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ステークホルダーダイアログ

地域活性化をつなぐ
「農業IoT」技術のトライアル

ぶどうや桃等の生産が盛んな山梨県では、農家の高齢化に伴い、農業の効率化や生産性向上に寄与するICTサービスへのニーズが高まっています。

NTT東日本グループは山梨市の農家の方々の課題を解決すべく、「アグリイノベーションLab@山梨市」を立ち上げ、農作業の効率化や営農指導に役立てるクラウド型のICTを活用したサービスを開発しました。

サービスの導入に向けてご協力いただいた山梨市やJAフルーツ山梨の皆さまとの対話会を開催し、サービスの成果や今後の展望等についてお話を伺いました。

【ダイアログ参加者】

高木 晴雄 さま
山梨市
市長

中村 貴仁 さま
山梨市
政策秘書課長

反田 公紀
フルーツ山梨農業
協同組合
営農指導部 部長

繁尾 明彦
NTT東日本
NTT東日本 山梨支店
支店長

鶴岡 貴之
NTT東日本 山梨支店
ビジネスイノベーション部 部長

NTT東日本におけるICT利活用の状況とスマート農業への取り組み

繁尾支店長:NTT東日本グループは、ICTを通じて、今現在だけではなく、その先の未来に向けて「持続可能な社会」を実現するのがわれわれの使命と考え、さまざまな取り組みを推進しています。

デジタル化の進展をキーとして、光回線やWi-Fi環境さえあれば、どこからでもクラウド上のデータにつながり、どこでも仕事ができるというような便利な社会の実現のためにICTを活かすべく取り組んでいます。

山梨においても、光回線やWi-Fiを整備し、観光客や住民が活用できる街Wi-Fiや災害時の通信手段確保に役立つ防災Wi-Fi等、日常的にICTを活用できる生活の基盤を作り上げたいと考えています。

鶴岡部長:昨今、ロボット技術やICT技術の活用により農作業の省力化と生産性向上を実現する「スマート農業」が注目されています。農業従事者の高齢化と減少という農業が抱える課題の解決は、一人ひとりの生産性の向上なしには語ることができません。

NTT東日本でも、2017年2月より山梨市さま、JAフルーツ山梨さまと協働し、農業IoTのトライアルを開始しました。13軒の農家の圃場に、光回線・Wi-Fi・農業IoTセンサー・IoTカメラを設置し、圃場の温度・湿度・土壌水分度・二酸化炭素濃度等のセンサーで取得した情報とカメラで撮影された圃場の様子をクラウド経由で、農家の方のタブレットやスマートフォンにリアルタイムに送るというしくみで、農家における生産性の向上と効率化を実現します。

繁尾支店長:最近では、さまざまな分野の企業さま等とのコラボレーションにより、今まで想定しなかったサービスや領域に進出しており、ICTの可能性が広がっています。

山梨市におけるICTの利活用の状況と課題

高木市長:山梨県では農業が盛んに行われており、県全体が果樹王国とも呼ばれています。とりわけ、峡東3市(山梨市・笛吹市・甲州市)は、ぶどう、桃、すももの産地として全国に知られています。この地域における「盆地に適応した山梨の複合的果樹栽培システム」は、2017年3月に農林水産省より日本農業遺産に認定されました。峡東地域の農家の皆さまががんばってきたことが認められた証です。一方で、山梨県では農業従事者が減少し、定年を迎える年齢の方たちが中心となって農業をしている現状があります。後継者がいないという問題もあり、これからの農業はICTなくして成り立たないというところに来ていると感じています。

※日本農業遺産:日本における重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域(農林水産業システム)を農林水産大臣が認定する制度。

中村課長:今まで山梨市では、市民への行政サービス、あるいは行政内の業務の効率化といった側面でICTを活用してきました。今後は一歩進んで、農業をはじめ各産業分野でのICT活用が必要になってくるだろうと思っています。山梨県の新規就農者は徐々に増えており、平成29年度(2017年度)は314人と平成に入って最多でしたが、数字的にはまだまだです。家族経営だけでなく農業法人も増えていくでしょうから、耕作面積も増えて労力的に追いつかなくなるだろうと。そこでアグリイノベーションLabで検証したICT技術が重要になってくるのですね。

高木市長:巨峰やシャインマスカットは単価が高く、市場でも高い値がつき、新規就農者の誘因に一役買っています。今後も新規就農者の増加が期待できますから、このICTサービスをしっかり導入したいと思っています。

繁尾支店長:農業従事者減少の要因の1つに、過酷な労働環境があげられます。温度や湿度管理は欠かすことができないので、夜中でも圃場を巡回しなくてはなりません。農業従事者の7割が65歳以上と言われる状況下、そういった労力をいかに減らせるかという点でセンシング技術が役立つと考えています。人の勘や技術による部分をセンシング技術で「見える化」し、品質の安定や収穫量の向上につなげていくのです。

システム概要図

農業全般の課題とJAフルーツ山梨さま管轄地域の農業の課題

反田部長:JAフルーツ山梨は、果物中心のJAで、売上の99%が果物です。職員は営農指導と果物の販売を行う、いわゆる総合商社みたいなところです。農業における後継者が減っているのは確かなのですが、2017年度の売上は目標よりも10億円も多い148億円です。これを牽引したのが単価の高いシャインマスカットでした。

JAでは2011年ごろから固定気象台を4局設置して、ぶどう栽培にとって重要な温度・湿度・風向・風力・雨量といった気象情報をデータ化してきました。種なしぶどうを育てるためのジベレリン処理は、処理後8時間以内に降雨にあうと、再度処理をしなくてはなりませんので、固定気象台で雨量を確認していました。ですから今般のトライアルで使用している機器は、まさに農業の現場が求めていたものです。

今回のトライアルで、ずっとアラームが来るからおかしいと思って、ビニールハウスを見に行ったら、鳥の糞があったために自動で開くはずのカーテンが開いていないのを見つけたという方がおられました。通常ハウスを開け忘れて内部の温度が上昇すると、作物がだめになってしまい、1回のトラブルだけで約450万円の損失を被ります。「見える化」により、圃場の状況がリアルタイムでスマートフォンに送られてくるので、わざわざ見にいく必要がなく、損失も防ぐことができるのは非常に良いことだと思います。

果物は高単価であるがゆえに鳥獣や盗難による被害の影響も大きいですから、今後はこういった課題にも対応していただけるとありがたいです。

高木市長:この地域では、農業収益の多寡が地域の活性化に大きく影響します。異常気象等、これまでの勘や経験だけでは推し量れないリスクがたくさんある中で、新規就農者の皆さまには効率的かつ効果的な農業を営んでもらいたい。農業の魅力に取りつかれて、命がけで農業をする若い人たちも出てきています。NTT東日本さんの提案の下、山梨市・JAも一緒に取り組んでいくことは、地域の将来にとって非常に意義があり、このような場を広げて、多くの農業従事者の皆さまから課題を持ち込んでもらいたいです。いろいろな情報を収集して、ストックして、加工していくというトライアングルを繰り返せば、より良いICT技術の活用ができるでしょう。

アグリイノベーションLabの背景と成果

鶴岡部長:今回のトライアルでは、ビニールハウス7軒、露地栽培6軒の農家の方々にご協力いただき、各所にWi-Fiの環境を整えつつ、センサーで温度や湿度等の「見える化」を行いました。IoTカメラを置いて生育状況等の撮影もしています。2017年2月から実施した成果として、収量や品質が安定し、圃場の巡回数がおよそ20%削減しました。さらに約450万円の損失を防ぐことができたという成果もあげています。

反田部長:スマートフォンでどこからでも圃場の状況を確認できるため、今回のトライアルに参加された方々の中には、新たにスマートフォンを購入してご自身で操作されている方がいらっしゃいました。

鶴岡部長:スマートフォンを持っていない方もまだまだ多いですが、実際の効果を数値で農家の方々にお知らせしつつ、センサーとスマートフォンを活用すればこんなに便利だということを実感していただける方を増やしていくことが今後の普及には大事だと考えます。

反田部長:JAとしてもビニールハウス栽培の全員の方にセンサーを設置してもらいたいので、NTT東日本さんに価格面でも導入しやすいように検討してもらいました。

農業分野にとどまらないICT利活用に向けた今後の展望

反田部長:ICTの利活用によって、営農指導のやり方にも変化が出てくるでしょう。果樹の病気等の一覧表を果樹試験場で作っていただいているので、若い営農指導員もタブレットを使用して、その場で病気を判断し、指導しているのが現状です。

繁尾支店長:センサー以外でもICTの活用が想定できます。たとえば、ウェアラブル端末を使って圃場の指導員と管理センターを通信でつなぎ、圃場の映像を管理センターに飛ばすことで、管理センターのベテラン指導員から的確な指示をもらうことができる。経験の浅い指導員が複数カ所にいても、対応することが可能になりますね。

反田部長:野菜は年に数回収穫できますが、果物は1年に1作。経験値に頼っている一方で、野菜に比べて経験値を積むのに時間がかかるという難しさがあります。ハウス農家の方々が持っておられるノウハウを蓄積して数値化することで、新規就農者でも作業を標準化し、指導に沿って栽培すれば良いものができます。今トライアルしている機器を導入して、失敗をさせないということですね。いよいよトライアルの成果が出てきましたので、山梨市、そして甲州市のビニールハウス農家にも普及させていきたい、と考えています。

繁尾支店長:NTT東日本は、「地域とともに歩むICTソリューション企業」です。地域の方々に寄り添い、多くの方々と対話を重ね、課題や思いを抽出するのがわれわれの一番の仕事であると思います。

本日は農業が中心のお話でしたが、センシング技術は工場のライン監視や従業員の体調把握等にも展開できる技術です。農業から他の産業に対して技術展開することで、中小企業が多い山梨の活性化にアグリから発信できますね。

高木市長:近年では今まで想定していなかった災害が発生しています。崖崩れや河川の氾濫といった情報をセンサーで収集することができれば、地域の安心・安全にもつながります。高齢者の方はICTというと難しくとらえがちですが、スマートフォンの使い方さえ覚えてしまえば、医療や気象に関する情報をいち早く知ることができ、生活全体が良くなっていくと思います。

中村課長:そこは行政の力も大いに発揮したいと思います。地域課題を解決するためには、アグリイノベーションLabのように産官学民の連携による事業推進が必要であることを、本日あらためて認識しました。Labの取り組みを継続して、地域の活性化につながるように尽力したいです。

高木市長:本日集まった5人だけでも、今後につながる有意義な議論ができました。現場の農家や果樹試験場等の方々も巻き込んで、こういった場を設けていくのが大事ではないでしょうか。

繁尾支店長:今後は、今日のメンバーに果樹試験場等の方々も加え、5年、10年先のシャインマスカットに続く新品種の開発にICTを活用した検討を進めていきたいですね。農家の方々とも会話も重ね、鳥獣害や盗難被害の対策等、直近の課題にも対応していきたいです。

鶴岡部長:トライアルで得られた効果と課題を追いかけ続け、解決につなげていかなくてはならないという気づきが本日ありました。そのためにも、農家、果樹試験場、営農指導をする現場の方々等から、こんな効果があるとか、これでは使えないといった声をいただけるとありがたいです。

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