遠隔地にいる自分がまるで現場で診察しているような感覚になります。

○羽場医長産科医の使命は、お母さんの診察を通じて、赤ちゃんを救うことなのです。赤ちゃんの情報をしっかりと小児科に伝えることが、私たち産科医の役割だと思っています。今回の「周産期超音波画像伝送システム」によって、他の病院の医師に赤ちゃんの状態を伝えるときに、静止画だけを見せても十分には伝わらず、動画が非常に有効だということを再認識しました。

○小山教授周産期医療に限らず、ある専門グループから次の専門グループに情報をつなぐときに、ICTが大きな役割を果たしていますね。

松本先生のお話にもあったように、胎児の心臓は小さく、動きが速い。最もハードルが高いところで開発した技術なので、成人の医療にも広く使われているのです。この技術は各年代にわたる医療に貢献しているといえます。

○中尾部長私たちは通信事業者として、距離と時間をつなぐ努力をしてきました。いろいろな分野の医師の間で情報がうまくつながり、命が救われていくという場面に関わることができるとわかり、非常に感銘を受けています。

○高橋課長このような有益なシステムになるために、長い間、先生方をはじめ皆さまに情熱を持って改良をしていただいたと思っています。このシステムを使って、県民の新しい命が守られていくことは意義深いと感じています。

ダイアログ風景

医療ICTのさらなる利活用に向けた今後の展望

○松本助教「周産期超音波画像伝送システム」をさらに普及させていくためには、端末が移動できるようにすることが必要だと思います。新生児の具合が悪くて端末のあるところまで動かせないというケースで、もっと有用になるでしょう。

また、端末が移動できれば、往診や研修等にも使えます。遠隔地でもより気軽に利活用できて、医師のスキルアップにもつながると思います。

○羽場医長「周産期超音波画像伝送システム」は、動画で情報共有する発想がない医師たちの考え方を根底から変えるシステムだと思います。さらに浸透させていくためには、どのように使っていいのかわからないという声に応える必要があります。

このシステムは、超音波による画像を送るだけではなく、電子カルテのシステムにもつなぐことができ、医療情報のほとんどを共有することができます。パソコンをつなぐこともできるので、大学でのカンファレンスや勉強会に外にいながら参加できます。今後の新たな医療ツールの1つになると思います。これは岩手県だけでなく、日本中に伝わっていくべきものだと思います。

○及川主任ICTは、継続的に医師の方々に使っていただくというのが大前提です。現場のニーズを反映したシステムを開発し、改良していくことで、現場で活用されるようになります。こうしたニーズや利用シーンについて意見交換しながらサポートしていくことが行政として重要だと認識しています。

○高橋課長現場の先生方に有効に利活用していただきながら、システムを用いた先生同士の横の連携を作っていきたいと考えています。まだシステムを使ったことがない先生にシステムの良さをいかに伝えていくかが重要であり、行政としての課題です。医療機関と連携しながら、県民に対してさらに質の高い医療の提供に努めていきたいと思っています。

○小山教授このシステムは、県内にある複数の病院と岩手医科大学で構築しています。遠隔とはいえ、気心の知れた相手とのやりとりなので、運用がうまくいっているのだと思います。将来、全国規模で展開するにあたっても、医療機関の間で率直に意見交換できる関係にあることが大切で、普及には勉強会や講習会をとおして交流を深める等の工夫が必要でしょう。

○中尾部長今は有線でのネットワークとなっているので、情報セキュリティの担保と高速なネットワークをモバイル環境でも提供できるようにしなければいけませんね。今は、このネットワーク自体が県内で完結していますので、全国規模のネットワーク構築を検討していきたいと思います。

○及川主任行政としても、特に医療におけるICTが不可欠になってきていると感じています。県外にもネットワークを広げる場合の課題や必要性も検討していきたいです。先生方も含めて調整していくことが行政の役割です。現場のニーズを常に把握しながら、取り組みを進めています。

○小山教授ある地域の医療環境の充実度を測るときに、医師や看護師の数、全身麻酔を受けられる拠点の数といった指標が評価されることが多いのですが、ICTによって医療機関がつながっているということが医療資源の評価指標の1つにカウントされてもいいくらい、今までと全く違う価値観の医療資源がここに登場していると思います。

また、東日本大震災の際には、医療情報をバックアップするために、電子カルテ等のICTを活用することが非常に有効であることを再認識しました。情報のネットワークは医療の現場で、もはや欠かすことのできない存在になっています。

○栗田支店長今回ご尽力いただいた専門医や自治体の皆さまが、地域医療の改善を通じて県内のどこでも安心して出産し、出産後も健康に生活できるように、という強い思いで取り組まれたお話には大変感銘を受けました。今回の事例は今後の地域医療の発展のための大きな布石になると確信しています。今後においてもNTT東日本としてより一層地域医療の分野に貢献していきたいと考えています。

本日の対話会でお聞きできた多くの貴重なご意見にあらためて感謝申し上げます。本日はありがとうございました。

※1 いわて情報ハイウェイ:岩手県が、県内のどこからでも公共情報や公共サービスが受けられる情報通信環境の実現を目的に整備した情報通信の基盤ネットワーク。医療・保健・福祉、防災、教育、研究開発、行政、県民情報の分野で活用されており、一部は民間企業にも開放されている。

※2 岩手県周産期医療情報ネットワークシステム:安心・安全な妊娠・出産・育児のため、「いわて情報ハイウェイ」を活用して岩手県内の医療機関や市町村等の間を結び、妊産婦の周産期医療情報を共有して、保健・医療関係者の綿密な連携を実現するシステムのこと。

※3 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE):情報通信技術分野において新規性に富む研究開発課題を大学や企業、地方自治体の研究機関等から広く公募し、外部有識者による選考評価のうえ、研究を委託するもので、社会課題の解決に貢献する新たな価値の創造や、ICTの活用による地域活性化等を図る事業。

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