新潟県村上市朝日地区(旧・朝日村)は、人口11,531人、世帯数3,193(2008年1月31日現在)、面積630km² の、合併前には東京23区とほぼ同じ面積の日本で2番目に大きな村として知られていました。2006年、旧朝日村では、総務省のe-japan戦略に基づき、「朝日村情報化基本計画」を策定し、村内全域に光ファイバー網を整備。IP告知サービス、地上デジタル放送、BSデジタル放送(BS-IF伝送方式)、地域の情報を発信するコミュニティーチャンネルのFTTH配信などのサービスを住民の皆様に提供することにより、「情報格差のない住みやすいむら」「住民が安心・安全に暮らせるむら」「コミュニケーション活発なまとまりあるむら」「高齢者・障害者も安心して暮らせるむら」を実現しています。
広い面積に点在する集落。ブロードバンド空白地帯、テレビ放送難視聴地帯などの情報格差を「総合情報ネットワーク整備事業」により解消。
「総合情報ネットワーク整備事業」について現・村上市朝日支所 支所長 板垣一弘様にお話を伺いました。
新潟県村上市朝日地区(旧朝日村)は、村としては全国2位の面積があった広い地域で、その中に46の集落があります。広い地域に点在しているので、テレビも共同アンテナを立てないと見られない、インターネットもADSLだと距離が遠すぎる集落があってサービスが利用できないなど、テレビが見られる環境やインターネットができる環境に、地区内でも大きな格差がありました。それをなんとかして欲しいという住民の方の声に、行政としてお応えすべく、光ファイバーネットワークの導入を決定しました。
導入にあたってNTT東日本をパートナーに選んだのは、課題であったテレビとインターネットの問題の解決に加えて、IPテレビ電話や双方向告知サービスなどの、魅力的な住民サービスを含めた、総合的な提案があったことが理由です。
まず、テレビ電話。実は住民説明会のときも「風呂に入ったあとなどに困る」という意見もあったんですが、実際、導入されてみると、相手の顔が見えて話せるというのが使いやすいようですね。それに、地区内ならどこにかけても話し放題の定額制で、利用者の感覚としては、通話料無料に近いかもしれません。だから、子供同士が、ノートを見せながら宿題を教えあったり、お年寄りも、いままでだと天気が悪くて出かけられなかったようなときでも、ちょっと顔見ようよ、ということでテレビ電話を使ったりして、新しいコミュニケーションの場にもなっています。
テレビに関して言えば、朝日地区は、地区内12集落がテレビ難視聴地区なんです。ですからいままでは、共同アンテナ用の鉄塔を立てていましたが、これから地上波デジタルに変わっていく中で、アンテナも立て替えなければならない。その立て替え費用として補助金を出すのも難しかった。光ファイバー網の整備によって、地上波デジタル番組が見られるようになって、どの地域でも、格差なくテレビがきれいに見られるようになってよかったという声をいただいています。
インターネットに関していえば、朝日地区のように都会から離れた場所こそ充実させないといけないと思います。ここからだと新潟市に出るのも1時間とか1時間半とかかかります。ですから、家にいながら、インターネットを通じて、都会と同じものを、好きなときにぱっと買うことができるという環境は、それだけで生活そのものが変わってしまうほどだと思います。
いままでは行政の側から住民の皆様へ緊急情報を提供するにも、頼るのは一斉無線で、その時間、家にいないと聞けませんでした。でも、いまは会社から遅く帰ってきても、テレビ電話にお知らせが届いて、タッチパネル画面にタッチするだけで、緊急情報をチェックできる。それに、音声だけでなく画像付きで放送することもできますから、音声だけではわかりにくい情報も伝わりやすくなりました。また、保健センターなどから送った情報を見たか見てないかをこちらから確認できるので、高齢の方の生活を見守ることもできるようになりました。
自主放送に関しては、いま2種類のコンテンツを流しています。ひとつは、地域活性化のための地元のニュース。小さなスタジオをつくって、自分たちで番組を制作して流しています。地域のお祭りとか、保育園の催し物とか、地元でなにか頑張っている人とか、朝日地区ならではのコンテンツを制作しています。もうひとつが既存のコンテンツを放送局から借りてオンエアするもの。いまは音楽番組と健康番組・パソコン教室の番組を放送しています。
光ファイバー網は、ある意味高速道路と同じだと思います。その上になにを走らせるか。そこに知恵を絞って、過疎からの脱却ができたら素晴らしいと思います。自主放送を使って地域の祭りやイベントを知ってもらったりしていますが、これからは、たとえば、この環境を利用して、若い人たちに起業してもらったりして、地域が活性化していく。多くの自治体の方からお問合せをいただいたり、視察に来ていただいているのも、そういった共通の悩みがあるからでしょうね。「IRU方式」で事業を行うことで、コストはかなり抑えられました。これからは、双方向告知サービスなどをもっと活用して住民の声を行政に反映するなどして、地域づくり・地域起こしをしていければと思っています。